甘々ショート⑨
ラジオの生放送に夏祭り、父親の市長選挙と盛り沢山の一日。祝勝会が終わり、雨谷家に漸く静かな夜が訪れた。
隣で横になる彼女は寝付けずに天井を見上げてた。
「ふふっ、眠れないの?」
「……とても素敵な一日だったので、未だに興奮しているみたいなんです。落ち着かせようとしているのですが……」
毎朝五時頃に目を覚ます彼女だから、例え寝れていなくてもその時間には活動してしまうだろう。なんとかして彼女をリラックスさせて少しでも早く寝かさないと……
「雫、服脱いで?」
「あ、あの……こ、ここでするんですか?」
すぐ隣の部屋には彩が寝ていて、その隣にはお父さんの寝室。色々したいけど……ふふっ、流石にね?
「ふふっ、しないしない。裸で抱き合えば落ち着くかなって思って。ほら、おいで?」
「で、では……失礼します……」
エアコンがよく効いた室内。
タオルケットの中で、温かく柔らかな私達が一つに包まっている。
この状況……理性を抑えるのに必死だけど、彼女の為ならば我慢我慢。
頭を撫でながら時折優しくぽんぽんと叩くと、彼女は愛しげに顔を擦り寄せる。
緩やかな時間が過ぎ、暫くして尋ねた。
「落ち着いたかにゃ?」
寝ぼけ眼にふにゃふにゃと返事をする彼女を想像していたのに……顔を真っ赤にした彼女は、口をパクパクさせながら呟いた。
「ど、どうしましょう……もっと興奮してしまいました……」
私は悪くない。可愛すぎる彼女が悪い。
「……タオルでも噛んでて? もう抑えられないから」
「あ、あの、晴さ── 」
気が付けば十時過ぎまで寝ていた私達。
私よりも少し早く起きた彼女は、首元を隠すようハイネックのシャツを着て、頬を赤く染めながら「おはようございます」と微笑んだ。




