新しい武器とダンジョンへ
side龍弥
宿を出て通りを歩くと改めて街の賑わいを感じていた。
宿は商店街の大通りの入り口近くの宿で、丁度複数の通りがぶつかる位置で人が大勢行き来している場所でもあった。
「すごい人だね」
「確かに王国程では無いけれど賑わいは負けず劣らずね」
何時の間に仲良くなったのかイルと真奈は2人で話していた。
「まず食料、武器、服、どれを買いに行くか決めてくれ」
「タツミ様。食料は少しでも長くもたせたいので明日、私が買って来ることを提案します。」
「確かにな、だが俺も付いて行かせてもらう、個人的に買いたいものもあるから付き合ってくれ」
「畏まりました。」
「どれを買いに行くか決まったか?」
「私は服がいいな」
「私もよ」
「私は武器を見たいですわ」
順に真奈、イル、ジルの意見を聞き龍弥はマリアの意見を待っていた。
「私は先に服を買いに行った方がいいと思います。武器はいざという時の為にタツミ様に持っていただくわけには行かないので。」
マリアの意見が最もだと思いジルも服を買いに行くことに同意した。
龍弥達は商店街を歩きながら過ぎていく店を見ていた。
「タツ君、やっぱり見たことのない食べ物ばっかりだね」
「確かに、味がかなり気になるな」
「宿にも食堂があったけど今日のお昼は外で食べない?」
「あぁ、そのつもりだ」
「やった!」
真奈は喜び龍弥の腕と自分の腕を組んだ。
それを後ろからジト目で見ている者が2人いた。
ジルとイルだ。
『イル、真奈さんは少しタツミ様にくっ付き過ぎだと思いませんか?』
『確かにそう思います、元々同じ世界から召喚されたというのもありますが、それでもくっ付き過ぎです』
2人がコソコソと話しているとマリアが自然な動作で龍弥の隣に来て腕を組んだ。
「・・・2人とも歩きずらいんだが」
「あっちの世界でもこうだったでしょ!」
「小学生の時はな」
「私と腕を組むのが嫌ですか?」
「嫌ではないが歩きずらいことに変わりは無いな」
2人は、はぁと小さくため息を吐くと腕から離れた。
「タツ君鈍感だなぁ」
真奈の呟きはしかっりと龍弥に聞こえていた。
(流石にここまで露骨にアピールされれば俺に好意があるのかと思うが、真奈は他の人が好きだと学校で言ってなかったか?)
真奈の照れ隠しに気付いていない龍弥はやはり鈍感だった。
龍弥達は適当な店に入って昼食を取ったのだった。
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昼食を取り終わり龍弥達は服屋を探していた。
「それにしてもタツ君!トマトが蒼とは思わなかったね!」
「確かにな、名前はクレシュだったな、あっちの世界のトマトより格段に甘くて癖になりそうだ」
龍弥と真奈はこっちに来て初めて食べた青いトマトの話で盛り上がっていた。
暫くすると服屋が並ぶエリアに入り適当な店へ入っていった。
(俺は既に買ってあるし予備を買うだけでいいか)
店では真奈とイルが一緒に服を選んでいて、マリアは自分で縫えると言い布地だけを購入して龍弥の傍にいた。
ジルは服だけ直ぐに決めるとずっと下着と睨めっこをしている。
「マリア、追手の事だがそっちに行った男は強かったか?」
「いえ、直ぐに排除しました。」
「追手自体も強くなく、更なる追手も無いか・・・」
「やはり気になりますか。」
「あぁ」
(王との会見の時の俺の強さを信じてその程度だと踏んでるのか?まずあの追手がアルダビールからの物だという確証もないか)
龍弥は色々と考えていたが情報が少な過ぎたので、まだ保留という事にした。
龍弥が考えている内に真奈は服を買い終わらせ、龍弥の元へ来た。
「タツ君〜、終わったよ」
真奈がそう言い、龍弥達は店を出た。
店を出るとジルが子供のように言った。
「次は武器や防具ですね!」
「あぁ、店を何軒か見て回って、自分に合ったものを買ってくれ。
