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異世界に来た黒の勇者  作者: アマ
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動き出した帝国とアルダビールの現状



龍弥達は順調にダンジョン内でモンスターを倒していた。

一層で出てくるのは殆どがゴブリンで、真奈とイルは慣れてくると殆ど作業になっていった。

そんな中龍弥は再び敵の気配を感じた。


「次、右に曲がった所にゴブリンが5匹・・・いや、4匹ともう1匹はゴブリンに似ているが出している気配が普通のゴブリンより少し強いな」

「それは恐らくハイゴブリンだと思います。」

「ハイゴブリン?ゴブリンの上位種か?」

「はい。因みにゴブリンは5段階あり、下位順にゴブリン、ハイゴブリン、ゴブリンソルジャー、ゴブリンナイト、キングゴブリンになっています。」

「じゃあ、あいつはゴブリンとそこまで変わらないのか?」

「いえ、ハイゴブリンはゴブリンを指揮するので、ゴブリンの集団よりハイゴブリンがいる集団の方が格段に厄介です。」

「分かった。皆んな、最後にこいつらを倒して行く、平気か?」

龍弥は全員が頷くのを確認すると作戦を話した。


「まずマリアがハイゴブリンの姿が見え次第始末する。できるか?」

「問題ありません。」

「次にハイゴブリンが殺られ、周りのゴブリンが怯んでいる隙に真奈達は魔法で残りを倒してくれ。倒しきれなかったゴブリンは俺が始末する。行けるか?」

真奈達が頷き、龍弥はマリアに合図を出すとマリアは影に飲まれ姿が消えた。


(スキル隠者か全く気配が感じ取れないな)龍弥がマリアに関心していると、少しして前方の曲がり道からハイゴブリン達が現れた、が、出たと同時もにハイゴブリンの首が飛びゴブリンは龍弥達に気付くより前にハイゴブリンへ視線を送り狼狽えていた。


『いまだ』

真奈は例のごとくウォーターバレットを放ち、イルは中級魔法のアイスランスをジルはライトバレットを放った。

ゴブリン達は眉間や心臓を射抜かれ絶命し、イルのアイスランスに至ってはゴブリンの上半身を持って行った。


「呆気なかったな」

龍弥がそう呟くと真奈とイルが元気よく言った。


「私達が強くなってるんだよ」

「そうよ!」

真奈とイルがそう言い龍弥は苦笑した。


「だからと言って怠けてると取り返しの付かない事に繋がるぞ」

龍弥がそう言うと、分かってる、と頬を膨らませゴブリン達のところへ行った。

マリアはハイゴブリン達が全滅するとゴブリン達が居た場所から現れゴブリン達から魔石を剥いでいた。

龍弥はマリアから魔石を受け取るとボックスに仕舞い、全員に言った。


「この調子なら5層にも挑めそうだ、今日は帰り明日に予定を済ませ5層に挑戦し、『ボス』がどれ程のものか見ておきたい」

「大丈夫?」

龍弥の言っていたボスとはダンジョンの5層毎にいるモンスターの事で、その多くが壁もないホールのような場所に単体で鎮座していて、それ単体で強力な力を有しているモンスターの事だ。

真奈は龍弥からそのことは聞いていて少しの不安があった。


「5層での陣形は変えて、俺とマリアが前衛、ジルが中衛、イルと真奈が後衛だ」

「タツ君は大丈夫なの?」

「気にするな」

真奈は不安そうな表情をしていたが、龍弥は平気だと言って会話を切った。



龍弥達はダンジョンを出て宿へ向かっていた。

ダンジョンから出た時は既に外は暗く街は灯りがついて夜にも関わらず街の人々で賑わっていた。

真奈達は今回ダンジョンでの戦闘の話で盛り上がっていて上機嫌だ。

しかし、龍弥とマリアは街の外からの視線を感じ警戒していた。


「マリア、数は分かるか?」

「6人です。今朝より3人増えてます。」

「その中で一番強い気配の奴と俺は戦えるか?」

「ハッキリ言って、相手のレベルと龍弥様のレベルの差が激しくて難しいと思います。」

「・・・そんな奴が来てるのか」

「どうしますか?」

「手を出してくるようなら此方も迎える、今回はジルも連れて行く、イルと真奈には知らせなくていい」

「畏まりました。」

龍弥はマリアに聞いた相手の強さが自分より高く、勝てないのではなく、戦えない事を理解していた。


(この世界の平均では強いが、図書室の爺さんや今回の奴らがこれからも敵として出てくるのは確実だな。俺も早急にレベルアップとスキルの収集を行うべきか)

