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1.リアンの武器






「――――はっ!」


 フランは素早い動きでスケルトンの懐に飛び込み、それをただの骨の山へと変える。ふわりと舞う赤のサーキュラースカート。戦闘には不向きと思えるそれも、一種の鮮やかさとなっていた。まるでそこは舞台の上であるかのように。

 手に持ったナイフを縦横無尽に操り、スケルトンの群れを駆逐していった。


「すごいぞ、フラン!」

「ほんとっ!? 私、すごい?」


 すべてのスケルトンを倒して、一息ついたところで僕は義妹に声をかける。

 すると彼女は無邪気に、弾むような足取りでこちらへとやってきた。

 そして、抱き付いてきて真っ赤な瞳を向けてくる。


「でも、お兄ちゃんの作ったナイフもすごいよ?」

「え? そうなのか……?」


 今まで色々な冒険者仲間に武器を作ってきたけど、そんなこと言われたことなかった。だけどフランが嘘をつくようにも思えないし、これは純粋に褒められたということだろう。

 僕は彼女の柔らかい髪を撫でて、小さく笑ってみせた。


「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」

「むぅ、お世辞じゃないのに!」


 そして感謝を伝えると、なぜか頬を膨らすフラン。

 僕は首を傾げてしまった。


「お世辞じゃ、ないの? だって、普通のナイフを加工しただけだよ」

「それが普通じゃないの! このナイフ、まったく力を入れてないのにスケルトンの骨が、ケーキを切るように切れたんだよ!? ぜったい、普通じゃない!」

「そんな、冗談キツイよ~。ははは!」


 真剣に話す義妹の様子がおかしくて、ついつい笑ってしまう。

 冗談ばかりと思っていたのだが、どうにもフランの怒りは収まらない。彼女はスケルトンの素材を回収してから、僕の服を引っ張った。

 そして、こう言うのだ。


「ちゃんと、その価値が分かる人を探してみよう!」


 それは予想外の、今まで考えもしなかったこと。

 だけど、僕の思惑とは反対に事態は変化していくのだった。



◆◇◆



 ――冒険者ギルド。

 そこには様々な依頼と共に、商人から武器が送られてきていた。

 いわば何でも屋の体を為しているのがこの街の冒険者ギルドであり、そのギルドを統括するのは一人の女性。彼女の名はフリーナ・マクスエル。

 弱冠二十歳にしてこの地位につき、五年かけて今の体制を作り上げた。


「最近の商人は、粗悪品ばかり持ってくるのね。呆れて言葉もないわ」


 彼女は一本の剣を抜き、深くため息をつく。

 それもそのはず。フリーナが抜いたそれの刃は、新品であるにも関わらず歪んでおり、良く見れば装飾も雑なものだった。

 それでもマシな方なのだから、ため息が出て当然だろう。


「これは、冒険者の命を預かるギルドとしても由々しき事態ね」


 爪を噛むフリーナ。

 しかし、不思議と死傷者は聞いていない。

 このように、粗悪品な武器ばかりが提供されているのにかかわらず、だ。そのことが、ここ二年ほど、彼女の中にある疑問であり謎だった。


「噂では、腕の良い野良の職人がいるとか、いないとか?」


 腕を組んだギルド長にそう言ったのは、側近の女性。

 その名をマーズと言った。


「そんな噂、信じられると思って?」

「ですよねー。アタシも調査をしてみたんですけど……」


 フリーナは、そんな部下の言葉にまたため息。

 しかし興味深いとも感じた。その噂が仮に本当だとして、優秀な武器を作る者がいるとして、それをギルドに引き込めれば相当な利益となる。

 また、冒険者の生存率を高める結果ともなるだろう。

 だとすれば、フリーナにとっては願ったり叶ったりだった。


「……まぁ、それも。たかが噂だけど」


 しかし彼女は鼻を鳴らして、剣を鞘に仕舞う。

 その時だった。


「あの~、フリーナ様?」

「どうしました?」


 部下の一人が、どこか申し訳なさそうに声をかけてきたのは。

 フリーナが訊き返すと、部下はこう答えた。


「武器を売りたい、という者がきておりまして」

「……? それは、商人なのかしら」

「いえ、少年と少女です」

「……少年と少女?」


 言葉を交わして、フリーナは首を傾げる。

 普段ならば一笑に伏して帰らせるところだった。

 だが、この時の彼女にはなにか引っ掛かることがあったのだ。そのため、イレギュラーな訪問者に会うのも悪くはない、そう考えた。


「分かったわ。すぐに行くから、待合室で待ってもらいなさい」

「分かりました」


 そして、そう指示を出す。

 どうせ暇つぶしよ、と。そう考えながら。


 この後に、信じられない物を見ることになるなど、知りもせずに……。


 


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