春冬冬冬
春夏秋冬、彼はそれを自分の人生に当てはめた。
確かに春はあった。
友と語り明かし、スポーツで汗を流し、不器用な恋をしたのだ。
青い春だった。
彼はそれを思い出していた。
だが、今ではそれは楽しい過去の思い出ではなく、
思い出す度に今の虚しさをより強調してしまう、
悲しいトリガーになっているように思えた。
もう戻れない日々に対して、
いつまでも嘆いているよう気がしていた。
彼は大学を出てから社会人として、真っ当に働いた。
朝から晩まで、真っ当に働いた。
真面目に生きているのだが、
生きている実感があまりなかった。
友人と遊ぶ事も減り、
同僚との飲み会ではただお金が減り、
大学時代の恋人と別れてからは、
新しい出会いもなかった。
そして、淡々としているが、物凄い速さで過ぎていく日々に驚いていた。
春夏秋冬、彼はそれを自分の人生に当てはめた。
彼が今生きている季節は冬だと思った。
このままだと、春冬冬冬の人生だと思った。
雪のせいで、どこまでも変わらない風景が続いているように思えた。
孤独が余計に身に染みる気がした。
雪を掻いても、掻いても、
雪はまたすぐ積もった。
毎日、それを繰り返しているだけに思えた。
本来なら春の次には夏が来るはずだった。
彼は眩しい太陽の下にいるはずだった。
彼は今の自分の状況が嫌いだった。
だけど、
自然の季節と、人生の季節では一つ、
決定的に違う点があった。
それは、自分で季節を選べる事だった。
彼は自分がいる季節を春でも、夏でも、秋にでもでき、選べるのだ。
冬は勝手に訪れたのではない。
彼が選んだのだ。
そう思い直してから、
彼は新しい行動、新しい挑戦をどんどん始めた。
それを続け、繰り返し、しばらくすると、
夏の太陽が高く昇り、
彼の周りの雪を溶かしはじめた。
雪に覆われた風景は変わり、
世界は彩られていった。
更に時間が経つと、
草木が生い茂り、虫たちが地を這い出し、
鳥は鳴き、青い空が広がった。
彼は人生の新しい季節に足を踏み入れたと思った。
そして、彼が望むのなら、
ずっと夏の中を生きられるのだ。
同じようにして、
いつでも秋の紅葉を観る事ができ、
いつでも春の風を感じられるのだ。
それに、
またいつか、一面が真っ白な冬の景色が見たい日が来るだろう。
春夏秋冬、彼は自分が過ごしたい季節を選んだ。
彼は今はまだ、
眩しい太陽の下にいたいのだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
人生を〇〇に当てはめる、と言う表現は、
キャンバスという短編でも使用しましたが、
少し意味合いが違います(^^)
個人的には冬も好きです✌︎('ω')✌︎
もし宜しければ、感想、評価、頂けると嬉しいです。




