日常ショート 日曜日
日曜日、今日は自宅で久々のライブ配信の日。
とは言ってもそんなに大層なものではなくて、使ってるコスメだったり食べた朝食の話だったり……
ただ、栞から口酸っぱく注意されていることが難点で……
ポンちゃん禁止、雫禁止。
せっかくなら一家総出で撮りたいのに。
軽く化粧をして、それなりの部屋着に着替える。日常感を出せと指示されているので……まぁこんなもんでいいかな。
仕事用のスマホ片手に、配信開始。
「おはようございます、日向晴です。あれ? まだ十時過ぎだからおはようございますで合ってるのかな? 合ってる?
ふふっ、ありがとうございます」
チャット欄を見ながら視聴者とやり取り。
配信直後だけど、もう数万人もの人が視聴して……今十万人を超え始めた。
「さてさて、今日は何を話そうかな……皆さん何かあります? んー、朝ご飯? 今日は色々とあったのでシリアルだけですね── 」
普段なら健康的かつ美味しい朝食が机の上に並ぶけれど……今日は──
「それで……し、しーちゃん? ちょっと今は……」
昨夜決まった罰ゲーム、彼女は今日一日猫でいることになった。一度言ったら譲らない彼女なので……心身共に完全な四足歩行の猫になってしまっている。
ちなみに今は、私の膝の上に乗ろうと甘えながら身体を擦り付けている。
「ふふっ、そうですね私の世界一可愛い猫ちゃんで……甘えたいみたい── 」
机の下で転がる彼女の頭を撫でていると、指先を甘噛みしてきた。
全く……甘え上手なんだから。
「しーちゃん、良い子だからもう少し待ってられる? 終わったら……ふふっ、いっぱい可愛がってあげるからね」
我慢出来ない彼女は机と私の間から顔を出そうとして……付けている猫耳が一瞬カメラに映った瞬間、我が家の固定電話が鬼のように鳴り響いた。
スマホの通知は栞の名前で埋め尽くされている。
思わず笑ってしまい……栞に見せつけるように微笑み机の下で彼女の全身を愛撫すると、私だけに聞える微かな嬌声が漏れ始めた。
「ふふっ、電話ですか? マネージャーからですね。私以外映すなって言われてるので、今しーちゃんの耳が映っちゃったから……ふふっ。みんなにも見せたいんですけど、マネージャーに怒られちゃうのでまた今度の機会に。いつになるか分かりませんが、時間があればこうして配信したいなと思います。ご視聴ありがとうございました。私はこの後しーちゃんをお布団に連れて行って、いーっぱい愛でたいと思います。働いている方もお休みされている方も、今日という日が良い一日になることを願ってます。お相手は私日向晴と……ふふっ、愛猫のしーちゃんでした。ではまた、バイバイ♪」
盛りのついた日曜日。
今日も我が家では一匹の猫が鳴いている。




