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甘々ショート ラブコール


 茹だるような暑さに辟易し、アイスクリームでも買おうとコンビニへ。帰宅後リビングで開封すると、既に溶けかけていたアイスクリーム。

 庭の木々から聞こえる大合唱に、思わず笑ってしまう。


「ふふっ、あれだけ恋しかった蝉の声も……こんなに聞こえると、静かにーって言いたくなっちゃうね。一匹とかならいいんだけど。まぁ……そのうち聞こえなくなって、また淋しくなっちゃうんだろうなぁ」


 溶けかけのアイスクリームを食べながら視線を庭から彼女へ移すと、何やら複雑な顔をしてアイスクリームをペロペロと舐めていた。


 そんなことがあった翌日。

 いつも通り目が覚めて、顔を洗いリビングへ向かうと……


「きゃっ!!!? な、なに…………えっ!?」


 リビングの壁に巨大な蝉が一匹止まっていた。

 よく見ればそれが彼女だと分かったけれど……水色の美しい羽根を模したマントを着けて、何やら独特な声で鳴いている。


「みゃうみゃうみゃうみゃう……」  


 あー、ダメだコレ。可愛い過ぎる。


「ふふっ、どうしたの?」


「せ、蝉になってます。みゃうみゃうみゃう……」


 昨日の何かが引っ掛かってこうなったのだろう。夜中リビングでミシンの音がしてたし……


「可愛い蝉さん、どうしてここにいるの?」


「………………」


 恥ずかしくて鳴くこともしなくなった彼女。

 昨日の会話を思い出せば…………ふふっ、そういうことか。


「私が淋しくならないように一年中都合も程も良く鳴いてくれる蝉さんは……どこかにゃ?」


「…………みゃうみゃうみゃうみゃう」


 愛しさが暴発してしまう所を我慢して、もう一つ。


「因みに蝉の鳴き声って求愛行動らしいけど……そういうことでいいのかにゃ?」


「………………みゃうみゃうみゃう」


「ふふっ……じゃあ求愛、されちゃおうかな」


「み、みゃ………………」


 耳まで赤く染めた我が家の蝉はその羞恥心から固まってしまい……エアコンの温度を2℃下げて、そのラブコールに応えた。


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