甘々ショート taste me
さて、書店にやってきましたが、今日は定期的に行っているファッション誌のチェック日です。
と言ってもファッションが目当てではなく、誌面に載っている晴さんが目当てです。
この雑誌では一年を通して晴さんを取材した記事が掲載されているので要チェックです。
ふむふむ、バレンタイン特集……
様々なお菓子を手に取って愛らしい顔をされている晴さん。可愛い。好き。大好き。
そんな素敵な記事の隅には雑学が書かれていて……ふぇぇ、バレンタインにあげるお菓子には意味があるんだ。これは…………
◇ ◇ ◇ ◇
というわけで、バレンタイン当日です。
晴さんは朝一番のお仕事に行かれたので、計画していたお菓子作りを始めます。
購入したファッション誌に書かれていた内容によると、渡すお菓子によって意味が違うようです。
この中でも気になったのは……
【マカロン】あなたは特別な人
【マロングラッセ】永遠の愛情
【キャンディ】好き
【ドーナツ】大好き
この辺りでしょうか。
因みに、毎年渡しているチョコレートは“あなたと同じ気持ち”だそうです。
……どれも晴さんに伝えたい気持ちばかりだから悩んでしまう。全部伝えたいな。
◇ ◇ ◇ ◇
はい、全部作って合体させました。
盛り盛りな見た目になってしまったコレは、以前食べた◯郎系ラーメンなるものに似ている。
欲張ってバウムクーヘンとキャラメルとマドレーヌを追加したのが悪かったみたいです。
流石にこれは渡せないけど……でも、コレに込めた想いは本物。だからこの◯郎系は大切に内密に保管して一人でいただこう。
「お菓子出来たかにゃ?」
「出来ましたがもう一度作り直そうかなと…………ふぇっ!!!?? ど、どうして晴しゃんが??!!」
「雫がお菓子作りやすいように出かけてただけだよ。へぇ、これが……」
◯郎系を見た晴さんは察したように微笑みながら耳元で囁いた。
「あの雑誌見たんだ?」
もうどこからどこまで赤くなったか分からないほど全身が火照っているけれど仕方がない。
欲張りな私も好きになってくれるかな……
「は、はっぴーバレンタインです!!」
「ふふっ、ハッピーバレンタイン。お皿から溢れるくらい沢山の気持ち貰っちゃった。ねぇ雫……チョコレートってどんな意味があるんだっけ?」
「チョコレートは“あなたと同じ気持ち”で……晴さん、どうして上着を脱いで……」
「じゃあこの意味も…………分かるよね?」
曝け出された晴さんの胸元にはチョコレートペンで文字が書かれ──
“Taste me”
「雫、ハッピーバレンタイン…………おーい、雫?」
「そ、そそ、あ……………………」
「ふふっ、固まっちゃった」




