3.捕獲
「これが、その現場ですか……?」
「あぁ、そうだ。ここで一人の女性が殺され、そして――」
僕の問いかけに、フリーナさんは眉をしかめた。
先日訊いた辻斬りが現れたと、ギルドから情報提供を受けたのだ。ヴァンパイアを探している辻斬りとなれば、僕とフランは無関係ではいられない。
現場を確認して、早急に対策を練らなくてはならなかった。
「まずは、身を守らないといけないかな。――フラン?」
そう思って僕が声をかけると、義妹は少し考えたようにうつむく。
そして、思ってもみない提案をするのだった。
「ねぇ、お兄ちゃん。この事件なんだけど――私を囮にしてくれない?」
「えっ!?」
それを聞いて、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
しかし彼女の決意は固いらしい。そんな反応を受けても、頑として譲らない。
「いいの。もしかしたら、お母さんの手がかりが掴めるかもしれないから」
真っすぐな目で、僕の顔を見つめてきた。
フリーナさんに助けを求めるが、なんと彼女までもが……。
「フランくんがいいのなら、それが最善かもしれないな」
「フリーナさん!?」
その意見に賛同した。
結果として、僕は二人に答えを迫られる形となる。
「………………」
黙るしか出来なかった。
しかし、それが有効であるのも分かる。だから――。
◆◇◆
――夜を迎えた。
街には魔法による明かりだけが輝いている。
その只中に、ヴァンパイアの少女が立っていた。
「さぁ、どうなる……?」
僕は物陰からそれを見て、固い唾を呑み込んだ。
じっと息を殺すこと数十分。もう今日はないかと、そう思った時だった。
「あれは、もしかして!」
一人、あまりに不確かな足取りの人物が現れた。
そいつはおもむろにフランへと歩み寄り、こう口にするのだ。
「ヴァン、パイア」――と。
その瞬間に、僕は号令を出した。
すると物陰に隠れていた冒険者が、飛び出していく。
男の身柄を拘束し、組み伏せる。そして、その時だった。
「モーブじゃねぇか!?」
そのうちの一人――ダンさんが、そんな声を上げたのは。