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整いました


 マネージャーの栞とヘアスタイリストの葵が、スパ帰りに我が家へ立ち寄ってきた。

 

「いやー、整った整った。雫ちゃんもヒナちゃんも行くといいよ」


「ふふっ、温泉で謎掛けをしたんですか?」


「面白い。ホント、天然物だわ」

「ねぇねぇシオちん、私も天然だよ?」

「アンタのは知能不足って言うんだけど」

「そうやっていつも上から目線だけどシオちんだって私とたいして変わらないと思うよ」

「低脳と一緒にしないで」

「このババァ……じゃあ謎掛けやってみてよ!」

「……葵と掛けて断れない人と解く」

「その心は?」

「脳(NO)が足りない」 

「んだとババァ!!!!」


 結構本気の取っ組み合いをしている二人に狼狽えながらも仲裁している彼女。

 私が間に入る前に、彼女は機転を利かせた。


「そ、それで、“整った”とはどのような意味なんですか?」


「サウナを利用して躁状態になることね」 

「飛ぶぜ?」


「どうしたらそうなるんですか?」


「サウナ→水風呂→外気浴→サウナ……を繰り返すの」

「今日は七セットやったよね」


 彼女は二人の言葉に目を丸くして停止している。その姿が可愛いので私は傍観中。


「じ、自傷行為ですよ!!?」


「皆んな初めはそう言うけど、いざ整うと……ねぇ?」

「飛ぶぜ?」

  

 その行為がどれ程危険なのかを説明する彼女だけど……

 整った二人は、騒ぐだけ騒ぎ部屋を散らかして帰っていった。


 ◇  ◇  ◇  ◇ 


「今日は賑やかな一日だったね。結局整うってなんなのかにゃ?」


 就寝前の日課。寝室で彼女の髪の毛にヘアオイルを纏わせていると、徐ろに私に抱きついてきた。

 

「……整いました」


 一瞬なんのことかと思ったけれど、耳が真っ赤になっているのでそのまま口を閉じて彼女の声を待った。


「………………あなたへの想いと掛けまして、その濃度と解きます」


「ふふっ。その心は?」


「………………どちらも恋(濃い)です」


「……確かめていい?」


 小さく頷く彼女にときめきを隠せなくて、静かに電気を消した。

 多幸感に満ち溢れることをそう呼ぶのなら……私も彼女も、整っているのだろう。


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