3.手がかり
『特務冒険者リーダー』――それは、ある程度の問題が発生した際に、冒険者をまとめ上げる立場の者を指す。しかし、通常時は他の冒険者と扱いは変わらない。
いわゆる臨時の現場指揮官であった。
「え……。そんな重要な立場に、どうして僕たちが?」
内容を聞いた僕は首を傾げてしまう。
何故なら、もっと適任がいるように思えたからだ。
僕とフランはまだまだ経験不足で、なんだったら僕に至っては『役立たず』という名前の方が有名であるように思われる。
そんな人間が上の立場に立って、他の冒険者は納得するのだろうか。
「なにを言っている。二人は今や、この街の有名人だぞ?」
「え、有名人……?」
フリーナさんの返答に、僕は間の抜けた声を出した。
目を丸くしていると、彼女は『何を今さら』と言いたげにこう続ける。
「誰も歯が立たなかった超大型ドラゴンを倒した二人だぞ? それでなくても、いまやリアンくんは冒険者なら誰でも求める、至高の武器を作る加工師として敬われているのだからな」――と。
――そんな二人が上に立つなら、大勢が納得するだろう。
フリーナさんはそう口にした。当然に僕とフランは顔を見合わせて、キョトン。返答もなにも出来ずに、フリーナさんを見つめることしかできなかった。
そうしていると、彼女は一つ頷いてからこう言う。
「なに、返事は急がなくていい。ゆっくりと考えてくれ。ただ――」
最後にちょっとした話を聞いて、僕たちはギルドを後にするのだった。
◆◇◆
街を歩きながら、僕とフランはこんな話をする。
「さっきフリーナさんが言ってた話、どう思う?」
「魔物の話、だよね。まだ確証は持てないんだけど、もしかしたら……」
こちらの問いかけに彼女は顎に手を当てて、少し考え込む。
それというのは去り際、最後に話された内容についてだった。それは――。
「『大型の魔物』が増加してり、その魔素を分解すると共通点が見られた。――それは、一様にして伝説に語られるヴァンパイアの魔力構造と酷似していること」
「まだ、それがお母さんの魔力だって、決まったわけじゃないけど。私の魔力型との類似性を調査してもらって、もしもそれが……」
合致すれば、つまりはそういうことだ。
何らかの事情によって、フランの母親がこの『大型魔物の大量発生事件』にかかわっている、ということになる。そして、これは大きな手がかりだった。
フランはどこか焦りがあるのか、爪を噛んでいる。
そんな少女の様子を見て、
「大丈夫。焦らないで、フラン……」
僕はそっと、その肩を抱きしめた。
小さなそれは簡単に壊れてしまいそうで、儚さを感じさせる。
微かな震えを落ち着けるようにして、優しく、ただ優しく言い聞かせた。
「うん、ありがとう。お兄ちゃん」
フランは静かにそう言うと、うつむき加減だった顔を持ち上げる。
するとその目からは、なにか強い意思が伝わってきた。
「お兄ちゃん、お願いがあるの。さっきの話だけど――」
「『特務冒険者リーダー』の話だね。受けることにしようか」
「……いいの? お兄ちゃん、悩んでたけど」
こちらの言葉に彼女は小首を傾げる。
そんな様子を見て、僕はしっかりと笑みを浮かべて答えるのだった。
「フランのお母さんを助けられるかもしれないんでしょ? それだったら、僕にとっても大切なことだよ。むしろ、進んで協力する!」
大型の魔物――それがフランの母親と関係があるのだとすれば。
それは、僕の家族の問題だった。だから……。
「二人で頑張ろう、フラン。そしてきっと――お母さんを助けようね」
フランの小さな頭を抱え込むようにして、そう伝えた。
少女はまた、小さく肩を震わせて言う。
「ありがとう、お兄ちゃん」
夕日の沈む空を見ながら、僕たちは一つの決意をするのだった。
次回の更新は朝8時……たぶん。
コパ・アメリカに集中し過ぎなければw
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