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異世界に来た黒の勇者  作者: アマ
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ダンジョン



龍弥達は今、ウィンドタウンの中でも特に賑わっている商業エリアにに来ていた。

そして龍弥達はその先にあるダンジョンへ向かって歩いていた。


「ジル、どこの街もダンジョンの近くはこんなに賑わっているのか?」

「街の近くや街の中にダンジョンがある街はこんな感じですよ、冒険者や兵士の人がダンジョンを潜りに来た所に攻略済みの階層の地図や水、食料を売り込むんです」

「なるほど」

龍弥は納得すると周りの屋台や店を見た。

改めて見ると他の商業エリアと違い、防具や武具、麻袋などダンジョン内で実用性がある物ばかりに見える。

因みにダンジョン内は地下にあるとされているが、ある冒険者がダンジョンの近くの地面を掘り壁からダンジョンに侵入を試みたが何故かダンジョンを挟んだ反対側から出て来たという。

他にもダンジョンは、ダンジョン内で死んだ人間の屍体が無くなっていたりや、誰も設置していない宝箱から貴重な物が出てくるなど解明されていない事が多くある。

逆によく知られていることで、最下層に近いほど出現する魔物のレベルが高くなり、強い魔物が出現するという事。

そして冒険者達はダンジョン内で出現する魔物をモンスターと呼んでいる。

モンスターと魔物の違いは倒すと魔石や部位のみをドロップして屍体は消えるという事だ。


龍弥はダンジョンに近ずくにつれ周りの人間が一般市民から、鎧やローブを着込んだ冒険者になっていることに気付いた。


(流石はダンジョン、か)

暫くすると龍弥達の前に大きな建物見えた。


「あれがウィンドタウンの冒険者ギルドですね」

ジルがそう言い続けてせつめいしてくれた。


「この街だけで無くダンジョンのある街は冒険者ギルドをダンジョンの近く、又はギルド内に入口が来るように建ててダンジョンを管理するんです」

「ダンジョンを管理?入るのに制限が有るのか?」

「特に無いですが、ダンジョン内のモンスターが外に出ないようにしたり、無謀にダンジョンへ入ろうとする者を止めます」

龍弥は成る程、と納得するとギルドの扉を開けた。

中に居た者たちは龍弥達を見ると興味を失くした者、恨めしい視線を送る者、呆れた様子の者など様々だった。

その中に1組、下衆な笑みを浮かべ龍弥に近寄る男達が3人いた。

その3人は汚く長い髪に無精髭を生やしゴツゴツとした鎧を身に纏った大男と、大男の後ろでヘラヘラと笑っている2人で、3人は真奈達を見ている。


「おうおう!ここは女を侍らせに来る場所じゃねえぜ?」

「へっへっへ、まあ痛い目にあいたくなかったらそこの4人を置いてけって事よ」

「それと持ち物もなぁっ!」

3人はそれぞれ好き勝手言うと龍弥の隣にいた真奈に手を伸ばした。

龍弥は黙って見ているはずもなく男の手を叩いた。


「っ痛ぇなぁ!」

叩かれ大男は切れ腰に携えている剣を抜いた。


「俺はなぁ!弱ぇ癖に生意気な野郎がムカついて仕方ねぇんだよ!」

「そうか、俺には関係ないな、そこを退け」

「・・・あぁ?テメェ!俺が誰だかわかってんのか?!」

大男は龍弥の言った意味を理解するとブチ切れた。


「知るわけないだろ?」

「なら最後に覚えとけっ!俺はストングだ!」

そう言ってストングら龍弥へ向かって剣を上段から下に振り下ろした。


そして死んだ。

実を言うと龍弥は下衆な笑みを浮かべた男が真奈に近ずいた時点で、前の世界との事もありブチ切れていたが、理性で怒りを押さえつけていた。

ギルド内にいたある程度の強者は龍弥にはどうしようと勝てない実力があるとその時点で理解していた。

勿論ストング達はそんな事に気付かず龍弥の逆鱗に触れていた。


大男は龍弥に剣を振り下ろしてからやけに視線が低くなったと感じていた。

それもそのはずストングの首から上は既に床に転がっていたからだ。

そして不思議なことに大男の首の断面からは一滴も血が出ていなかった。

その断面は超高温により炭化していた。


『スキル『火魔法』ヲ奪取シマシタ。』

龍弥の頭の中にはそんな報告が響いていた。

龍弥は下衆な笑みを浮かべこちらに近づいて来た時点でスキルを奪取していた。そして龍弥が大男に行った事は最近愛用している天刺刀に、大男の取り巻きの1人から奪取した火魔法を『魔纏』という魔法を自分の武器に纏わせる技術を用いた事だ。

