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空と草原の境目

作者: 粥ころ

「もうすぐ笹太の誕生日か~」

戯言は虚しく空に消える。

3月30日、3月もそろそろ…いや、もう直去る。早いものだ。この間年を明けたばかりというのにいつの間にか3ヶ月も経っている。自分もこの調子で老いていくのか、と思うと恐ろしささえ感じた。

さてさて本題なのだが。

4月11日は我らが魚肉のチームメンバーの笹太の誕生日だ。

正直いってあいつは友達が多い。ぼっちの自分とは比べ物にならないくらいだ。まぁ、なぜあれほどまで人気なのかもわかるような気はするが。そんなあいつが私というちっぽけな通行人Aからプレゼントなんてものを貰ってもきっと困るだけだろう。いや、それよりも

「私のこと忘れてそうっすなぁ」

素直な感想。思ったことを言葉にしただけのその言葉は友人の声によって掻き消された。

「カロ」

大声で自分のハンドルネームを呼ぶ声がする。この呼び方をするのはネットで自分と関係を持っている者くらいだ。振り向こうとはせず体をのけぞらせるとショートカットで前髪をピンで止めた小柄な女の子がそこにいた。

「…りりちゃんかぁ」

「なんで転けてんだよお前」

呆れた、といった風にぶはっと短く笑われ手を差し出される。立てってことか。

ぱし、と雑に笹太の手首を掴みよっこらせ、とじじくさい掛け声と共に重い腰をあげる。なんだそれ、と笹太にはまたもや呆れられていたが見なかったことにしよう。

「どしたの?なんか用あったっけ」

ぱっぱ、と膝についている芝生を落とし笹太に向き直る。目が合うとぱっと視線を逸らされ、「いやなんとなく」とだけ告げられた。

「なんとなくで呼ばれて起こされたんだね私は」

「んな言い方すんなよ。光栄に思え」

わざと皮肉ったらしく口を尖らせて言うと、そんなの気にしてなんていないかのように笑顔で笑い飛ばされた。ふと視線を足元にさげると葉が4つついてる雑草を見つけた。

「すげ、四つ葉のクローバーだ」

私がしゃがんでそれを摘んでみると、それに気付いたかのように説明を付け足す。もうこれが誕生日プレゼントでいいか、なんてぼんやりたまたま見つけた雑草をいじりながら考えていると

「誕生日プレゼント。魚肉のぬいぐるみってあったっけ。」

なんて間抜けな二言が耳にはいる。お前はエスパーか、と突っ込みたいのを我慢して「ないんじゃない?」と適当に返してみた。

笹太はまじかぁ、と残念そうに笑みを作ったが私はいまだにその意味をよく理解してない。

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