隣町の噂
「なんで!!なんで負けるのっ!!」
「フフッ。おこちゃまは勝てないってことじゃないかしら」
「ぐぬぬ。もう一回」
さっきから鈴華とひよりが戦っている。もちろん野蛮なものではなく、なんか三角錐型の物を回してぶつけて遊んでいる。
「なんで?なんでおもちゃ屋の私が負けるわけ?」
「頭を使わないからじゃないかしら。思いっきり力を入れるだけじゃだめよ。フフッ……」
「う~!!!!次はチェスで勝負よ」
「あいつらなんだかんだ言って楽しそうだな」
けれども、なんだかんだ言ってこの平和なひと時が続いてほしいと俺は心のどこかで思っている。
「キミは参加しないのかい?黒鉄くん」
後ろからショートカットの銀髪イケメンに声をかけられる。俺と同い年なのにやけに落ち着いたいい声が響いてくる。
「女の子で遊んでんだろ。俺はパスだ。お前が入っていったらどうだ?」
「ボクは静かにしていたいからね。それに、チェスは二人用だ」
「まぁ、巡瑠のいう通りだな」
こいつの名前は銀河巡瑠。吟遊詩人で街を歩き回って詩をよみながら情報を得ている。解放軍の情報源だ。
「それより巡瑠がここに来たってことは次のターゲットの情報を持ってきたんだろうな」
「いや、今回は違うんだ。ちょっと不可解な事件が隣町で起こっていてね。それをボクたちで調査しないかと思ってきたのさ」
「お前がつかめないってことはよっぽどなんだな」
「話を知ってそうな人は見かけるんだけど、どういうわけか誰も事件のことについては口を割りたくないらしい」
「それはどんな事件だ」
「20歳以下の女の子が行方不明になっている事件だ」
「なにっ?」
「女の子の身内に話を聞いても誰も何も言ってくれなくてね。ボクとしては困っているんだ」
「人身売買か売春でもされてんじゃねぇのか?それを言ったら殺すとか脅されてんだろ」
「それにしても、誰もいない状況であそこまで頑なに拒否していたのはおかしい。それに、言ってしまう事を異様に恐れていた。女の子が跡形もなくしかも何百人と失踪しているのに誰も言及しないんだ」
「そうかほかの奴らも呼んで話すことにするか……。おい、鈴華、ひよりお遊びはそこまでにしとけ。次の仕事が決まったぞ」
二人に呼びかけると急に裏の顔に戻る。
「よし。今から解放軍に招集をかける」