1 令がこういう感じの時は大体ロクな事を考えていない説
「ふーんふーんふーふふーん♪ふんふーふふふーん♪」
ある日の放課後の生徒会室。
エシオニア学園の生徒会長である凄茎令は、
鼻歌交じりに生徒会の仕事をこなしていた。
いつもなら隙あらば生徒会の仕事をサボり、
生徒会室にすら顔を見せない令が、今日は自ら生徒会室に現れ、
鼻歌を歌いながら生徒会の仕事に取り組んでいる。
その様子を不気味に感じた副会長の鎌井太刀は、眉をひそめながら令に言った。
「め、珍しいな、お前が自主的に生徒会の仕事にいそしむなんて」
すると令はさも当然のような口調でこう返す。
「当たり前じゃないのぅ。私はこの学園の生徒会長。
生徒会の仕事にいそしむのは会長として当然の責務だわ」
「せ、責務・・・・・・」
令の口からは一生出てこないと思っていたその言葉に、
太刀は目を点にして口をポカンと開けた。
そして傍らで書類の整理をしていた撫子に、声をひそめて耳打ちした。
「おい撫子、今日の令は一体どうしたんだ?」
それに対して撫子は、肩をすくめてこう返す。
「さあ、私も知りません。
あんなに機嫌よく生徒会の仕事にはげむ令お姉様は初めて見ます。
何だか、不気味ですね」
「うむ、何かよからぬ事を企んでいるのかもしれんな」
「冗談に聞こえませんよ、それ」
「お前、ちょっと令に聞いてみろ」
「ええ?嫌ですよ。そういう事は太刀お姉様がお聞きになればいいじゃないですか」
「マッタク、しょうがないな」
太刀はそう言ってため息をつくと、ぎこちない笑みを浮かべながら令に尋ねた。
「令、今日は何だかやけに機嫌がいいな。何かあったのか?」
すると令は太刀の方に顔を向け、
これ以上ないほどの満面の笑みを浮かべてこう言った。
「ウフフ♡それは、ヒ♡ミ♡ツ♡」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
その言葉を聞いた太刀と撫子は、眉をひそめながら言葉を失った。
令がこういう表情でこういう事を言う時はロクな事が無いという事を、
太刀と撫子は今までの経験で嫌というほど思い知らされていた。
なので二人はそれ以上首を突っ込む事はせず、黙って令を見守る事にした。
果たして令のこの笑顔の訳は何なのか?
そしてこれから何が起こるというのか?
この時それを知る者は、令以外にはまだ誰も居なかった。




