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誇り高き騎士団  作者: _
6/7

違うことをしたから

 脂の乗った肉はサボった身に染み、野菜は爽やかな気分にさせてくれた。


 シャキシャキ、良い音。


 早く食べることを騎士の教訓に刻まれている俺達は、食べ終えた皿を重ねてフレア様の近くで膝を休める。


 何かが来てもいいように。



「このまま、何もなければいいんだが」


「加護が悪鬼を払ってくれている、だから平和なのだ」



 夜は交代制で寝ることになった。


 三人が寝て四人が見張る。その繰り返し。


 見張っていた俺達は夜にも出てこない悪魔を不思議に思った。


「変だな」


「ブラッドもそう思う?」


「オーラの近くで夜はかなり危ないと思っていた」


 実際、フリートの比較的安全な場所でも夜は悪魔がうろつくから危ない。


 こんな所なら、死活問題だと俺も思う。


「本当に加護があるのかもしれないな」


 ブラッドはそう言って見回りを再開した。


 俺は立ったまま寝とくか。


「寝るなよ」


 注意されてローテーションに従い、長い夜が明ける。




 俺は朝からフレア様に手を引かれて採取に向かった。


 昨日とは別の方向。


「手を握られては剣を抜けないのですが」


「あんな所にいたら頭おかしくなっちゃいそう!」


「はい?」


 許しを得て左手を握ってもらい、右手で剣を抜いて構えた。


「扱いが硬いの! もう無理!」


「騎士はこのように育てられているので」


「もう嫌!」


 侮辱罪に当たると言われたこともある。


 あまり言葉を砕くのは許されない。


「では、長い間、採取しませんか?」


「そのつもり! 守ってて!」



 オホンと咳を払う。


「俺もそのつもり、一緒だね」



「……それでお願い」


「もちろん」


 フレアの採取を見守る。


「今日はゆっくり、ゆっくり」


「待つよ」


「離れたくて遠い所に来ちゃった」


 えへへと笑うワガママ娘。


「良いと思う」


 フレアの本性が知れた気がして、嫌な思いはしなかった。


 不意にかかってきた悪魔を切り抜き、問題は何もない。



 振り返って遠すぎることに気づく。


 木々のせいで拠点が見えない。


 ゾワッと危機感が走る、昨日は見えていた拠点がない。


 いつもと違う状況。



「もう、戻ろう」


「嫌よ!」


「遠いのでこれ以上の疲労は危ない」


 説得するとなんとかフレアは折れてくれた。


「では、帰りますか?」



 冗談で伸ばした左手に白くて細い手が重なる。


『……はい、帰りましょう』


 フレアは、フレア様に変わっていた。



 歩いて歩いて止まる。


「少し、休みます」


 また歩いて拠点の柵が見えてくる。


 建物がなくなってる、何かに使ったのかな?




 よく見ると、見慣れた大剣が地面に突き刺さっていた。




「……ッ!」


 俺はフレア様の手を引いたまま走り、前のめりに状況を見た。


 悪魔の軍団が拠点を荒らし回り、騎士達が武器を手に応戦していた。


『大丈夫か!』


 俺の言葉に応える騎士は居ない。



 咄嗟にフレア様を離して、一番近くの斧使いに加勢した。


 背後から悪魔を貫き、一体二体三体と仕留める。


 サラサラと粒子になって消えていく。



「これはどういうことだ!」


「分からない、気づいたら大剣使いが吹き飛んで!」


 遅れてやってきたフレア様が息を荒らげる。


「一番デカくて強い奴はブラッドが倒した! だが悪魔の数が多すぎる!」


 斧使いは盾を持つ剣士に向かっていった。


 俺もやるしか……不意に前を見て絶句した。


「む、無理だろ」


 オーラから前は悪魔で溢れていた。


 俺達が苦しむ姿を楽しむように、後方で待っている。



 それでも勝てる可能性を信じて俺達は武器を振る。


 古い剣がダメになれば、武器庫の剣を。


 フレア様を守りながら仲間の背後を守る。


 槍使いと盾使いが、遠距離から不意を突かれて崩れ落ちた。


「ぐああっ」


「お、おい!」


 手当てをすることも許されず、苦しむ仲間に目を合わせる。


「来るな!」


 悪魔を切り裂いて仲間とフレア様を交互に見る。


「……」


「ちっ!」


 声は消えていた。


『待たせた』

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