友達になった理由
「そういやさ、うちらってなんで友達になったんだっけ?」
愛の家で2人で勉強中、急にそんな話を切り出したのは萌だった。
「えーっと・・・あれ?なんでだっけ?」
「愛もわかんない?」
「うーん・・・なんかそこだけすっぽ抜けてる感じ。」
「あ〜うちも同じ。そこだけ綺麗に記憶ないんだよね〜」
「うん」
2人で勉強の手を止め、思い出そうと頭を使うがやはりその友達になった理由だけがすっぽりと抜けている。
「他の子だったら何となく覚えてるんだよ。」
「うん。」
「でも、愛と友達になった理由というか話?が思い出せないんだよね〜」
「私も。全く萌と友達になった時の思い出が思い出せない・・・」
小学6年の頃から友達になって別の高校に進学しても変わらずお泊まりをするほど仲がいいにもかかわらずなぜだか友達になった理由が思い出せない。なんだか胸の奥が気持ち悪く感じる。
「ふーむ・・・じゃあさ、息抜きも兼ねてちょっと消えた思い出を思い出すために探検と行きましょうぜ。」
萌はへっへっへっと悪い顔をする。
「飽きただけでしょ笑いいよどこ行く?」
「じゃあ、時間もあるし〜」
と萌はルーズリーフを1枚取りだし、簡単な地図を書く。
「まず、小学校行って、小6の時よく行ってた公園行って、登下校の時に使った道とかも通って最後あの神社行こうよ!」
ルーズリーフに書かれた地図に丸や矢印などを書き込みながら丁寧に萌は散歩ルートを教えてくれる。
「たしかここに自販機あったよね。ここでジュース買って行こうよ。」
「いいね!」
赤ペンで自販機のある場所に星をつける。萌もたしかここはもう閉まっちゃったけど駄菓子屋があったよね!と黒丸を書く。
「あったあった笑」
「よーし地図もできたし、そろそろ行くか!」
「うん。」
「荷物ここ置いてていい?」
「いいよ〜財布とスマホだけ持ってこ〜」
「さんせーい」
スマホと財布をポケットに入れ、愛の家を出た。
まず初めに母校である小学校に行く。
「うっわなっつ!」
「それな笑」
門が閉まっていて中には入れないが、外からでも見える鉄棒や登り棒、なぜあるのか分からない変な遊具、全てが懐かしく感じる。
「うち小学校そこまで好きじゃなかったけどやっぱ久々に見ると懐いな〜」
「そうだね〜」
そういやあの鉄棒で鼻うってめちゃめちゃ痛かったんだよ〜っと思い出話をする。しかし、2人が友達になった理由は思い出せなかった。
「うーん・・・出会った場所だから思い出すかと思ったけど・・・」
「無理っぽいね・・・」
「よし、次行こ!」
「うん。」
また歩き出す。次はよく遊んでいた公園へ行く。
公園へ行くと子供はおらず、公園とは思えないほど静かな場所になっていた。
「全然人おらんね〜」
「ね〜」
「まぁここ、結構入り組んだとこにぽつんとあるから人こんのかな〜」
「かもね。」
「よーしブランコしよ!」
「おっけー!」
人の居ない公園のふたつあるブランコに1人ずつ座って漕ぎ始める。
「たしかさ!ここから飛んでどこまで行けるかやったくない!?」
「あー1回流行ったよねー!」
ブランコに乗っているためいつもより少し大きめの声で話す。ここでも何個か懐かしい思い出を話すがやはり、2人の友達になった理由を思い出すことは無かった。
「うーん・・・」
ブランコから降りてシーソーに座りながら頭を抱える。
「思い出せないよね〜」
「なんでだろ」
「わかんない」
「うーん・・・まぁ次行こー」
「遊んだら喉乾いたけん自販機でジュース買わん?」
「いいよ〜」
公園の近くにある赤と青の2種類の自販機の前に二人で行く。
「何にするー?」
「うーん私はオレンジジュース!」
お金を入れ、オレンジジュースを買う。
「萌は何にするの?」
「うーん・・・よし決めた!」
萌は自販機にお金を入れ、水を買った。
「よーし飲み物買ったし次はー」
「よく行っとった神社やろ!」
「そうそう!」
軽く乾杯してジュースを飲み、神社に向かった。
