2.ダンとの接触
「まさか、こんなガキがあの有名な『リアン様』だなんてなぁ?」
「え、っと……なにか、用でしょうか」
腕を組み、こちらを見下ろしてくるダンさん。
彼はニヤリと口元に笑みを浮かべていた。そして、こう言うのだ。
「別人かと思ってたぜ? 『役立たずのぼっち』と『天才加工師』――ってのはな。まさか陰でこそこそ、こんな活動してやがるとは……」
それはまるで、僕の活動を非難するようなもの。
だけど、こちらとしてはそう言われる筋が分からないので、首を傾げるしかなかった。すると僕以上に激憤したのは、義妹のフラン。
彼女は前に出ると、キッとダンさんを睨み上げた。
「なに、その言い方! まるでお兄ちゃんが悪いことしてるみたいに!!」
「あん……。お兄ちゃん、だぁ?」
そして、そう叫ぶと相手はちらり。
フランに視線を落とし、何かを納得したように頷いて――。
「がっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!?」
突然に、大声で笑い始めた。
それはギルド全体に響き渡り、騒動に興味を示していなかった人たちでさえ何事かと集まってくる。
意味が分からずに唖然としていると、彼はこう言った。
「いやぁ……。お前さんが『噂』の子供か、と思ってな!」
「『噂』……? なんなの、それ!」
売り言葉に買い言葉。
喧嘩腰のフランを止めることは出来なかった。
しかしダンさんは、そんな彼女の威勢を良しとしたのかこう口にする。
「いやぁ、話題になってたんだよ。役立たずのリアンが――」
そしてそれは、
「どこかの薄汚い女の子を囲った、ってな!」
「――――――――っ!」
聞き捨てならないものだった。
僕はとっさに、守るようにしてフランの前に出る。
ちらりと少女の顔を見ると、どこか困惑するような色が浮かんでいた。しかし、ダンさんはそれすらも楽しむかのように続ける。
「がっはっは! まさか、本当だったとはな! ――なんだ、嬢ちゃんはこんな役立たずの夜伽でもしてるのか? 汚れ物同士、それはお似合いだな!!」
「やめてください!」
「がっはっはっはっは!!」
僕は抗議の声を上げるが、それでもダンさんは笑うことをやめない。
奥歯を食いしばって堪えるが、今にも手が出そうだった。
すると、それよりも先に――。
「お兄ちゃんを、馬鹿にするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」
フランが動いた。
少女は腰元からナイフを取り出して、ダンさんに迫る。
そして今にも一撃を加えようとした――その時に、僕はとっさに割って入った。
「お兄ちゃん!? どうして、止めるの!!」
彼女の手を押さえて、身動きを封じる。
するとフランは驚いた表情で、僕のことを見上げてきた。
「駄目だ……。ここで挑発に乗ったら、相手の思う壺だ!」
「でもっ……!」
僕はそう言って落ち着くよう諭す。
しかし義妹の怒りは収まらないらしく、身体は強張ったままだった。そんなこちらの様子を見てダンさん――いいや、ダンはまたもや大声で嗤う。
「おいおい、あまり笑わせてくれるなよ! 美しい兄妹愛だってか?」
「――――――――っ!」
唇を噛んだ。口内に鉄の味が広がっていく。
それでも、これ以上は手を出すわけにはいかなかった。
しかし、その時だ。
ふいにダンが笑うのをやめて、こう言ったのは。
「こりゃ傑作だ――面白い。一つ、勝負といこうじゃねぇか」
「…………勝負?」
その落ち着き払った声に、フランも不思議に感じたらしい。
スッと力が弱まった。彼女が腕を下ろすのを確認して、相手は続ける。
「あぁ、勝負だ。技術師としての意地とプライドを賭けた、な」
ニッと、強面のその顔に笑みを浮かべて。
対して僕とフランは、息を呑んでその提案を聞くのだった。
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