王国の裏と予備知識
said龍弥
「大人しく付いてきてくれて助かる」
黒騎士について行った龍弥が連れてこられたのは城の1番端にある他の部屋より質素な部屋だった。
「あぁ、それよりこの部屋は何だ?他の部屋より明らかに違うぞ?」
「そうだな・・・質問を質問で返すのは失礼だが、この部屋は何の部屋だと思う?」
黒騎士は少し変な質問をしてきたが、龍弥は素直に答えることにした。
「メイドの部屋とか?」
「違うな、ここはイル様の部屋だ。」
「えっ」
そう、ここはイル・シーン・アルダビール第3王女の部屋だった。
「ふざけているのか?」
龍弥がそう言う位にここは女王の部屋とは言えないところだった。
「いや、ふざけてなどいない。このは確かにイル様の部屋だ。」
「・・・事情がありそうだな」
「そうだな、まずこの国の事について話させてもらってもいいか?」
「あぁ」
黒騎士の話をまとめるとこうだ。
もともと今の国王先代国王の時宰相だった。
宰相は黒い噂が度々流れていて評判はよろしくなかった。
そして3年前から先代国王が病気にかかったり病状は悪くなる一方だった。
1年前に先代国王が病死して次の国王を決めようとした時、これまで先代国王の息子である第1王子カールを支持していた貴族達が予め打ち合わせしていたかのように王子ではなく宰相を支持し始めそれとほぼ同時期に王子は先代国王と同じ症状の病にかかり、病を治す薬は『天使の涙』という国宝並みの希少な薬で手に入らず王子は寝たきりになり宰相であるモーブデブが国王の座に着いたのである。
勇者を召喚した理由は戦争で大きな戦力になるだろうと国王と上層部が勝手に決めたことだった。
「そういう理由か、あのバカそうな国王らしいな」
龍弥は国の裏の事情を聞かされ呆れていた。
「それだけではないのだ」
まだ続きがあるようだ
「もともと隣国のシュベット王国とは仲がいいとは言えないが、商人同士の交流や、あちらの国の冒険者もこの国のギルドに入るくらいのなかだった。しかしモーブデブの奴が国王の座に着いた途端に暮らしていた亜人達は奴隷にされたり追い出されたりして、冒険者も抵抗した者は不敬罪で処刑され、それに怒りシュベット王国はこの国に牽制をかけ近いうちに戦争になるまでになったのだ」
龍弥は唖然としていた。
(種族は違っても国民を奴隷にしたり処刑しただって?)
龍弥は自分の中からフツフツと湧いてくる感情が怒りだとすぐに分かった。
「それを俺に話してどうして欲しいと?」
「あぁ、この国を救ってくれとは言わない、お前はこの城を出るつもりなのだろう?」
「・・・・」
「別に国王に報告はしない」
「・・・そうだ、この城を出て近いうちにこの国も出るつもりだ」
「だろうな、そして本題はイル様をお前に連れて行って欲しい、イル様は先代国王様の娘でカール様は寝たきりのため、会見の場にいた他の王子達はモーブデブの子供なのだ」
「先代国王の娘でというだけでこんなに扱いが酷いのか。それより、今日知ったばかりの人間に女王様を任せていいのか?」
「あぁ、とても悩んだがお前はステータスを隠しているだろ。それにお前の目はそこらにいる下衆い男の目ではない」
「そうか・・・お前が連れて行く事は考えなかったのか?」
「もちろんそれも考えたが、ここにはカール様がいるのだ、私にイル様とカール様を選ぶなど出来ない」
「・・・分かった、こっちは自由にやっていいんだな?」
「あぁ、だが極力カール様へ負担になる事は避けてほしい」
「分かった、1週間で準備を終えてこの国を出るつもりだ」
「すまない、いきなりこんな責任の重いことを頼んでしまって・・・」
「気にするな、第3王女はこの事を知っているのか?」
「・・・私とカール様とイル様3人で逃げると伝えてある」
「そんな面倒なことを、まぁいいまずは王女様と話さなきゃな」
「あぁ頼む・・」
黒騎士との話は終わり龍弥個人部屋に連れて行かれた。
1人になった龍弥これからのことを考えていた。
(逃げる事自体は簡単だか、この世界の知識が足りなすぎる出来ればこの城の図書室を使いたいな)
龍弥がこの世界の基礎知識をどうするかを考えている中、日は西に落ちていった。
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翌日
龍弥はイルに接触するために城内の廊下を歩いていると前から知った顔の人物が現れた。
北村かおるだった。
「昨日は平気だったか?」
北村は龍弥に心配する言葉をかけた。
「あぁ問題ない、それよりそっちは何かあったか?」
「こちらはお前が連れて行かれた後これから1カ月の間は訓練を行うとを言われた」
「そうか」
「お前は来ないのか?」
「どうせ訓練をしてくれると相手はいないからな」
「・・・俺でよければ付き合おう、気が向いたら来てくれ」
「あ、あぁ」
「それじゃあな」
(よくわからない奴だな、ただ良い人間なのか?)
