プロローグ 取り柄のない少年と少女の出会い
「はー……、今回のパーティーもクビかぁ」
僕――リアン・カイアスは、真昼間の街をテコテコと歩いている。
さっきまで仲間だった人達からは、あっさりと追放を言い渡されてしまった。もちろん原因はこちらにあって、僕は人より手先が少しだけ器用なだけで、他に取り柄らしい取り柄はない。冒険者ギルドの中でも、役立たずのぼっち扱いを受けていたのだ。
「まぁ、それなら一人で――というわけにも、いかないんだよな」
僕は広場のベンチに腰かけて、大きくため息をついた。
役立たずで何も出来ない僕は当然ながら、一人でクエストをこなすことは不可能。そうなると、どこかのパーティーに入れてもらうのが普通だけど、寄生虫扱いを受けて、これこのように。何度目の追放だろうか、それはもう数え切れなかった。
「やっぱり、実家の宝石細工を手伝うしかないのかな」
実家は宝石などの細工師を生業としている。
昔からそれを継げと言われていたのだが、嫌になって飛び出したのがこの結果だった。いわゆる反抗期的なそれによるものだったが、今なら納得も……。
「……んー、やっぱり嫌だな」
どうしても、諦めきれなかった。
もしかしたら僕にも、冒険者としてなにか、取り柄になることがあるかもしれない。そう考えて仕切り直すようにベンチから腰を上げた。
大きく伸びをして、欠伸をする――その時だった。
「ん、いま物陰でなにかが動いた……?」
僕の視界に、ちらりと動くものが入った。
いったいなんだろうか。警戒心を持たずにそちらへ足を運んだ。
そことは、建物と建物の間にある薄暗い空間だった。じめじめとしたその場所を覗き込むと、やはり奥には何かがいる。人影のようにも見えたけど、少し違うか。
「あのー、すみません。大丈夫ですか?」
「ひゃっ……!」
声をかけてみると、そんな短い悲鳴が聞こえてきた。
どうやら幼い女の子のようだ。それなら安全かと思って、僕は歩み寄る。
「こ、こないでぇ!」
「へ……?」
すると、女の子はそんな声を上げた。
僕は少しだけ立ち止まって、首を傾げてしまう。どうやら怯えているらしいけど、それでももし体調が悪かったりするのであれば、放っては置けない。
ちょっと心苦しくは感じながらも、歩を前に進めた。
「う、うぅ……!」
「これって、魔導の拘束具?」
近付いて、少女の身に着けている物を確認する。
そうすると分かったのは、彼女が首からぶら下げているのは『魔導の拘束具』と呼ばれるものだった。これを付けられた者は魔力を封じられ、ほとんど何も出来なくなる。加えて徐々に体力を奪われていくなど、拷問にも近い物なのだった。
「誰がこんなひどいこと……。ちょっと待ってね?」
「え……?」
僕は片膝をついて、女の子の首にかかっている拘束具に触れる。
そして腰元のバックから小道具を取り出した。
「お兄さん、外せるの……?」
「うん。この手のことだけは、昔から覚えがあるからね」
カチャカチャ――カチャン。
小気味の良い音を発して、その拘束具は地に落ちた。
勝手さえ知っていれば難しいものではない。しかし、無理矢理に外したことで女の子の体力の回復には、時間がかかるだろうけど。
それでも、今ここで助けなければ駄目な気がした。
「あ、ありがとう……」
「いえいえ。どういたしまして」
僕は立ち上がって手を差し出す。
問題は、この後のことだろうと思った。
「僕の名前はリアン――リアン・カイアス。キミの名前は?」
「わ、私は……」
僕の手を取って、少女はこう名乗る。
不意に差し込んだ日差しに目を細め、微かに涙を浮かべながら。
「フラン――フラン・クリアパール」
少女――フランの金の髪が、風になびく。
それが僕達の出会い。そして、不思議な共同生活の始まりだった。
次回の更新は頑張っても日を跨ぐかもしれないです。
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