神社には誰もおらず、社と隣にそびえ立つ大きな木があり、周りには木々が生えていて昼の3時頃にもかかわらず少し薄暗い。
「昔から思ってたけどやっぱここってちょっとくらいよね」
「わかる」
「でもそれがいいんだよね〜」
「それな〜笑」
神社に入り、小さな敷地内をぶらぶらと歩く。奥の方に歩いていくと少し変わった形をした木の前に小さな祠があるのを見つける。
「これって・・・」
「たしかこの木に住み着いてたたぬきの祠だよね?」
昔学校で聞いた話を萌にすると萌の目の色が変わった。
「思い出した・・・」
「えっ?」
「思い出した!クロちゃんだよ!」
「クロ・・・ちゃん・・・?」
「覚えてない!?あの・・・ほら・・・えっーと・・・」
萌が手を動かしながら「確かこのくらいの大きさのさ、黒い塊いたじゃん!」と説明してくれる。
「あっ・・・あぁ!クロちゃん!そうだ!そうだった!クロちゃんだ!」
その時、全てを思い出した。遡ること4年前の小学6年の夏休み。
その日は今年1番の猛暑日で、ゲェゲェ言いながら塾に行っている途中だった。塾に行くための通り道にある神社で見た事のある顔がうずくまっていた。
「あ、あれって同じクラスの原井さん?何してんだろ。」
5年生の時から同じクラスで挨拶をする程度のクラスメイト、原井 萌。いつもなら何も感じず、何してるんだろまぁいいかと塾に向かうはずなのにその日はなぜだか彼女から目が離せず、自転車を神社の入口の端の方に止め、彼女に近づいて行った。声をかけようとした瞬間、原井が立ち上がり、どこからか現れた黒い何かに連れられて奥の祠に走っていった。
「待って!」
危ない!直感的にそう思い、走って原井さんの手を取ると、びっくりした原井さんがこっちをむくのと同時に前にいた黒い何かが大きくなり、原井さんと一緒に飲み込まれてしまった。
黒い何かの先はさっきまでいた神社だった。しかし、その神社には色がなかった。真っ白い草木、真っ白い社、その不気味さに思わずギュッと掴んでいた原井さんの手をさらに握ってしまう。
「いててて強い強い」
「あっ、ごめん。」
ばっと手を離す。原井さんの手が赤くなってしまっている。
「えっと・・・條山さんだっけ?」
「うん。條山 愛。愛って呼んで。」
「わかった。うちは原井 萌。萌でいいよ。」
「わかった。あのさ聞きたいんやけどここどこ?」
「ここはクロちゃんの中やで。」
「クロちゃん?」
「そう、あそこにおるやつ」
萌が指さした方には先程の祠があり、祠の扉が開いていてそこに先程の黒い塊のような者がいた。
「ここから帰れるの?」
「一応帰れるよ。いつもはクロちゃんと二人で遊ぶんやけど今日は愛ちゃんが来たけんクロちゃんがびっくりしてるっぽい。」
たんたんと話す萌はどこか寂しそうに感じた。
「私、塾行く途中だから帰らなきゃ!」
「そーなん?じゃあ急いで帰らなね。クロちゃ〜んこの子帰るって〜」
「ヤダ」
「えっ」
「えっなんで?」
「ダッテ、ソイツカッテニハイッテキタ。ヨンダノモエダケナノニ。」
「この子だけ帰らせれんの?」
「ウン、カエルンダッタラモエモカエルコトニナル。」
「はぁ〜ここほんまめんどいな・・・」
「えっとどういうこと?」
「あーごめんな。説明するわ。」
そう言って萌はクロちゃんとの会話を切り上げ、愛の方をむく。
「ここはクロちゃんの中なんだけど、これるのは3日に1回だけで、今聞いた感じだと帰れるのも1回だけらしい。めんどくさい場所だけど誰にも邪魔されない場所だよ。ママにも兄ちゃんと姉ちゃんにも、あいつらにも。」
最後の「あいつらにも。」という時の声はとても低く、憎悪が詰まっていることが伺える。
「3日に1回はここで遊んでるの?その・・・クロちゃんと」
「うん!クロちゃんは面白いんだよ!なんにでもなれるし、この前は嫌いな人が怪我すればいいのにってクロちゃんに話したらあいつ階段から落ちて怪我してたんだよ!」
