お届けに上がりました
10月28日、霎時施。
よく晴れた空模様……天気予報は、俄か雨にご注意を。
お仕事に行かれている晴さんは傘を持っておらず、濡れてしまうと大変だからと自分に言い聞かせ、大きめの傘を一つ持って晴さんの職場へ。
揺れる電車内、言い訳じみたことを考えながら傘を強く握る。
勿論あなたに雨で濡れて欲しくないのは本心だけど……ただ、あなたに会いたい。
溢れる想いを抑えきれず、あなたにメールをする。
『大好きです。』
『もっともーっと大好きだよ。どうしたの?』
『雨が降るかもしれないので傘をお届けします。』
『ありがと。傘だけなのかにゃ?』
恥ずかしくて文字を打てずにいると、都合良くあなた最寄りの駅に到着した。
撮影スタジオまで徒歩五分。傘を差し駐車場へ入ると……遠くで手を振るあなたの姿。手元を
強く握り直すと、あなたは駆け足で私の元へ。
「雨降ってないのに……どうして傘差してるの?」
「…………直に降りますから」
「ふふっ、そっか」
あなたの唇と深く混ざり合うと、足元のアスファルトがポツポツと斑模様に。
もっと……もっとあなたが欲しいから、傘を放って抱きついた。
「あ、あの…………」
「……なぁに?」
「…………お、お届けに上がりました」
「ふふっ、承りました」




