4.特殊装備
特務冒険者リーダーに就任したとはいえ、やることは変わらない。
日々クエストをこなしながら、合間に加工師としての仕事を請け負うのだ。以前は冒険者稼業にこの力を用いるのに抵抗があったが、認められるようになってからはそうでもない。自分の武器が仲間の生存率を上げるのだ、と分かってからはむしろ積極的にさえなっていた。
「お兄ちゃん、今日は何を作ってるの?」
そんなある日のこと、アトリエで武器の作成を行っているとフランがやってきた。彼女は小首を傾げながら、まだ熱を持っている鉄塊であるそれを見る。
僕はそれをいったん水で冷やし、汗を拭ってから答えた。
「少し、ね? 僕も前線で戦えるように、って思って」
「もしかして、お兄ちゃん専用の武器かなにか?」
「そうだね。そんなところ」
フランの問いかけに、途中まで出来たそれを取り出す。
いま作っているのは魔石を組み込んだ、薄い金属でできた靴のようなものだった。もっと正確にいえば、靴に装着する補助器具、というところか。
これは他の冒険者にとっても有用なのだが、魔力によって機動性を高める効果があった。運動能力が平均的な僕にとっては、必須なものである。
「これの他には、筋力補助の装備とかも作ろうかと思ってるんだ」
「へー! すごいね、さすがお兄ちゃん!」
まるで我がことのように喜ぶ義妹に、僕は頬が緩むのが分かった。
「……まぁ、でもまだ試作段階だからね。これから、僕で実験しないと」
「そうなんだ。頑張ってね!」
現実的な話をすると、まだ実戦投入できるかは謎な部分が多い。
だから、まずはこのメカニズムが正しいのかどうか、僕自身が実験台になるしかなかった。そのために、手頃な魔物がいてくれたら良いんだけど……。
そう思った時だった。
「リアン、大変だ!」
「ダンさん? どうしたんですか、そんなに慌てて」
血相を変えたダンさんが、アトリエに飛び込んできたのは。
僕とフランが小首を傾げていると、彼は息を切らしながらこう言った。
「大型の魔物が現れたんだよ――街の東だ!」
◆◇◆
街の東にやってくると、そこには――なんとも言えない光景があった。
「な、なんだこれ……!」
「ス、スライム!? お兄ちゃん、これスライムだよね!?」
多くの建物が、粘着質なゲル状の物によって浸食されている。
スライムは言うまでもなく最下級の魔物だった。ハンマーなどの打撃武器が通用しないという特徴はあるが、基本的に耐久性の面が弱い生物だ。
しかしながら、ここまで大きいと好き放題に分裂されて、再生を繰り返されてしまう。その結果として、多くの冒険者が手を焼いている様子だった。
「うわー、ネバネバー……」
フランは露骨に嫌そうな声を発する。
そして、そっと僕の後ろに隠れた。実はスライムには他にちょっとした特徴があって、その体内に取り込まれたら、あらゆるものが溶かされるのだ。
だから少女は、自分の服を大事そうに守っている。
「とはいっても、これはなんとかしないとな……」
僕は少し考えた。
こうなったら、例の装備を試してみよう。
靴に装着してきたそれを起動し、腰に帯刀してきたカタナという武器を構えた。油断しているわけではないが、ちょっとばかり実験台になってもらおう。
「それじゃ、フランはここで気を付けて――」
「ひゃぁっ!?」
「……フラン?」
そう思って、いざ行かんとした時だった。
フランの悲鳴。振り返ると、そこには――。
「見ないで、お兄ちゃん……!」
「………………」
描写省略。
さて、この憎きスライムを退治することにしよう!
次回、主人公活躍?
作者体調不良により、次回更新は19日の8時になります。
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