ふふんとドヤ顔でクロちゃんのことを話す萌。その萌の奥でクロちゃんと呼ばれた黒い塊は姿をなにかに変形させ始めた。
「う、後ろ・・・」
「えっ?」
後ろを指さしながら言うと萌が振り返る。クロちゃんは人型になっていた。
「クロちゃん?大きくなってどしたん。」
「モエ、ボクトトモダチ?」
「うん。クロちゃんは私の一番の友達だよ?」
「ボク、モットモエトイッショニイタイ。モットアソビタイ。」
「うん。」
なんだか嫌な予感がする。背中を冷や汗がつーっと流れる。
「モエ、ガッコウキライデショ?」
「嫌いだよ。」
「オウチモカエリタクナイ?」
「もちろん、前にも言ったじゃん。」
「ジャア、ボクトイッショニココデクラソウ?イッショニナロウ?」
そういうとクロちゃんは萌の目の前まで目にも止まらぬ早さで来ると、萌の首に手を回す。
「クロちゃん?」
「イッショニ・・・」
「ダメ!」
クロちゃんのモヤのような手をガシッとつかみ萌の首から外し、萌の手握って、萌をこちら側に引く。
「愛ちゃん!?」
「ナンデ、ナンデ、モエハボクノ、オマエニ、キュウニアラワレタオマエニ、ナニガワカル!!!」
怒ったクロちゃんが人型から何かわからない巨大な何かに姿を変えるその大きさは3mほどありそうだ。
「逃げよ!」
「えっ!まっ!」
「マテェ!!モエ!!!」
萌の手を引き、足早に色のない神社を出る。神社を出ても色のない世界が続く。人がいない、車もない、色もない、何も無いでも自分たちが暮らしている町とよく似ている町を走り、追いかけてくるクロちゃんを巻く。幸いにもクロちゃんは大きいと足が遅いようだった。萌の手を引いて走っていったのはあの公園だった。
肩で息をしながら公園にある水飲み場で水を飲む。萌もぜぇはぁいいながら土の上に座り込んでいる。
「こっち、水飲んで、」
たえだえに水飲み場を譲る。すると萌は頷き、水を飲む。2人の息が落ち着いた頃。萌が口を開いた。
「なんで、助けたの?」
「えっ」
「ほっといて1人で逃げればよかったのに。クロちゃんの狙いは私だったんだもん。」
「置いていけないよ。もう友達じゃん!」
「えっ」
「えっ違うの?」
萌はぷっあはははと笑い出す。そんなに間抜けな顔をしていただろうか?
「な、なんで笑うの!」
「だって、この短時間でもう友達って笑」
「え〜もう自己紹介してあだ名で呼びあったら友達でしょ!」
「あははなにそれ笑」
「違う?」
「フフッまあ、友達でいいよ。」
「やったー!じゃあ今日から友達ね!」
「うん!」
「そういえばなんでクロちゃんに狙われてるの?」
「前ここに来た時愚痴ったんだよね。もう学校にも家にも行きたくないって、そしたらクロちゃんに『ソノキモチガホントウナラ、ミッカゴニマタアノバショニイテ』って言われて、今日が3日後で待ってたの。まさか殺されかけるとは思わなかった。」
萌は笑いながら話す。笑い話で済む話ではない。
「でも、殺されてた方が良かったかも。」
「なんで!?」
「学校に友達いないし、あいつらは少し髪が長いからってからかってくるし、家帰っても親に『お前は本当に出来が悪い』って言われて、勘違いかもしれないけどなんか兄ちゃんと姉ちゃんにもくすくす笑われるし、生きてても楽しくないから」
「・・・」
何も言えなかった。萌の目は少し涙が溜まっている。
「でも、愛ちゃんが止めてくれてよかった。」
「なんで?」
恐る恐る聞いてみる。萌はこちらを向いて笑いながら続ける。
「少し前までクロちゃんと一緒になれるなら死んでもいいって思ったけど、今になってあの時愛ちゃんが止めてくれなかったら、助けてくれなかったらうち、死んでたんだってちょっと怖くなっちゃって。」
「・・・」
「それに今さっき愛ちゃんが友達になってくれたから、死ねなくなっちゃった。もう少し、希望のない世界でも生きたくなっちゃったじゃん。どうしてくれんの笑」
あははと笑いながら萌は愛の肩を軽く叩く。その目には涙が浮かんでいる。
