マリアVS双子
龍弥達はダンジョンから戻り部屋に居て、する事もないので少し遅めの食事を摂りに向かった。
宿の一階でも注文すれば食事は出来るが折角なので、色々なものを食べたいと龍弥は思っていたので、皆んなに行って街へ出ていた。
外はダンジョンから出た時よりも一層暗くなっていたが、宿が大通りにある為店の明かりで道は明るく屋台も出ていて、夜とは思えない賑やかさだった。
そんな中、龍弥は少し顔を顰めて歩いていた。
理由は龍弥の両脇にあり、そこにはイルとジルが龍弥と腕を組んでいた。
「ちよっと、なんであんた達タツ君と腕を組んでるの?」
「マナだってダンジョンの帰りタツミと腕を組んでたじゃない!」
右側では真奈が不満を言い、イルが言い返す、2人はさっきからその繰り返し。
反対側ではジルとマリアが無言でお互いを肘でバシバシと小突きあっていた。
「はぁ〜」
龍弥は溜息を吐くと2人から腕を解き、2人が文句を言おうとして、それを言う前に言った。
「ほら、今日はここで夕食をとるぞ」
龍弥はそう言うと1人店へ入って行った。
4人・・・マリアは龍弥が腕を解くと同時に龍弥へ着いて行ったので・・・3人は急いで龍弥を追った。
店の名前は『お気楽亭』と書いてあり、中に入ると何とも言えない暖かさを感じる木を基調とした作りで、奥には暖炉が有り実際にも暖かかくとても賑やかだった。
真奈達は龍弥に好きに注文するように言われ、其々が注文し龍弥もそうした。
「さて、今日は初ダンジョンだったが何か問題はあったか?」
「ん〜、もう少し魔力の流れを制御する練習をして魔法の発動時間を早くしたいな、装弾が有るけど切れた時に戦えない、なんて言うのは嫌だからね」
「確かにな」
「私は職業を最大限活かして色々な魔法を覚えたいわ」
「そう言えばイルの『読み人』ってどんな職業なんだ?」
「あれ?説明してませんでしたってけ?」
「あぁ」
「そうですね、私の読み人は書物などで、ある魔法の事を読んでどんな物かを理解すると属性に関係なく使えるようになります。覚えた魔法は『〜魔法』とは違い読み人のスキルとして使います。だから光魔法の魔法を覚えても、その魔法は使えますが他の光魔法は覚えないと使えません」
「凄いスキルだな」
「勿論制限はあります、MPは使いませんが、回数や規模はスキルレベルで制限されますし、覚えても使える魔法もストックが有ります」
「確かに制限が無ければそれこそ、国相手に喧嘩を売れるな」
「そういう事ですっ!」
イルは自慢気に有りもしない胸を張った。
龍弥がそれに苦笑していると、注文した品が運ばれてきた。
「お待たせしました。此方がレッドラビットのシチューとベッツのサラダです」
龍弥の前には生なのでは無いかと思わせる様な赤い肉が入ったシチューとレタスに似た野菜のサラダが持ってこられた。
真奈達にも料理が運ばれて5人は食べ始めた。
「「頂きます」」
龍弥と真奈がそう言うと珍しくマリアを含めた3人が不思議そうな顔をした。
「あぁ、これは俺達の国で食事の前に行うもので、私の為に命をくれてありがとう、と食べている物に対しての感謝の言葉だ」
「ヘぇ〜、じゃあ私も」
「「「いただきます」」」
イルとジルとマリアもそう言うと夕食を食べて始めた。
side out
side ベーゼル帝国・フィア&フィロ
「フィロ、どうやってメイドを1人にする?」
「ん〜、まって今閃きそう」
「「・・・・そうだ!」」
「やっぱりアレ?」
「うんうんアレアレ!」
「じゃあ勇者?達があそこから出てきたらシスの奴に言ってやってもらおう!」
「うん!」
フィアとフィロは龍弥達の入って行った店の向かいにある建物の屋上でキャッキャッと笑っていた。
side out
side 龍弥
龍弥達はダンジョンの事やノースキャストまでの事を話していた。
「ジル、ノースキャストに行くまに幾つ街が有るか分かるか?」
「えーと、確かウィンドタウンを含めて3つだったと思います」
「そうか、意外に多いな。それとその街の間の距離は分かるか?」
「流石にそこまでは・・・」
「まぁ、ギルドで聞けばわかるだろう。それと明日の予定だが、食料とその他の必要な物は俺とマリアで買ってくるから、金は渡すから各自必要な物は買っておいてくれ」
「2人で行くの?」
真奈が不満気に言い、イルもウンウンと頷いている。
「まあな、次の街では一緒に買い物に行くから今回は我慢してくれ」
「2人で?」
真奈はガバッと机に手をつき龍弥と目を合わせてそう言った。
龍弥は真奈の瞳の奥に何か強い念を感じて少し狼狽えてしまった。
「あ、あぁ、街1つで1人づつ行こう」
「「やったーッ!」」
