表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/23

3.二人の宝物







 ギルドから帰って。

 僕は自分の工房――アトリエに足を運んでいた。

 雑然としたここで、日銭を稼ぐためのアクセサリーを作っている。その他には冒険者仲間の武器の修繕なども。今まで何の気なしに行っていたことだけど、今日の一件で大きく意味を持つことになった。


「まさか、僕なんかの加工で……」


 工具を手に取って、それを見つめる。

 家出同然で実家を飛び出してきたわけだけど、工具一式は持ってきていた。もしかして、これらの工具のおかげなのだろうか。

 いいや、そんなことはないだろう。

 父さんも言っていたが、自分たちのそれはどこにでもある物だ、と語っていた。


「んー、分からないな。どうしてだ?」


 僕は頭を悩ませる。

 実に不思議な話だった。


「たしかに実家は加工師だけど、僕のそれのほとんどは独学だし……」


 そうなのだ。

 僕のやり方は基礎こそあれど、ほとんど自己流。

 それなのに、こんなことになるとは……。


「お兄ちゃん……?」

「あぁ、フラン。起こしちゃった?」


 考え込んでいると、声をかけられた。

 見るとフランがぬいぐるみを抱えながら、目を擦っている。まだ夕方なのだが、彼女はこの時間帯によく睡眠をとっていた。

 それがこの子のリズムなのだろうと、そう思っている。

 なので、起こさないようにしていたんだけど……。


「起きたら隣にお兄ちゃんがいなかったから……」

「あぁ、それで不安になっちゃったのか」

「……うん」


 どうやら、離れること自体が駄目だったらしい。

 まぁ、一緒にお昼寝するのが日課になっていたし、そうなるか。


「ここって、お兄ちゃんのアトリエなんだよね?」


 やれやれと、頬を掻いているとフランがそう言った。

 僕は頷いてそれを認める。


「どんなものがあるの?」

「ん、そうだね。例えば――」


 義妹が興味を示してくれたので、簡単に説明することにした。

 武器の刃の部分を研ぐ石や布に加えて、アクセサリーを作る上で使用する道具など。フランは興味深そうに何度も頷いて、それらを見ていた。

 そして、一通りを解説し終えると彼女はこう口にする。


「アクセサリー……ほしいな」


 どうやら、途中で見せた商品が気になったらしい。

 そうでなくても、この家にきた時から気になっていたのかもしれないが。寝惚け眼な義妹は、いつにも増して甘えん坊だった。

 僕はそれを特に不快に思わず、少し考えてからこう答える。


「あぁ。それじゃ、ちょっと待ってね?」

「え……?」


 そして、手頃なところにあった宝石の欠片を集めて作業を開始した。

 まずは石それぞれの形を整えて……。





 それから、数十分後。

 僕は額の汗を拭って完成品を明かりにかざした。

 三種類の宝石を散りばめたペンダント。光の屈折によって、七色に輝いて見える、独学で身に着けた工法の一つだった。

 そのペンダントをフランに渡す。

 すると、彼女は円らな瞳を大きく開いてそれを見つめた。


「綺麗……!」


 そして、他に感想が出ないらしい。

 そんなありきたりだけど、とても嬉しい言葉をくれるのだった。


「それ、フランにあげるよ」

「え、いいの!?」

「うん」


 僕が言うと、少女は少しだけ困惑して。

 しかしすぐに感極まったような表情になり、こう言うのだった。


「ありがとうっ! リアンお兄ちゃん!」


 七色のペンダントを着けて、大切そうに握り締める。

 そして柔らかい笑みを浮かべた。


「大事にするね。私の、宝物……」


 そんなフランの笑顔を見て、僕も微笑む。

 大切にしたい、そう思った。


「ありがとう。フラン」


 自然と感謝を口にして、僕は彼女の頭を撫でる。

 実家を離れて辿り着いたこの街で、二年越しにできた大切な家族。


 僕は大切な義妹を見て、強くなろうと誓った。


 


面白い

続きが気になる

更新がんばれ!


そう思っていただけましたらブクマや感想、下記のフォームより評価など。

創作の励みになります。


応援よろしくお願い致します!!


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