『魔纒』という技術は中堅程の冒険者なら使える簡単なものだが、それは魔力自体を武器に纏わせるもので、龍弥がやった火魔法を纏わせる技術はかなり上位の冒険者や国の騎士が出来る様になる物だった。


(街に来る途中にジルに聞いて闇魔法で練習していたが他の属性でも出来たな)

龍弥はすっかり冷め、自分の魔纒の完成度や改良する点を考えていた。


「ス、ストングの兄貴!」

「ば、化け物ッ!」

大男の取り巻き2人は大男の首がコロコロと転がっているのを見てギルドのカウンターへ行き受付嬢に助けを求めた。


「た、助けてくれ!殺されちまう!」

「申し訳ありませんが、ギルドは個人同士の諍いには干渉出来ません。また、今回の件は先に剣を抜いたストング様達に非があるので、ギルド側からは余計手出しは出来ません」

「う、嘘だろ?」

男達は受付嬢の言葉を聞き俯き直ぐに顔を上げると意を決した様に龍弥を睨んだ。


「だ、大丈夫だ俺達には魔法がある、ティダやっちまえッ!」

片方の男が龍弥がスキルを奪取した男の方に言った。


「そ、そうだ、俺達には魔法があるんだ!」

ティダと呼ばれた男もそう言うと龍弥に向き直った。

男達がこれ程強気になれたのは、魔法を扱える者は魔法ギルドには入り、国に仕える者が多い為冒険者ギルドで魔法を扱える者が少なく、龍弥の体術を見て、龍弥が魔法を使えないと考えていたからだ。

当然龍弥は闇魔法と奪取した火魔法を使える。が、龍弥は今使う気は無かった。


男達は魔法の事を思い出すと龍弥を睨み『詠唱』を始めた。


「魔力を糧に我の敵を燃やせ!ファイアーバレットッ!」

「魔力を糧に我の敵をその水で穿て!ウォーターバレットッ!」

(これが詠唱か・・・)

