騎士の慈悲
元村の拠点に戻った俺達は肉を見せて騎士のやる気に油を注ぐ。
そのまま調理をして拠点の整備を手伝った。
狭い家に七人で寝て次の日。
この日から王の娘が来る。
「総員で拠点を開発」
よし、俺はサボれそうだな。
「分かった!」
「やる気で助かる」
俺はそれなりの声を出し、急いで家の裏に隠れた。
「そんなわけ」
それぞれが対策を施す中、俺は手をクロスさせて剣を抜く。
シャラリと抜けた剣を左手で扱う練習。
こうか、こうかと試行錯誤。
それなりに振って両手を交えるトレーニング。
『今努力するなよ』
声に振り返るとブラッドが。
「バレたか!」
「両手に剣を使うメリットは守りも攻撃も二倍になるからだ、片方が失われた時、盾の方が良くなる」
「こうやって同じ方向に二つの剣を振って弾けばいい?」
「まあ、そうだな」
頷きながら振る練習。
「今度それで勝負してみるか」
「ブラッドと両手でやったら殺すかもしれない」
「努力に惚れるな」
サボったことを怒りもせずに帰っていくブラッド。
更に練習していた俺は集合の合図に剣を収めて向かった。
「そろそろ娘さんが来る時間だ、整列して待とう」
大剣使いの横にみんなでピッタリと並んで待つ。
しばらくして馬車が見えてきた。
近くで止まると中から一人の女性が降りてきた。
『私のワガママを聞いてくれて、ありがとうございます』
綺麗な女性はサラサラの白い髪を揺らして頭を下げた。
「いえ、フレア様に一目会えて光栄です」
大剣使いの言葉にニコリと微笑んだ。
「早速、採取の護衛をお願いしたいのですが」
その言葉に騎士達が手を上げる。
『私が』
『僕が』
『我が』
ブラッドを含めた六人の手が上がる。
これは流れを汲むべきか。
『お、俺が……』
『『燻る誇り高き騎士に慈悲を』』
「えっ?」
タイミングを合わせたように他の騎士の手は下がっていた。
「最後まで手を上げるか悩んだのは、実力と責任を比べたからだろう? というのは冗談だ」
大剣使いがジッと見つめてくる。
「お前は一番最後に来た、そしてブラッドから聞いている、作業をサボっていたと」
「ば、ばらされたのか!」
「お前が来るまでに話を合わせていた、さあ、重要な仕事をこなして来るがいい」
「ブラッドめ!」
仕方なく俺はフレア様に近づく。
『よろしくお願いしますね』
白い歯を見せて笑う美人さん。
「こちらこそ」
俺の態度も白々しくなっていた。