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時を待ち

作者: 河衣小牧
掲載日:2008/11/02


気づけば、列車の窓から淡く揺れるキリン草が眩しくて。

ひんやりと包み込むような空気はきりり、と澄み渡る様になった。




「……冬が始まると、」



あなたはほんの少し不機嫌そうに、マフラーに頬を埋めた《うずめた》。



「なあに?」


「……外、出たくなくなる。」



寒いから、なんて呟いているから、思わず笑みがこぼれる。


「……笑うなよ。」


「ごめん。」



でも、やっぱり笑ってしまう。

ずっと前。出逢った頃は、話もまともに出来なかった。

まして、こんな風に自分のことを言う人じゃなかったし。

そう思うと、嬉しくて、うれしくて。


私だけが見ることの出来るあなた。


それに。



「私は好きよ?」



冬の日の外。



「なんで、」



だってね。


私の言葉に、ちょっとだけむくれたあなた。

でも、冬の日のそんなあなたは。



「……どうしたんだよ。」



ほら、こうして寄り掛かっても怒らないでしょう?


夏場は

「暑い」とか、

「何となく」なんて理由で逃げるけれど。

所詮、あなたは大の寒がりだから。



「ん、」



ほら、照れた顔で差し出された右手。

繋いでやる、と言わんばかりだけど、その表情が

「はやく、早く。」

なんて急かすから。


かじかんだ指先を包む様に握る。


この感じが好き。


きりり、と締まった空気の中、感じるのは徐々に似通ってくる体温。

きゅっ、と音を鳴らす爪先。


夏は

「暑いから」嫌いで、冬は

「寒いから」嫌い。


いかにもあなたらしい、我が儘な言葉。

時には呆れることもあるけれど、それも、やっぱりあなただから受け入れてしまう。



「……早く、春来ないかな。」


「……っ。」


「……だから、そんなに笑うなよ。」



だって。

こんな大の大人が、もう何度迎えたであろう春を待ち侘びるのだから、



「可愛い人。」



いつもは、落ち着いた大人のあなたも、時にどうしようもない子供に戻る。



甘えさせてくれる貴方。

甘えてくれるあなた。



移り変わる季節を、2人、何処で迎えても、移ろう時を何度重ねても。




愛しい人は変わり無く。



この心には、ただ、ひとつの想いだけ。




いつまででも



あなたと春を待つ。

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