閉じられた町
「ふっふ~ん。二人きりだね黒鉄!」
やけにうれしそうにしているひよりがニコニコ顔でこちらを見てくる。
「ひより、これは遊びじゃねぇ。今から情報収集していくぞ。俺たちは今日ここに初めて訪れた旅人として、適当に村人と話すぞ」
「わかてるって」
「緊張感ねぇな」
俺らは、旅人と偽るために大きなかばんを背負い、ボロボロの薄汚いローブみたいなものを羽織った姿でいる。
「ねぇみてみて黒鉄!あそこに第一村人がいるよっ」
「そうだな。ちょっと話しかけてみるか」
「こんにちは!僕たちは今日アルッカに着いた旅人なんですけど……。ちょっとききたいことがあるんですけどいいですか?」
俺の豹変ぶりを見てひよりは、いつものように引いているのか嫌そうな顔をする。
うるせぇな。表と裏の顔を使い分けてんだよ俺は。
てか、お前も俺の後ろにいないで話しかけろや。
「旅人かぁ。久しいのぅ」
優しそうなひげを生やしたおじいちゃんは井戸から水を汲む作業をしながら話している。
「おじいさん。手伝いますか?大丈夫ですか?」
「いやいや、大丈夫じゃよ。最近一人暮らしに慣れてきたからこれぐらいは大丈夫じゃ」
「そうですか。無理はしないでくださいね。もし疲れているなら休憩でも」
「ありがとうさん。最近税の徴収もきつくてのぅ。仕事も農作業も休んでられないんじゃ」
「国かこの町の自治体にでも納めているんですか?」
「この村のお偉いさんじゃよ。ところで、お前さん達は質問があるといっておったが何をききたいじゃ?」
井戸から水を組むのをいったん止め俺らの方を向く。
すると、ひよりを見た瞬間顔がサッと青ざめていく。
「わ、悪いことは言わん。この町から早く離れた方がいいぞ」
声音も焦ったように落ち着きがなく何かに怯えているようだった。
「おじさん大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃよ」
「おじさんこの町から離れろって何かあるんですか?」
「……。大切な人を守りたいならこの町を離れる方がいい。わしから言えるのはこのぐらいじゃ」
そういうと、おじいちゃんは、汲んでいた水もほったらかしにしたままボロくて、ツタカヅラに巻かれた木の小屋のような家に入っていく。
扉を開けた瞬間、玄関の先には女の子が着るような色鮮やかな装飾の服が見えた。
「黒鉄、今のって……」
俺は推測する。
最近一人暮らしになった、女の子が着る洋服があること、ひよりを見て警告をしたこと。
これらより考えられることは……。
「面白くなってきたじゃねぇか……」