「ねぇねぇ、萌。」
「なに?」
「萌ってアレ見てる?」
「アレって毎週木曜の夕方にかかってるアニメのこと?」
「そう。名前忘れちゃったけど笑」
「あーうちも覚えとらん笑でも、見てるよ。」
「今日ここから帰ってアニメ見てさ、明日学校で話そうよ。そのアニメのこととか他にもいろいろ。」
萌は少し黙ったあと、「いいよ!じゃあ寝て忘れないようにちゃんと見なきゃね!」と笑いながら言った。
「そうだね笑」
あははと笑っていると、地響きのような音が聞こえる。
「えっなに地震!?」
「ちゃう!これクロちゃんや!」
「えっ!?」
「怒りで大きくなっとんじゃないかな・・・ここにこられたらやばい!隠れよ!」
「うん!」
公園の端っこにある物置小屋の中に二人で隠れ、鍵を閉める。地響きが大きくなるとピタリと止まった。すりガラスの窓から外の様子を伺うと、さっきまでいた水飲み場辺りに巨大な黒い塊がいるのがすりガラスでぼやけてみえる。いた事がバレているのではないか、きっと見つかったら殺される。そう思いながら萌の手をギュッと握り、二人で息を殺す。
「モエ・・・モエドコ・・・ドコオォオオォォォオ!!!」
癇癪を起こす子供のように黒い塊が大声を上げながら水飲み場辺りで地団駄を踏んでいるようだ。やがて、地響きが遠くへ消えていった。
「行った・・・?」
「みたいやね・・・」
「めちゃくちゃ怒っとるやん・・・」
「しゃーない、クロちゃんも私が初めての友達って言ってたから・・・」
「わお・・・」
「早いとこここから出た方がええね・・・」
「そうだ、ここってどうやって出るの?」
「前クロちゃんから聞いたのは高いところから飛び降りると元の世界に帰れるって。いつもだったらクロちゃんが高い高いしてくれて目が覚めたら自室で寝てるんだけど・・・」
「高いところ・・・あっ」
「「学校!」」
2人で顔を見合わせて、同じ言葉を言う。このふたりの知っている高いところは学校程度だ。
「学校の4階なら高いよね!」
「うん!」
「よし、そうと決まれば学校に行こう!」
「うん!」
物置小屋から出て辺りを見る。鳥の声ひとつない色のない町。地響きの音もしない。クロちゃんは近くにいないようだ。
「今なら行ける」
「よし、走ろう」
2人はギュッと手を繋ぎ、自分たちの通っている小学校を走って目指す。
小学校につくと正門が大きく壊されており、運動場には何かが引きずっていったようなあとがついてる。
「これは・・・」
「クロちゃんだね・・・」
「・・・行くしかない!」
「よし、引き締めてこ。」
二人で顔を見合わせ、頷く。そして、自分たちの教室をめざして、歩き始めた。クロちゃんがはっていったであろう跡がついた運動場を通り、ガラスが粉々になった壊された玄関扉を通り、校内の両端に設置された階段を1階、2階と登っていく。4階につき、階段から少しだけ顔を出し、自分たちの教室のドアだけが壊されていることに気づく。
「やばい。」
「こりゃ出待ちしてんな。」
「でも行かなきゃね」
「多分他の教室全部鍵しまってるやんね。」
「うん。」
萌の手をギュッと握ると、萌も握り返してくる。大丈夫。そう励まされている気がして、震えていた足を1歩前へ出す。2人でなら大丈夫。この2人なら何があっても大丈夫。そんな気がする。そんな気がふつふつと湧き上がり自分に勇気と安心を思い出させてくれる。
教室へはいると、教室の真ん中にぽつんと1匹のたぬきがいた。そのたぬきはこちらに気付くと振り返る。
「そんなに身構えないで。」
「!?」
「クロ・・・ちゃん・・・じゃない?」
「クロちゃんだけどクロちゃんだよ。」
「ど、どういうこと?」
「クロちゃんの理性、要はクロちゃんの半身だよ。」
「えっ?」
頭の処理が追いつかない。クロちゃんは2匹に別れたってこと?どういうこと?と萌の顔を見ると全て悟ったような顔をしている。なんでさっきのでわかるの?え?
