7 生ぬるい!
そして紳士クンが連れてこられたのは、人気のない校舎の屋上だった。
こんな所に連れて来て、一体何の話なんだろうと紳士クンがビクビクしていると、
太刀は屋上のまん中あたりに来た所でクルリと振り返り、
紳士クンに向かってこう言った。
「お前は今回の特別授業で、どの上級生に仕えるのかもう決めたのか?」
「あ、いえ、まだですけど・・・・・・」
(まさか太刀お姉様も、ボクにメイドになれって言うんじゃ?)
と思った紳士クンに、太刀が次に言った言葉はこれだった。
「だったら、私のメイドにならないか?」
(やっぱり・・・・・・)
あまりに予想通りな言葉にガックリする紳士クンだったが、
気を取り直して太刀に問いかけた。
「あの、どうしてボクなんかを誘ってくださるんですか?
太刀お姉様なら、他にもメイドをやりたいって言う子は沢山居るんじゃないですか?」
すると太刀は腕組みをしながら言った。
「それはそうだが、私はこの前の一件(第一巻の五話参照)
以来お前の事がすっかり気に入ってな。
お前がよりたくましい女性になれるよう、私の手で鍛えてみたくなったのだ」
「ええっ⁉鍛える⁉で、でも今回の特別授業では、
一年生が上級生のメイドになって、
身の周りのお世話をするっていう内容だったんじゃあ?」
「生ぬるい!」
「ええっ⁉」
「身の周りの世話をしたくらいで何が鍛えられると言うんだ!
これからの時代の女性は家事手伝いができるだけじゃあ駄目だ!
社会に出ても男に負けない体力と精神力を身につけねば!
その為に私がお前をマンツーマンで鍛えてやる!
どうだ!嬉しいだろう⁉」
「え、ええええ?」
太刀の言葉に力の抜けた声を上げる紳士クン。
結論から言うと全く嬉しくなかった。
今すぐにでもここから逃げ出したい気分だった。