龍弥は宿に着くまで視線を気にしながら、自分の強化を考えていた。


side out


side ベーゼル帝国偵察隊


「あそこに見えるのが勇者?ブレイの報告には聞いていたけど、間違っても勇者には見え無いよね」

ウィンドタウンより離れた森の中に3人の人影があった。


「確かにあれは勇者なんて輝かしいものじゃなくて、私達と同じ裏の人間と同じ目をしているね。幸い見た限り本人もまだ『無自覚』だけど」

「フィア様、フィロ様如何なさいますか?」

「取り敢えず」

「邪魔なあのメイドと」

「後ろにいる紫髪の子を」

「「殺す」」


フィアとフィロと呼ばれた人影が月光に照らされる、1人は紅い髪のショートで赤眼の少女、もう一人は蒼の髪を持ちロングで碧眼の少女。

少女達は髪型と眼は異なるが顔立ちはほとんど同じで、双子であることは見れば誰でも分かるだろう。


「了解しました、ではトワロ様に伝えて参ります」

「はいはーい」

「行ってらっしゃーい」

ブレイは2人の声を背にトワロと呼ばれた者へ報告に行った。

双子達は顔を見合わせ陽気に話した。


「どっちから行く?メイド?紫?」

「そりゃもちろん」

「「メイド!」」

2人は微笑み合うとフードを被り夜の闇に溶けていった。


side out


side龍弥


龍弥達は宿へ帰って来ていて、今日のダンジョンでの事を話していた。


「戦闘には慣れたか?」

「まだタイミングとかが合わないけど思っていたより難しくなかったよ」

真奈は龍弥にそう言うと自分の杖を見て「ふふっ」と笑っていた。


(もしかして真奈は戦闘の才能があったりするのか?)

龍弥はダンジョンでの真奈の動きを思い出して、そう思っていた。

真奈は最初こそゴブリンの容姿に後ずさっていたもの、数を重ねるうちに動きにも余裕を持ち、ゴブリンでは相手に塗らないレベルまで上がっていた。

もともと、元の世界でも何に置いてもトップクラスだった彼女は、この世界に来てその才能が戦闘のみに向けられることで、戦闘の技術をメキメキと伸ばしていた。


イルも元々魔法の才能はあったようで、真奈程では無いものの魔法のセンスは今回ダンジョンに潜ったことでその片鱗が見えていた。

龍弥がそう考えるのも仕方なく、通常、城にいる宮廷魔術師ですら中級魔法を扱えるようになるのは1年程の必要だ。

それに比べ、イルも真奈もそれを1週間も経たないうちに扱う様になっていたからだ。


その後、龍弥達は今日の予定はもうない為、各自部屋で自由に過ごしていた。


side out


sideアルダビール


龍弥達がダンジョンへ潜る頃、アルダビール王国、王城では少し問題が起きていた。


「王様!これ以上の訓練は無茶です!」

国王へそう言ったのは富塚だった。

その後ろには、北村と、時江の姿はあったが、南波の姿は無かった。


「何を言っておるのだ?貴様らは勇者、我々はお前達を呼んだ主だそ?僕が主に尽くすのは当たり前では無いか」

龍弥達がこの世界に呼ばれて1週間、最初からほとんど被っていないも同然の王国全体の猫の皮は剥がれ、王は勇者を下僕のように扱い、より早く戦争へ投入するために無理な訓練を受けさせ続けていた。


そしてついに今日、南波が訓練に耐え切れず倒れたのだ。

富塚も流石に焦り、王との謁見を図ったのだ。

結果は当然無駄で、勇者を当然のように僕と言ったのだった。

これは富塚にとっても予想外の事で内心焦っていた。


(クソッ!やっと真場が消えたと言うのに・・・まさかこの国に奴隷契約を結ばれるとは)

実は富塚達は龍弥が去った夜、王国側が勇者の脱走を防ぐために、寝ている間に奴隷契約を結ばれていた。


「分かったらさっさと出て行け、儂も暇ではない」

国王はそう言うと王座から去っていった。

後ろでは時江の諦念の篭った溜息が聞こえた。


訓練では戦士職の富塚と北村、魔法職の時江と南波の2つに分かれていた、その中で、時江は疲れるどころか余裕があった。

その理由は彼女の職業に関係しているが、彼女がそれにに気付くのは、まだ先の事だった。


富塚は怨念を目の奥に孕ませ、王との謁見を後にした。









最後まで読んでいただきありがとうございます。

誤字、脱字、アドバイスがありましたらメッセージやコメントで指摘してもらえると助かります。

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