2.リアンの技術、その異常性
ギルドを訪れた僕とフラン。
受付の人に話をすると、何やら待合室に通された。
「ねぇ、フラン? やっぱり――」
「お兄ちゃんの腕は確かなんだから、自信をもって!」
「う、ぐ……?」
その部屋のソファーに腰かけるものの、どこか落ち着かない。
帰ることを提案しようとしたら、それを遮るように義妹にはそう言われたし。僕は仕方なしに、恥をかくことを受け入れた。
フランも、プロの目で違うと言われたら納得するだろう。
そう思っていたのだが。
「やあ、待たせてすまないな。キミたちかな、武器を持ってきたのは」
その時、奥から一人の女性がやってきた。
僕は一方的にその女性のことを知っている。このギルドを統括するフリーナさんだ。紫の髪を後ろで一つに結び、燕尾服のような、しかし胸元がはだけたような格好をしている。整った顔立ちをしており、いかにも大人の女性だ、という雰囲気。
「いてっ!?」
思わず見惚れていると、横からフランに小突かれた。
そんな目では見てないつもりだったのだが、どうやら義妹はそう思わなかったらしい。苦笑いをして見ると、プイッとそっぽを向かれてしまった。
僕は少女の態度に、思わず頬を掻く。
「さて、それでは武器を見せてくれるかな」
「あ、はい! これ、なんですけど……」
と、それどころではないのだった。
僕はフリーナさんに言われた通りに、フランに与えていたナイフを差し出す。
何度も言うが少しばかり加工しただけで、特別おかしなところのないナイフだった。これにどれ程の価値があるのか、それは分からないが、大したものではない。
だって、こんな物は僕の家にごまんと転がっているのだから。
「なんだ……。これは?」
そう思っているとやはり、フリーナさんはそう口にした。
僕は言わんことはないと思って、フランの方を見る。しかし少女は真っすぐにナイフを見ており、こちらのことなど気にしていない。出来るなら早く帰りたいと思っていた僕は、そう声をかけようとした。――その時だった。
「こんな加工技術の高さは、見たことがないぞ!?」
フリーナさんが、そう声を上げたのは。
「え……?」
「リアンくん、といったか。キミはいったい何者だ……?」
「な、何者……って。普通の冒険者兼細工師、ですけど?」
そして、身を乗り出して訊いてくるので僕は正直に答えた。
すると彼女は大きく首を左右に振って、真剣な眼差しを向けて言う。
「何度も言うが、こんな加工技術は見たことがない。触っただけで分かる――魔法によるものでもない、純粋な技術のみで磨き上げられた、と」
「えっと……。それの何が凄いんですか?」
「……分かって、いないのか?」
こちらが訊ねると、信じられないといった表情をされた。
首を傾げているとフリーナさんは、なにやら職員の一人に声をかける。そしてその職員は奥に消えたかと思えば、大きな一本の剣を持ってきた。
抜き放つと、照明の光に当てられて鈍く輝く。
「いいかい、リアンくん。今からキミのナイフの凄さを見せよう」
「え……? もしかして、その剣と――」
「あぁ、そうだ」
そう言うと、こちらが待ったをかける前にフリーナさんは――。
「――――――――っ!?」
鋭い音が、部屋の中に響き渡った。
彼女の振るったナイフは、狙い過たずに大剣を捉える。そして、
「うそ、だろ……?」
見事なまでに、その大剣を切り裂いていた。
へし折ったのではない。床に転がった剣の断面を見て分かる。
僕が加工したナイフはいま、大剣をスッパリと――切り裂いたのだった。
「念のために言っておくが、これは私の技量によるものではない」
フリーナさんはナイフをテーブルに置いて、そう口にする。
そして改めて、こっちを見て訊ねるのだ。
「もう一度、訊かせてもらう。リアンくん――」
スッと目を細めて。
「キミは、いったい何者だ……?」
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