4.少女の夜
宵闇の中で、フランはペンダントを見つめていた。
傍らに魔法照明を置いて、その輝きに目を細めている。ベッドのシーツをキュッと握り締めて、頬を自然と緩めるのだ。
彼女の生涯において、このように素晴らしい出来事は初めてだった。
今までの少女は不幸によって満たされていたのだ。
「リアン、お兄ちゃん……」
それがあの日――一念発起して逃げ出したあの時から。いや、もっと正確に言えばその後、青年に手を差し伸べられた瞬間から。フランの人生は大きく変わった。
父は殺され、母は行方知れず。
孤独の最中を歩いてきた少女にとってのリアンは、救いでしかなかった。
「お兄ちゃん、大好き」
義兄代わりのぬいぐるみを抱きしめながら、フランは呟く。
口にすると身体が火照るような、そんな感覚にあった。
それでも、ぐっと我慢して窓の外を見る。
「お兄ちゃんとなら、もしかしたら――」
少女の見据えるその先にあるのは、おそらく母との再会だった。
奴隷商に連れ去られた時に、離ればなれになった母。そんな大切な人との再会を果たすために、少女はある決意を固める。
でも、それは一人で決めてはならなかった。
――今の自分には、大切な家族がいるのだから。
だけれども、彼なら一緒に戦ってくれるかもしれない。
フランはもう一度、ペンダントを見た。
「本当に、不思議な光……」
三種の宝石。
七色の輝き。
それらは、見ていると心が安らぐ。
『魔導の拘束具』を外された時から、少女の中には抑えられていた力が渦巻いていた。暴走一歩手前といえば良いのだろうか。だが、それが今は落ち着いている。
リアンの作りだすアクセサリーを見ていると、それが分かるのだった。
きっと、彼は彼女の鞘となる。
【ヴァンパイア】として、血に飢えているフランの……。
「リアン、お兄ちゃん……」
もう何度目か分からない。
最愛の義兄の名を口にして、少女はベッドに潜り込むのだった。
ここまでで第一章です!
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