「あなたはクロちゃんのしっかりした方ってことでしょ?今暴れてるクロちゃんは本能?って事でしょ?」
「そう。萌はやっぱり話が早いね。」
さすが僕の友達と自慢そうにたぬきがドヤ顔する。いや、お前なんもしてないやん。
「萌はもう死ぬのはやめるの?」
「・・・うん。やめる。」
「そっか。良かった。ずっと、萌えを止めたかったんだ。でも、あっちが強くて止められなかった。ごめんね。」
「いいよ。クロちゃんのせいじゃない。」
「ありがとう。やっぱり萌は優しいな。」
たぬきが笑ったような気がする。色のない世界で唯一色の着いた2人と1匹。何もかもが白い世界で多分1番目立ってると思う。
「愛・・・だったかな。」
「はい!」
急に名前を呼ばれてびっくりする。寝かけていたところを先生に当てられたように声が上ずってしまった。
「萌は、こう見えて寂しがり屋で人付き合いが苦手で口も悪くってでも、すごく優しくて、理解力があってとてもいい子なんだ。きっと、というか絶対、萌はこの先人付き合いで失敗してしまうと思う。だから、その時は愛、君が萌の良き理解者であって欲しい。」
「わかりました。」
「もし、もしも君が萌の良き理解者でなくなって、萌が若くしてこちらに来てしまった時は、僕が君をこちらへ連れてくる。萌は、僕の大切な友達だからね。よろしく頼むよ。」
「はい!絶対、萌の友達でいます。」
「ありがとう。それが聞けてよかった。もうそろそろ向こうへ帰らないとね。あいつも来てしまった。」
窓の外を見ると猛スピードで巨大な本能の方のクロちゃんが走ってこちらをめざしていた。
「やばっ」
窓の鍵を開け、窓をカラカラと開ける。萌を見ると、たぬきに抱きついていた。
「ごめんねクロちゃん。またね。」
「またね、かぁ・・・」
「出来ないの?」
「君らの記憶は消さないといけないから。でももし、思い出したら、その時は祠に花でも添えてくれ。」
「うんわかった。絶対思い出すよ。」
「私も!多分思い出すと思います!」
「フフフッ。さぁ、行った行った。」
「はい!」
「またね!」
そう言って2人で手を繋いで窓から身を投げる。身を投げた時、本能の方のクロちゃんの断末魔が耳を指す。2人の繋いだ手は固く結ばれていた。もう解けないように。
その後、2人は気を失った状態で神社で発見された。後から聞いたが自分たちは3日ほど行方不明だったらしい。目が覚めた時、もうクロちゃんのことは覚えていなかった。ただ、萌は愛が友達である、愛は萌が友達であるということだけ覚えていた。
そうして今に至る。
「そんなことあったよね〜」
「あーなんかスッキリ〜」
「それな〜!」
「逆に本能のクロちゃん怖すぎて忘れててよかった気もする笑」
「確かに笑小6の自分にはインパクト強すぎてトラウマもんじゃん笑」
あははと笑いながら祠に目を向ける。
「何置こうか。」
「花添えてって言われたけど今持ってないもんね〜」
「あっ、あれは?」
「あれ?あぁ、お守り?」
「そうそう。小6の時学校最後だから〜ってお守り作ったよね。」
「持ってる持ってる。」
「じゃあお守りおこうか。」
「だね」
萌は財布に着いているお守りを外し、祠の前に置く。愛はスマホのストラップの中からお守りを外し、祠の前の萌のお守りの横に置く。
「ちゃんと約束守ってますよ!たぬきさん!」
「クロちゃん。ちゃんと思い出したよ。」
2人は思い思いにそういうとじゃ、帰ろっかと帰路につく。
「クロちゃんの言う通り、高校の人間関係失敗しちゃったな〜笑」
「ほんとだね笑」
「クロちゃんにはお見通しだったかー笑」
あははと笑う。そんな2人の後ろで祠の扉が開き、たぬきの手に黒いモヤがかかった手が2つの手作りのお守りを大事そうに祠の中へ持っていく。そして、祠の扉は閉まった。




