日向晴の一日
朝、目を覚ますと出迎える愛しき人。
その微笑みに鼓動が速くなり、私の身体も目を覚ます。
顔を洗いリビングへ向かうと、朝食のいい匂いが漂ってきた。
出汁の香り、魚が焼ける香ばしさ。
今日は和食。そう考えただけで、お腹は音を鳴らしてひと足早く準備運動を始めた。
最良の状態で食べたい為、私も続くようにストレッチを始める。隣では私の真似をしたポンちゃんが楽しげに踊っている。
運動を終えた私に彼女は白湯を渡してくれた。飲み終えて、お礼のキスを頬にする。
コップを握りしめた彼女は、少しその手を震わせながら目を瞑った。
緩んで落とさないよう私がもう一度コップを受け取り、唇同士が優しく触れ合った。
◇ ◇ ◇ ◇
食後、普段は珈琲を飲むけれど……今日は紅茶の気分。
淹れようとソファから立とうとしたところ、アールグレイの香りが私を包み込む。
「どうして分かったの?」そう聞くと……「今日はなんだか紅茶をご一緒したいなと思いまして」。そう微笑みながらお手製のアップルパイと紅茶を私の前へ置き……顔を赤くしながらハグを要求するよう、手を前へ出す彼女。
ソファに座る私に跨がせる格好で彼女を座らせると……お互い引き寄せられるかのように、おでこ同士がつく。
私達恒例の我慢対決。
本日の結果は……私の負け。貪るように彼女を求めると、それに応えるように差し出された彼女との温かな場所で、紅茶が冷めるまで絡み合った。
◇ ◇ ◇ ◇
火照った心と身体、冬日和の下を散歩する私達には心地良い気温。
いつもと変わらない、彼女と同じ歩幅……ゆったりとした、私達の歩度。
東京のおまちの人の流れも、私達に割り込む事なんて出来ない。
横断歩道の白い線の上だけを歩いていると、なんだか楽しくなってしまい……彼女の手を引き、小走りで駆けていく。
渡り切ると、淑やかに笑う彼女が堪らなく愛しくて……大判ストールを目隠しにキスをした。
少し冷たくなったお互いの鼻先を、擦り付けて温め合う。
彼女の甘い吐息は、私に一層の甘さを求めさせる。
「ねぇ……いつから私の事……好き?」なんて、笑っちゃうくらい幼稚な質問。
透き通った彼女の瞳……彼女が口を開き始めると、時の流れが止まって見えた。
「あなたと出会う………ずっと、ずーっと前から好きです。それから── 」
彼女が空を見上げ、人差し指をくるくると回し始めると……風花が、舞い落ちる。
その指先に止まった淡い雫を、微笑みながら私の鼻先へと優しく付けた。
「ふふっ、これから先も……もっともーっと、大好き♪」
この幸せな日々が当たり前だなんて思わない。彼女が隣にいてくれる毎日が、私の宝物だから……だから私は、彼女に毎日この想いを伝えている。何十回、何万回言っても伝えきれない、愛するあなたへの想い。
あなたの事が誰よりも大好き。
あなたの事が何よりも大切。
「雫、ありがと。私もだーいすき♪」
彼女を真似して……昼八つ。
キスして惚気けて、幸せの今日を折り返した。




