オモチャ屋のひより
「おい。どこまで行く気だ」
俺は、鈴華に手を引っ張られたままの状態で歩かされている。
といっても、そこら辺の商店街を歩いているだけなんだが。
「あら。仕事を忘れて綺麗な私と一緒に並んで歩けて光栄でしょ?」
「んなこと誰も言ってねぇよ。俺は仕事に戻りたい」
「あら、誰も来る気配がないお店に立ってるより、町のパトロールをした方が良いと思うのだけど……」
「ったく……。付き合えばいいんだろ」
「あら、大胆。愛の告白されちゃったわ」
「言葉の綾だ」
そうこうしてるうちに、見知ったお店の前にたどり着く。
「私が連れてきたかったのはここよ」
「おい、ここって……」
「いいから入りましょ。ごめんくださーい」
「あぁ、いらっしゃいお客さん!!今待ってくださいね……って黒鉄と鈴華か」
奥から元気よく現れた法被を着たポニーテールの女の子は俺らの顔を見た途端へにゃりとその場に座り込む。
こいつの名前は東堂ひより(とうどうひより)。年は15歳で俺らよりも若い。オモチャ屋を経営してるがこのご時世売れるはずもなく趣味で作って売れればいいな的な魂胆でやってるらしい。
「お客さんかと思ったのに~!!なんなのさ!!」
「わりぃ。俺は店番してたかったんだけどこいつが……」
「そうよ。私と黒鉄くんとイチャラブデートをしてたのよ。羨ましいでしょ?」
「は、はぁ!?べ、べつに羨ましくなんかないし!!」
「そのわりには感情的になっているわね」
「はぁ!?いっみわかんないど!!!!」
「あら、悔しいのかしら?」
「むっかつくー!!鈴華、表にでなさいよ!」
「上等ね」
「おいおい。お前らよせよ。騒ぎになったら面倒だからここらへんにしとけ」
「「あなた(黒鉄)は、黙ってて」」
「お、おぅ」
なんか、俺が怒られたんだが。理不尽じゃね?