国王と黒騎士
said龍弥
今俺は日本じゃまず見ることがないだろう大きく、煌びやかな装飾が数多く付けられた扉の前にいる。
ガチャン!
その大きな扉がゆっくりと開き俺たちは、メイドに先導され長く赤い絨毯の上を歩く。
左右には地球でいう中世ヨーロッパにあった鉄製の鎧を着た騎士が一定の距離ごとに立っている。
前方には2段の段があり、1段目には召喚の時にいた王女のイルとヴァージェルとその他に知らない男女が合わせて6人いた、恐らく王女と王子だろう。
「勇者方全員入室しました!」
龍弥たちが段の手前まで来ると、1番段寄りの2人の騎士のうち黒い鎧を着た騎士がそう言った。
段の1番上には2つの椅子があった。
しばらくすると段の後ろ側から2人の初老の男女が出て椅子に座った。
男の方は、指に宝石のついた指輪を何個もつけていて、服は窓から射し込む光でキラキラと日光を反射していて頭には王冠が乗っていたが、その指輪も服もギュウギュウになる位の肉が体についてり、関節や首部分は汗で濡れていて、その姿を見た途端口に手を当てようとしたのを意地で我慢したほどだ。
女の方は少し年を取っているが芸術品の様な美しいさがあり、豪華なドレスや冠を付けていても負けない美しさを持っている。
おそらく王妃だろう、勘違いか隣の男を軽蔑の篭った目で見ている気がする。
2人が椅子に座ると国王であろう男が口を開いた。
「よくぞ来た勇者たち、儂がアルダビール王国国王モーブデブである」
(よくぞ来たってお前らが連れてきたんだろうが、しかも名前がモブデブって)
「フッ」
聞こえないように吹いてしまい国王に視線を戻すと国王がこちらを見ていた。
「ふむ、そこの者よ、何か言いたげな目をしているな」
「いえ、なんでもありません」
(もしかして、吹いたのが聞こえていたか?)
龍弥は面倒ごとを避けようとして特に発言をしようとはしなかったが龍弥の隣から別の声がした。
「では国王様、私から質問をいいでしょうか」
その声の元は眼鏡君こと富塚だった。
「む、許可しよう」
「ありがとうございます、国王様は何故私たちをこの世界に呼んだのか、という質問です」
富塚がその発言をした途端黒い騎士と対にっている白い鎧を着た騎士が口を開いた。
「貴様!国王様が呼んだのではなく、貴様等が国王様に呼んでもらったのだぞ!」
いきなり訳のわからないことを大声で言い始めた白騎士に龍弥達は少し混乱していた。
(俺が呼んでもらっただと、真奈が瀕死の状態の中勝手に呼んだくせに、ふざけてやがる!)
龍弥は膨らみかけた怒りを理性で無理矢理ねじ伏せて国王と富塚の話を聞いていた。
「すみません、では何故国王様は私達をこの世界に呼んでくださったのですか?」
「ふむ、それはな最近隣国である『シュベット王国』のウジ虫どもが我が国に牽制し始めてな、近いうちに戦争になりそうなのでその増兵としてな、ウジ虫どもは魔法はあまり使えんが儂等人間より身体能力がバカみたいにたかいのじゃよ」
「ウジ虫・・ですか」
この発言には龍弥だけではなく、召喚された誰もが苦い顔をしていた。
「こちらの事情は話した次はこちらから質問をしよう、まずお前達のステータスカードを提示せよ」
龍弥たちは自分たちのステータスカードを取り出した。
もちろん龍弥は隠蔽したステータスのままだ。
(さて、どんな反応をするかな。まぁ、だいたい予想はついているが)
「ふむふむ、・・・・・おい!ムース!」
国王が最後に渡した龍弥のステータスカードを目にした途端、そう呼ぶと白騎士が返事をした。
多分白騎士の名前なんだろう。
「ハッ!」
「そこにいる1番左の男を地下に連れて行け!」
「ハッ!」
そう言うと白騎士がこちらに近ずいて龍弥の腕を掴もうとする。
龍弥は咄嗟に後ろへバックステップをして避けると白騎士がまた大きな声をだした。
「貴様!なんのつもりだ!」
「なんのつもりだって、いきなり地下に連れて行けってそっちがなんのつもりだ?どうせステータスが他の4人より劣っていて使い物にならないから使い道が出来るまで地下牢で監禁しよとでも思ってんだろ?」
「龍弥君!此処は大人しく付いて行ったほうがいいよ!」
龍弥がそう言うと富塚はそう言っているが目が完全に嗤っていた。白騎士はというとフルフルと震えている、どうしたのかと思っていると鎧の中から怒声が部屋全体に響き渡った。
「貴様ーッ!国王様の前で不敬な発言を!不敬罪で叩き切ってやるわ!」
そう言うと白騎士は腰にある剣を抜いてこちらに迫ってきた。
龍弥は構えて白騎士を迎え撃つ。
「ハッ!素手で私の剣技をどうにかできると思うなよ!」
白騎士は自信に満ち溢れた事を言うや否や龍弥に駆け出し剣の間合いギリギリに入ると上段から振り下ろした、龍弥は半身を反らして避けると同時に白騎士の手元を軽く蹴って挑発する。
「騎士なのに一般人並みのステータスしかない人に隙を作ってもいいのか?」
「くっ、貴様ー!」
白騎士は声を荒げながら下ろした剣を龍弥に向けて振り上げた。
龍弥はそれを白刃取りすると剣の刀身を魔力を纏った膝に打ち付けた。
「さっきから貴様貴様うるさいんだよ!」
ベキンッ
剣は音を立てて半ばから折れた。
(魔力の纏い方は以外と簡単だな)
そう、龍弥は客室からここまで魔力を体に纏えないかを実験していて出来ることを発見していたのだ。
「お、俺の剣が・・」
白騎士は自分の剣がいとも容易く折られたことに唖然としていた。
「そんなもんかよ」
龍弥がつぶやく。それと同時に回りの騎士達が一斉に龍弥に剣を向けた。
だが
「やめろ、お前達!」
その声はこれまで黙っていた黒騎士のものだった。
「勇者殿よ、この度はこちらが召喚したにも関わらずこの様な無礼を働いてしまいすまない」
黒騎士は龍弥の前まで来るとそう言った。
(黒騎士の方は話ができそうだな)
「おい、ミレル!何をしているその者を捕らえぬか!」
国王がそう言うと黒騎士が近ずいてきた。
『地下牢には入れない、話をしたい。ついてきてくれないか?』
黒騎士が龍弥だけに聞こえる声でそう言った。
(ふむ、何かあるようだな)
龍弥はそのまま黒騎士と共に会見を後にした。
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