表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/23

4.開戦前








 ――ダンの屋敷。

 その一室で二人の男が顔を突き合わせていた。

 一人はこの屋敷の主であるダン。そしてもう一人は、ダンの部下であり第一の弟子であるモーブという男だった。主とは対照的に小柄な青年であるモーブは、どこか怯えたような表情でダンに問いかける。


「親方様……。あの賭け、勝負は本気ですか?」


 テーブルを挟んで、ソファーに腰かけた二人。

 反対側のダンはおもむろに頷いた。それを見て、モーブは声を震わせる。


「そんな、おかしいです! あんな新人の相手をするために、この店の権利を天秤にかけるなんて。どうして、そこまでリアンに固執するのですか!?」


 バン――と、テーブルを叩いて彼はダンに問うた。

 すると主たる男は、その強面に似合わぬ柔らかい笑みを浮かべる。


「なぁに、少しばかり気が乗っただけよ。負ける気なんざ、さらさらない」


 そこには余裕と、自信が見て取れた。

 しかし、興奮したモーブはそれに気付かずにさらに続ける。そして、


「でも『もしかして』が起きたら――」


 口にしてはならない言葉を、口にしてしまった。

 それに、ダンは表情を一変させる。


「『もしかして』だぁ? モーブ、てめぇ――俺様が、万が一にも負けるとでも思ってやがるのか。もしそうだとしたら、タダじゃおかねぇぞ……!」

「ひっ……!? そ、そんなことは、これっぽっちも……!」


 その形相に、モーブは震え上がった。

 もとより気の小さな男である。それ故に、自分より立場が上のダンに睨まれると、このようになってしまうのが常だった。

 そんな反応を詰まらなさそうに、鼻を鳴らしてあしらう主の男。

 彼はどこか不機嫌が残ったままこう言った。


「いいか、モーブ。明日は真剣勝負だ」――と。


 鋭い視線で。

 まるで、これから戦場に赴かんとするかのように。


「親方……!」

「いいか、下手な小細工はなしだ。俺様は全力でリアンを潰す」

「……分かりました」


 そして、部下にそう告げる。

 モーブもまた、渋々ながら了承するのだった。



◆◇◆



 日付が変わって、勝負の日を迎える。

 場所はこの街の五つある広場のうちの一つ、南西のそこだった。

 僕とフランは工具一式をもって、まだ誰もいないであろうそこへと到着する。――が、しかし。それよりも先に、準備を進めている者たちがいた。


 ダンと、その部下たちだ。


「…………今日は、よろしくお願いします」

「おう、手加減しねぇからな」


 形だけ丁寧な言葉を心がけたが、どうやらダンにその気はないらしい。

 だとしたらこっちも、遠慮する必要はない。


「ぜったいに、負けない」

「へ……。意外と良い眼つきをするんじゃねぇか」


 僕の宣言に、彼は口角を歪めた。



 フランに指示を出して準備を開始する。

 そうしてそれが整う頃に、観衆も集まり始めた。



「お兄ちゃん、負けないで……!」

「あぁ、大丈夫!」



 義妹の不安げな言葉に、笑顔で答える。

 そうして、僕の守るための戦いが幕を開けるのだった。


 


次回更新は明日の朝かな?


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


そう思っていただけましたらブクマや感想、下記のフォームより評価など。

創作の励みになります。


応援よろしくお願い致します!


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