107/124
5 消えた転校生
だが結局昼休みになっても、その転校生は見つからなかった。
他の教室へ間違って行った訳でもなく、
体調を崩して保健室へ行った訳でもないらしい。
愛雛先生は自宅にも連絡したが、自宅にも戻ってないとの事。
そういう訳で紳士クンのクラスの生徒達は、様々な憶測を飛び交わせた。
「本当は、こことは違う学校に転校したかったんじゃないかしら?」
「もう少しイギリスに留学していたかったとか?」
「もしかして、この学園にどうしても会いたくない知り合いが居るんじゃないの?」
どれももっともらしい話ではあるが、
手掛かりがあまりに少ない今の時点では、
それらの憶測が確証に結び付くという事はなかった。
そんな中紳士クンは、教室を出て校舎一階にある資料室へ向かっていた。
世界史の先生に、この後の授業で使う資料を取って来るよう頼まれたのだ。
(転校生の子、まだ見つからないみたいだなぁ。
一体何処に行っちゃったんだろう?)
そう思いながら紳士クンは資料室のドアを開け、中に入ろうとした。
と、その時だった。




