表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紳士クンの、割と不本意な日々Ⅱ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと謎の美少女
109/124

7 転校生

 紳士クンはそう言いながら、令の後ろ姿に手を振った。

そして令の姿が見えなくなった所で、

おそるおそる資料室のドアを開けて中を覗き込んだ。

 「あの~、もう大丈夫ですよ?」

 紳士クンがそう声をかけると、

資料室の棚の陰に隠れていたさっきの女子生徒が現れ、

紳士クンの方に歩み寄りながら言った。

 「いきなり悪かったな。あんたのおかげで助かったよ」

 それに対して紳士クンは、資料室のドアを閉めながらこう返す。

 「それは全然構わないんですけど、

あなたはどうしてさっきの人に追いかけられていたんですか?」

 すると彼女は部屋のまん中あたりに来た所で立ち止まり、

険しい表情になって言った。

 「あの女は、嫌がるオレを無理やりこの学校に転校させやがったんだ」

 「転校?」

 その言葉にピンときた紳士クンは、続けてこう尋ねた。

 「もしかして、君が今日この学園に転校するはずだった子なの?」

 それに対して彼女は、さも不愉快そうな口調でこう答えた。

 「ああそうだよ。

オレは今日付けでこの学園の一年の(すみれ)組に転校する事になっていた。

でもそれがどうしても嫌で、今朝教室に行く途中に隙を見て逃げ出したんだ。

だけどこの学園は周囲の警備がやたら厳重で、

外に逃げ出す事もできねぇから、こうして校舎の中に隠れてたんだ。

そしたらさっきあの女に見つかって、必死に逃げてきた訳だ。

マッタク、嫌になっちまうぜ」

 彼女はそこまで言うと、腹立たしそうに頭をボリボリかいた。

そんな彼女に紳士クンはおずおずと尋ねる。

 「あ、あの、君はさっき、

令お姉様に無理やりここに転校させられたって言ったよね?

君と令お姉様って、一体どういう関係なの?」

 「それは・・・・・・」

 と、彼女は何かを言いかけて口をつぐんだ。

紳士クンはその次の言葉を促すように再び問いかける。

 「それは、何なの?」

 すると彼女はぶっきらぼうな口調で言った。

 「そ、そんな事どうだっていいじゃねぇか!

初対面のあんたに話す義理なんかねぇよ!」

 「う、ま、まあ、言いたくないなら無理には聞かないけど・・・・・・」

 彼女の迫力に気押された紳士クンは、たじろぎながらそう言った。

すると彼女はそんな紳士クンにズズイッと詰め寄ってこう続ける。

 「ところであんた、オレをここで見た事は誰にも言わないでくれよ⁉

オレ、どうしてもこの学園には転校したくないんだ!この通り!」

 そう言って彼女は紳士クンに両手を合わせた。

一方そう言われた紳士クンは、

 「う、う~ん・・・・・・」

 とうなりながら腕組みをした。

 (この子は本気でこの学園に転校するのが嫌みたいだけど、

だからってこのまま内緒にしててもいいのかな?)

 と頭を悩ませていると、彼女の口の端から一筋の血が流れ出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