嗅ぎつけられたにおい
昼時になり、カラカラと太陽が照り付けている頃、俺とひよりはこの町を治めている奴の家を探そうと歩き回っていた。
「今、巡瑠と鈴華の班に伝書鳩で情報と魔法使い(ウィザード)の家探してって送ったよ~」
ひよりのいう伝書鳩というのは、鳩の置物なのだが、ひよりにあげた魔法石の力によって動かして飛ばしている。
ひよりの魔法は”自動人形”。人型、動物型の無機物の物を生きているかのように操ることができる魔法だ。
「どうせ、ここの事件の黒幕も魔法使い(ウィザード)なんだろ」
「だと思うよ~。けど、女の子だけが失踪してるのはなんでなんだろうね」
「さあなっ。けど、そいつの家に行ってみたらどうせわかることだろ。そのためにも、そいつの家を確認して、夜にでも巡瑠と鈴華に合流して潜入すれば大丈夫だろ」
「そうだねっ!」
狭い路地に入った時、黒いローブの五人組の男が俺達の行く手を阻む。
「あのぅ、すいません。僕たち旅の者なんですけど道に迷っちゃって……。出来れば道案内してくれたら嬉しいなって……」
「…………」
こいつら口がないのかうんともすんとも言わねぇ。表の方で話しかけて損したわ。
すると、、小声でひよりが話しかけてくる。
「黒鉄。こいつら、右胸のローブに魔法使い(ウィザード)の身分を表す紋章つけてるよっ!!私達、解放軍だって嗅ぎつけられた?」
「いや、それにしては早すぎる。多分、女の子のお前を狙って嗅ぎつけてきたっていうのが正解かもしれん」
胸の勲章を見る限り、初級魔法使いの下っ端だろう。
すると、一言も発していなかった黒いローブを纏った一人が低い声音で話しかけてくる。
「旅人よ、この町のしきたりは若い女を生贄に捧げることだ。その儀式を行う事で神の怒りは静まるだろう。おとなしくその女をこちらに渡してもらおう」
「僕は、今日この町を訪れた旅人なんですよ。どうか許してくれませんかね?」
「だめだ。神の命令に例外はなく、町には町のしきたりがある。それを乱す奴は力づくでも実行させる」
「はぁ、そうですか……」
男たちは胸ポケットから杖を取り出してこちらに向けている。
「なら、その神やらの生贄になんのはてめぇらのほうだよ!!」
男の二人は俺の口調が変わったことに驚いたのか、俺に向けて、杖から火の玉と水流をそれぞれ発生させる。
俺はボロイローブの下に隠し持っていた鞘から抜刀し、向かってきていた火の玉と水流を切り裂く。
すると、切り裂かれた火の玉と水流は消滅してしまう。
「なにっ!魔法を打ち消しただとっ!!」
「あんたら、少しはこっちにも気かけなとダメでしょ」
黒いローブの男達が声のした方を向く。すると、ひよりが親指と人差し指で金属でできたコンドル型のおもちゃをにこやかに持っている。
「自動人形」
両手に持っていたの鳥のおもちゃを紙飛行機を投げる要領でそれぞれ投げつける。
なげ出された鳥のおもちゃは生きてるかのように翼を動かし加速しだす。
目にもとまらぬ速さまで加速した、鋭利な翼は二人の男へと向かっていく。
一瞬の出来事で対応できなかった黒いローブの二人の男の首を、コンドルのおもちゃの羽が、首を吹き飛ばす。
真っ赤な血吹雪が上がる。
「くそっ」
「おまえらなんてことを……」
「よそ見している暇なんてねぇぞ」
俺は、一瞬で敵の間合いに入り込み、二人の体を斬り落とす。
「う、うわああああああああああ」
次々に倒れていく、仲間の姿を見て発狂しながら火の玉を飛ばしてくる。
しかし、俺はそれをひとつ残らず切り裂いていく。
それを見て、自分の攻撃が全て通じないと悟ったのか、地面を後退りしていく。
「なんで。なんで俺の魔法が通用しないんだ」
「俺の刀に斬れないものはねぇからな……」
「なんで、そんな強いんだ」
「お前らが下っ端の雑魚なだけだろ」
「お、お願いだ。い、いのちだけは助けてくれ……」
「言い訳は地獄で聞いてやる」
「ぎゃああああああああああああ」
俺は最後の一人の首を斬りはねた。