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習作 雪消(ゆきげ)

掲載日:2016/02/18

 本文は古文調に書いてありますが、下に現代語訳を載せてありますので、併せてご覧ください。


 あくまでも実験的に書いたものですので、細かい時代考証などはしていません。ご了承ください。

 我が背はいずこへ去りしか。

 いささかのあらがいに、私の元を去りし我が背よ。


「我が妻、われは都へ上ろうと思う」

何故なにゆえに? 私は行きとうない」

「今より良き暮らしをしたくはないのか」

「我が背よ。そなたがおればそれで良い」

「吾は、このようなところで朽ち葉となるつもりは無い。なれが行かぬなら、吾一人で行く」


 しかして、戦へ武者は出で立ちぬ。

 我が背よ。父も母も、とうに亡し。

 此方こち幾年いくとせ目かの雪消ゆきげ折節おりふし

 雪間ゆきまより、ふきとうこうべいだしぬ。

 数多あまた積もりし雪も溶けて川を成し、ようやく春は来たり。

 我が背、我が背。汝もく帰りたもう。


 やれ、遠方おちかたに誰ぞ見ゆ。

 馬上にゆかし鎧武者。

 雪消の水は今、涙川となれり。





 現代語訳


 私の夫はどこへ行ってしまったのか。

 少しの口論のために、私の元を去ってしまったあなたよ。


「妻よ、俺は都へ上ろうと思う」

「何故? 私は行きたくない」

「今よりも良い暮らしをしたくはないのか」

「夫よ。あなたがいればそれで良い」

「俺は、こんなところで落ちぶれるつもりは無い。お前が行かないなら、俺一人で行く」


 そうして、戦に向かうため武者は出立した。

 あなた。父も母も、とっくに亡くなってしまいました。

 こちらは何年目かの雪解けの季節です。

 雪の間から、蕗の薹が顔を出しました。

 沢山積もった雪が溶けて川を作り、ようやく春になりました。

 あなた、早く帰って来てください。


 あら、遠くに誰かがいる。

 馬に乗っているのは懐かしい鎧武者。

 雪解け水は今、止めどなく流れる涙の川になりました。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど!確かに習作…。いや、秀作じゃないですか! ただ、古文調の話を書いただけではなく、時代に合った内容と当時の人たちの心の有り様が良く表現されています。 これを和歌にすれば、百人一首に…
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