龍弥は2人の詠唱を観察し終わると2人に向かって駆け出した。

そして男達の内、ファイアーバレットを放った男からは魔法が放たれなかった。

それもそのはず、火魔法のスキルは既に龍弥が奪取していたからである。


「あ、あれっ?」

スキルを奪取された男は自分の手のひらを見て不思議そうにしていた。

龍弥は放たれたウォーターバレットを避けようとせずにそのまま突っ込み、前方から来たウォーターバレットを握り潰した。


「なにっ!?」

ウォーターバレットを放った男は怯み、龍弥はその間に男達の後ろに駆け抜けて天使刀を仕舞う動作に入っていた。


ゴトッ

男達の頭はストング同様に床に転がっていて血は一滴も垂れていなかった。


「行くぞ」

龍弥は真奈達に言うと受付カウンターへ向かった。


「ま、待って」

真奈を残してジル達は龍弥に着いて行き、真奈は目の前で人殺しがあり少し心が置いて行かれていた。

真奈は、ハッとなり龍弥の後を追う。


「タツ君、タツ君はこの世界に来てこれまで人を殺したことあるの?」

「あぁ」

「そっか」

「ショックだったか?」

「ううん、覚悟はしてたんだけど少し驚いただけ、もう大丈夫」

「ならいいが、何かあったら言ってくれ。何か起こった後じゃ遅いからな」

「分かった」

龍弥は受付カウンターに着くと受付嬢に言った。


「ダンジョンに入りたい、それとさっきの戦いで俺は罪に問われるか?」

「畏まりました、さっきの戦いはストング様達が勝手に仕掛けたものなので問題はありません。許可書を発行するのでギルドカードを提出して下さい」

龍弥はギルドカードを受付嬢に渡した。


「それと、後ろにいる4人とパーティーを組みたい」

「では4人のギルドカードもお願いします」

「3人登録していないんだがそれも纏めて頼む」

「畏まりました、この紙にご記入下さい」

ジル以外は紙に自分の名前、種族、魔法の属性を書き提出した。



「しばらくお待ちください」

そう言って受付嬢は奥へ行った。

30秒と経たないうちに3枚のギルドカードと許可書を持ってきた。


「では行って参りませ」

龍弥達はギルドの奥にある開いた大きな扉を潜りダンジョンへ向かった。


ダンジョン内は幅8m縦4mと、狭くなく戦闘に問題は無さそうなところだった。

壁や床は石で壁には光った石のようなものが埋め込まれていた。

「中は思っていたより広く明るいな」

「はい、魔石を使って作られてる光源があるので管理されている層までは明るいです」

「そうか、因みこのダンジョンが何層まであるか知っているか?」

それに答えたのはマリアだった。


「このダンジョンは今の所30層まで攻略されています。また、25層を越えたあたりからモンスターの格が上がることから攻略は近いとされています。そしてこのダンジョンでは5層ごとにボスが出てくるという情報です。」

「ありがとう、俺達はあくまで武器の試し切りだ。そんなに深くに潜る気はない。ある程度慣れたら帰ろう」

龍弥の言葉にそれぞれが返事をすると、龍弥は進んだ。

ダンジョンに入り10分程してマリアが初のモンスターを感知した。


「前方20m進み突き当たりを左へ曲がった所に3匹ゴブリンです。」

「皆んな武器を出せ」

真奈とイルはマリアの言葉に警戒し、龍弥の言葉に緊張した。

龍弥達は武器を取り出し進んでいく、マリアの入った通り20mの地点は突き当たりになっていて左からは獣の様な呻き声が聞こえてくる。

龍弥は真奈とイルには戦闘の経験をさせておきたく、ゴブリンは丁度いいと思っていた。


『今からゴブリンとの戦闘を始める、真奈とイルは戦闘の経験をしてなるべく早く慣れてもらいたい、これから3匹の内1匹を俺が殺し残りの2匹を真奈とイルのそれぞれに向かう様に誘導するから魔法で倒してくれ。マリアとジルは真奈とイルのサポートを頼んだ』

『『『分かったわ』』』

『わかりました。』

龍弥はそれぞれの返事を確認すると1人で突き当たりを左に曲がった。

ゴブリン達は突然姿を現した龍弥に驚いたが直ぐに手に持っている出来の悪い棍棒を持って、龍弥に襲いかかった。

龍弥は天使刀に火魔法を纏わせ一番近くのゴブリンを真っ二つにし、予め持っていた石を残った内の1匹のゴブリンに投げつけ怯ませ真奈達の所へ戻った。

真奈達は既に用意は終え龍弥が戻ると杖を構えた。

ゴブリンが見えると2人は自らが得意とする魔法を放った。


「ウォーターバレットッ!」

「アイスバレットッ!」

真奈のウォーターバレットはゴブリンの眉間に吸い込まれるように当たりゴブリンは即死し、イルのアイスバレットはゴブリンの胸に突き刺さり即死とはいかなかったが、刺さった部分からゴブリンの体が凍りやがて息絶えた。


「初の戦闘だがかなり上出来だ。それと一つ聞きたいんだが真奈とイルは詠唱をしないのか?」

龍弥は2人が詠唱を唱えなかったことに疑問を持っていた。


「私は狙撃者の中のスキルで『装弾』って言うのがあって予め魔法を銃の弾の様に放つ瞬間のものを保存できて魔力は装弾する時に使うからこのスキルを使うこと自体では使わなくて便利なの」

真奈は込められる魔法の規模と数はスキルレベルに依存するけど、と付け足した。


「私は『分割演算』で詠唱を頭の中で行ってるから口に出してないだけなの、まぁそれでも普通に詠唱するのとは速さが全然違うけど」

龍弥は2人の説明を聞きながら改めて2人のスキルの強力さを感じていた。


「因みに真奈は何を幾つ装弾しているんだ?」

「えっと、少し待ってね・・・えーと『ウォーターバレット×19』『アクアウェーブ×5』『アクアスピアー×2』って所かな」

「十分だ」

龍弥は2人の初戦闘に満足していた。

そして龍弥達は出てくるモンスターを真奈とイルで撃退しながらダンジョンを進んでいった。







最後まで読んでいただきありがとうございます。

誤字、脱字、アドバイスがありましたらメッセージやコメントで指摘してもらえると助かります。

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