龍弥との会話ん終えた北村はそのまま廊下を歩いて行った。
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暫く城内を探索していると城とは別の建物がありそこには見上げるほどの本が積み重なれていた。
入っていくと入り口に受付があり、眼鏡をかけたおじいさんがいた。
「入場許可申請書はあるかえ〜?」
「ないが、騎士のミレルに好きにしていいと許可が出ている」
「孫が〜?」
(この爺さんあの黒騎士の祖父かよ)
「なら入っても良いぞ〜」
(軽いな、警備の方は大丈夫なのか?)
龍弥はそのまま中へ入っていく。
標識などに本のジャンルが書いてあり、見たこともない文字だが読めている。
それが少し気持ち悪いが今は無視しておく。
本のジャンル『歴史』『魔法・魔術』『スキル』の棚から3冊づつ取り出すと、建物の中央に本を置き1冊1冊を『見』始めた。
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30分ほどして本の内容を覚えた龍弥は頭の中を整理していた。
(国の歴史書なんて国の主観でしか書いてないが、種族やその特徴は分かったな)
種族は『人族』を入れて
『獣人族(』ドワーフやコボルトも含む)
『エルフ』(ダークエルフも含む)
『魔人族』
そして上記に当てはまらない
『精霊族』
の6種族あり人族と魔人族は他の種族とはあまり仲がいいとは言えないものだった。
各種族には特性のようなものがある。
獣人族はエルフと人族より身体能力のステータスが高い。
エルフは人族と獣人族より魔法のステータスが高い。
人族は種族中で一番ステータスは劣っているが人口がどの種族より圧倒的に多い。
魔人族や精霊族は目撃の少なさからあまり知られていないが他の4種族より遥かに優れたステータスを持っているとのこと。
歴史書を読むからに理由は、人族は他の種族を見下していて、魔人族は単に大陸自体が別で交流が無いだけだ。
次に魔法・魔術のことに関しては魔法陣を使うのが魔術、使わないのが魔法というだけだ。
ただ、魔術の中には霊術や神術など、いろいろな種類があるようだ。
魔法は個人の先天的な物で魔水晶というもので自分の属性がわかるらしい。
属性には
火属性
水属性
土属性
闇属性
光属性
の五大属性があり、他に特定の種族がもつ特殊ものや5大属性の派生などがある。
魔水晶などは城にあるだろうが、まず借りれないだろう。
(大きな教会にも魔水晶は有るらしいし、機会があれば行くか)
最後にスキルだが人族で確認されているのは
王級
達人級
上級
中級
初級
の5つでそれ以上の世界級は英雄譚などのお伽話でしか知られてなく、神級は空想上のものだった。
そして階級はストーカー女神の言う通り威力や範囲、規模で付けられていた。
階級でわけられていないユニークスキルもあった。
ユニークスキルは完全に個人のスキルがほとんどで残りは複数人の所持者が居たが入手方法が不明なものだった。
自分の知りたい事を粗方調べた龍弥は図書室を後にした。
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