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甘々ショート⑩


 日を跨ぎ盛った次の朝、果て過ぎた彼女は私と同じ時間に目を覚ました。 


「おはよ、雫。大丈夫?」


「……おはようございます。幸せで溺れてしまいそうなので……ふふっ、大丈夫ではありませんね」


 そう言って彼女は私に抱きつきながら鼻先を擦付けている。

 少し乱れた髪、首筋についた痕。無垢な彼女との対比が愛しくて、強く抱き返す。


 私の鼓動の変化を感じ取ったのか、胸に顔を埋める彼女の耳は赤く染まっていた。


 見えぬ私の視線に気が付いたのか、照れ隠しに慌てて彼女は口を開いた。

  

「き、今日はどのような予定にしましょうか?」


「んー……今日はね、何もしない日」


 こうして抱き合いながら、時間や物事に縛られず……気随気儘に過ごそう、そう思っていたけれど…………


「どうしたの?」


「何もしないというのは……ふふっ、難しいことだと感じていました」


 私の胸に耳を当て手を添える彼女は、堪らなく愛らしい表情で目を瞑っている。


「こうして……あなたを感じてしまうので」


 どれだけ幸せに囲まれていても忘れてはいけない大切なことを……何度彼女に教わっただろうか。

 隣にいるあなたではなく、隣にいてくれるあなた。

 決して当たり前なことではなく、感謝と慈愛を込めてその幸せを抱きしめているからこそ……目の前の幸せはこんなにも清く美しく輝いているのだろう。


「何もしないのは……終わり」


「ふふっ、では何をされますか?」


「好きな人を抱きしめて……この幸せを独り占めするの」


「わ、私にも分けてくださいね?」


「ふふっ、どうしようかにゃ」


 いつだって隣にいてくれるから、冗談も一途な想いも笑い合え分け合える。

 大好きな好きを目一杯抱きしめると……腹が鳴る、午前九時。


「お腹空いちゃった。今日は私がメイン作るね。目玉焼き目玉焼き♪」


「ふふっ、では私はサラダを担当しますね」


 お揃いのエプロンを身に着け台所へ立ち卵を割ると、仲良く寄り添う二黄卵が顔を見せた。


 一つの皿に盛り付けた双子の目玉焼き。

 私達も同じように寄り添い箸を手に取ると……重なる二つの箸先の行方に笑ってしまい、互いに頬擦りをして、この幸せを半分こした。

  

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― 新着の感想 ―
[良い点] オフの日の晴。日溜まりの猫のような二人。 普段から早起きの雫は同じ時間じゃなくて実は狸寝入りに一票入れたいところw 起きてからも堪能っぷりがいいwスリスリ [気になる点] そろそろ雫を無垢…
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