序章0 幕間
さあさ御着席の皆さま、心の準備は宜しいでしょうか。
いよいよ開幕の御刻限でございます。
こうして黄昏の帝都に演者は集い、舞台の幕は切って落とされる。
一癖も、二癖もある者ばかり。
どいつもこいつも我が強い。
だがそれが良い。
それが一層、物語を彩り、煌めかす。
役者が良いからだ。
さぞかし歪な姿を演じてくれるに違いない。
愛と勇気。夢と希望。正義と誠。
ああ、何と綺麗な言葉。何と美しい響き。
何とも素晴らし過ぎて、思わず欠伸が出てしまう。
さぞかし物語を退屈に彩ってくれるに違いない。
臆と恨み。諦めと絶望。背信と欺瞞。
ああ、何と醜き言葉。何と嘆かわしい響き。
何とも愚かし過ぎて、思わず感嘆が出てしまう。
さぞかし物語を鮮烈に彩ってくれるに違いない。
さてさて気になる第一幕目は、彼らの黎明。
彼らが、私達が、一同に会する、とある夜。
そしてその切欠となる、とある事件。
昭和の7年、皐月も半ばの15日。
そうです御存知、あの事件。
え・・・、私も出るのか、ですって?
それは当然。私、江戸川も一人の演者に御座います。
舞台に立たぬ道理も無い。
舞台に上がらぬ謂れも無い。
その時、彼は、彼女はどうなるか。
それは幕が上がってからのお楽しみ。
ぜひ最後まで御観覧あれ。
それでは皆さま、お待たせ致しました。
帝国劇場の始まり、始まり・・・。




