4 浮かない顔の先生
「どうしたん乙子ちゃん?難しい顔して」
考え込む紳士クンの顔を覗き込み、笑美が問いかける。
「あ、いや、何でもないよ?ちょっとボーっとしちゃってただけ」
そう言って笑ってごまかす紳士クン。
すると華子と笑美はそれを気にするでもなく話を続けた。
「転校生かぁ。仲良くなれるといいですねぇ」
「まあ海外で生活してた子やったら、
誰とでもすぐに仲良しになれるんとちゃう?」
「もしそうなれば、
ぜひとも我がオカルト研究会に入って欲しいものですね」
「え、その会ってまだ続いとったん?」
「当たり前じゃないですか!
これからもどんどん会員を増やして、活動を活発にしていくんです!」
「えぇ~、めんどくさいなぁ」
そんな二人のやりとりを眺めながら、紳士クンはこう思った。
(まあ、あまり考え過ぎるのもよくないよね)
そんな中担任の愛雛先生が、
「は~い、皆さん席に着いてくださ~い」
と言いながら教室に現れ、生徒達は各々の席に着いた。
そして教壇に立つ愛雛先生。よく見ると、何だか浮かない顔をしている。
おまけに朝のホームルームも始めずに大きなため息なんぞをつくので、
笑美が右手を挙げて愛雛先生に尋ねた。
「愛雛先生、ため息なんかついて何かあったんですか?」
すると愛雛先生はもう一度ため息をついて言った。
「実は今日、このクラスに転校生が来る事になっていたんだけど・・・・・・」
「だけど、どうしたんですか?」
笑美の問いかけに、愛雛先生は三度目のため息をついてこう言った。
「ここに来る途中に、何処かに行っちゃったの・・・・・・」
「ええ?」
笑美だけでなく、クラス中の生徒がどよめいた。
そんな中華子が愛雛先生に問いかける。
「それって、校舎の何処かではぐれちゃったって事ですか?」
「多分そうだと思う。職員室からここに来る時、
いつの間にか何処かに行っちゃったの。
こんな事になっちゃうなんて、木比篠先生に何て言えば・・・・・・」
そう言って頭を抱える愛雛先生。
するとクラスの生徒達が、
「元気出してください先生」
「先生は悪くないですよ」
と、励ましの声をかけた。
「うぅ、ありがとう皆。とりあえずこの後、学園中を探してみるわ」
瞳を潤ませながら愛雛先生は言った。