真奈とイルは声を上げて、ジルは顔には出していないが机の下でガッツポーズをとっていた。
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食事も終わり5人は店を出た。
「タツ君!こっちの世界の食べ物はどこも美味しいね!」
「そうだな、今度森に食用の魔物でも狩りに行くか?」
「うん!」
「タツミ!私も連れて行くのよ?」
「あぁ、皆んなで行こう」
龍弥が真奈とイルと話していると、ジルが少し焦ったように言った。
「タツミ様!タツミ!」
「ん?」
「マリアの姿が見当たらないの!」
「マリアの?・・・おかしいな、奴隷契約の効果が発動されない」
「皆、様子がおかしい。周りを見ろ、1人も人が居ない。気を付けろ、敵だ」
真奈とイルはそれを聞き杖を構え、ジルは龍弥にボックスから出された刺剣を受け取り構えた。
すると突然足元から深い影が広がり4人を包んだ。
side out
side マリア
私はついさっきまでタツミ様の後ろを着いて店を出たはずでした。
そして微かな魔力を感じたと思ったらいつの間に荒野に立たされていました。
「結界魔法ですか。」
「「せいか〜い」」
何処からともなく声が聞こえ、気配を感じる方を見るとそこには外套を身につけた人物が2人いました。
シュッ
「いきなり攻撃するなんて、酷いんじゃな〜い?」
「本当、本当。挨拶もして無いのに〜」
「「ね〜」」
私が投擲したナイフは確かに外套には当たったはずでしたが外套は霧の様に無くなりました。
代わりに外套からは2人の少女が姿を現しました。
「幻系の魔法ですか。面倒ですね。」
「直ぐにそこまで見抜くなんて凄いね〜」
「それにしても、貴女には面倒な事なんて無いですよ?」
「だって貴女は」
「今から」
「「死ぬだけだからッ!」」
2人はそう言うと手にナイフを持って駆け出し、距離を詰めると洗練された連携でマリアを襲った。
「やられっぱなしだよ〜?」
「さっきまでの強気はどこに行ったの〜?」
マリアはそこまで手こずっていた訳でもなく動きも追えていたが問題があった。
(動きが見えていますが2人で隙を補い合っていますね。)
2人の連携は完璧でステータスでは圧倒しているマリアでも隙を突けないでいた。
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戦闘が開始してから既に長い時間が経っていたがお互いがお互いに決定打を出せないでいた。
「ちよっと〜」
「ニ対一なのに何で勝てないの?」
「・・・」
2人はスタミナが切れる様子もなく相変わらず隙のない攻撃でマリアに攻撃し続けていた。
(仕方ありませんね。久し振りに魔法を使いますか。)
マリアは2人の攻撃を捌きつつむごんで魔法の発動を準備していた。
「エアーボム」
マリアがそう唱えると3人が居た地面が爆ぜた。
そして爆発で砂埃が舞い上がり一時視界を奪われた。
3人はお互いに距離を取り、砂埃から脱出した。
そして砂埃から出てきた中にマリアは居なかった。
「あれ〜?」
「何処に行ったの〜?」
「逃げたのかな?」
「「「・・・・」」」
埃が晴れると其処にはフィロが1人とフィアが2人いた。
「あれ?どっちがフィアかな?」
フィロの前には2人のフィアがいて、2人はフィロを見ている。
「本物は私よ!」
フィロから見て右のフィアが言う。
「いいえ、私よ!フィロなら分かるわよね?」
「フィロ騙されないで!此奴は偽者よ!」
「何言ってるの?あんたこそ偽者でしょ!」
2人のフィアはお互いに言い合っている。
(ふふふ、残念私達には念話石があるからどっちが本物かなんて簡単に分かるのよっ!)
フィロは持っている念話石に魔力を込め発動させた。
『フィア!私から見てどっちがフィアなの?』
『待ってたわ!私は右よ!2人で偽者を殺すわよ!』
『はいは〜い』
フィロは念話石を切り、アイコンタクトでフィアを見ると、もう片方のフィアに迫った。
「な、何で?!フィロ!何で私を攻撃するn」
ザシュッ
言い終わる前にフィロは片方の首を撥ねた。
「ふふふっ!最後まで諦めが悪かったね!」
フィロがそう言ってフィアの方へ振り向く・・・事は無かった。
「ガ、ガホッ。だんで(何で)・・・」
その首には深々とナイフが刺さっていた。
フィア・・・マリアはフィロに刺したナイフを抜き、器用に血を避ける。
フィロの息が絶えると周りの風景が自然と街の風景へと戻っていった。
「どちらが味方かも見分けられないとはまだまだですね。」
マリアは一言そう言うと龍弥を探しに、街の闇へ姿を溶かした。
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