因みに4人はどんな武器を買うつもりなんだ?」
龍弥がそう言うとジルが元気よく言った。
「私は基本的にレイピアです!片手剣を二刀流で扱うこともできますわ!」
「そうか、それとさっきからきになっていたんだがジルは武器や防具が好きなのか?」
「ま、まぁ!言ってませんでしたが私は城で静かにしているより兵士達と訓練を積むことが多かったので、そのせいかもしれません」
ジルは少し顔を紅くして恥ずかしそうに言った。
「私の職業はユニークでそのお陰で闇魔法以外が習得可能だから使うのは主に魔法で杖があれば威力が上がるわ、城にいた時は戦うなんて思ってなくて何もしてなかったけど」
イルは最初は自信満々だったが最後の方は声がどんどん小さくなっていった。
勿論龍弥には聞こえていたが。
「だらけていた、と」
「ちっ、違う!事はないけど・・・」
「まぁ、これから覚えていけばいい」
「・・・うん」
イルは小さく返事をすると俯いてしょんぼりし、そこにジルが慰めの言葉を掛けていた。
「真奈はどうするんだ?」
「私はあっちの世界で武器は使ってなかったから決まってないけれど、ステータスでは後衛に向いてるみたいだしイルと同じで杖にしようと思うの」
「そうか、魔法はある程度使えるのか?」
「簡単なのは使えるけど攻撃にしては火力が低いから練習していくわ」
「わかった、ノースキャストに行く間練習していこう、俺もまだ魔法を使いこなしてないからな」
「わかったわ!」
因みにマリアはメイド、という理由で使えない武器は無いが、なるべくナイフやワイヤーなどの目立たない暗器がいいと言っていた。
話が終わると丁度武器屋が多く立ち並んでいるエリアに入った。
「予定通り見ていくか」
龍弥は目に付いた武器屋なへ入って行こうとした。
扉を開け様とすると同時に扉が開いた。
「うわっ!」
龍弥は手を掛けていた為中から出てきた男とぶつかりそうになり、体をずらして避けるとその人物は前に倒れてしまった。
「大丈夫か?」
「いつつつ、大丈夫です」
龍弥が手を差し出すと「ありがとうございます」と言って起き上がった。
「突然飛び出してしまいすいません」
その男は赤いオールバックの髪をポリポリとかき、済まなそうに謝った。
全身に鎧を纏ってることから冒険者だろうと龍弥は判断した。
「こちらも不注意だった、すまないな」
龍弥達は店に入っていった。
男は龍弥達が店へ入っていくのをじっと見ていた。
店の中に入りそれぞれが武器を見ている中龍弥は少し考え事をしていた。
(さっきの男、雰囲気こそ唯の冒険者だったが、ぶつかる寸前しっかりと俺を目で捉えていたな、冒険者なら咄嗟の時でもあんなものか)
龍弥はそう納得すると予備の武器になる物があるか店内を見て回った。
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結局店は4軒回り、その中でも値は少し張っていたが強度が高い武器を揃えてある店で各々武器を選んだ。
龍弥はブーツや服に隠せる様なナイフを買い、マリアも同じものを幾つかとカモフラージュの片手剣を一本買っていた。
イルと真奈は2人共別々の杖を買い、イルは90cm程の大きいが軽くて丈夫と店長から勧められた『ホワイトレナン』と言う大きな角を持ったトナカイ型の魔物から採った角を加工した物で、とても白く観賞用としても使えるものらしい。
勿論性能も高く、イルの魔力の操作能力を大きく補助してくれるもので、魔法の威力や飛距離が飛躍的に上がるものらしい。
一方真奈は40cm程の小さな杖で、『スリープシープ』と言う羊型の魔物で通常は寝ているが、起こされると危険度がEからBに上がる危険種の角から採り加工したもので、今回の買い物で一番高かったが、性能も高く、魔力の操作の補助と杖を媒体として魔法を撃つことで、魔力が増幅され威力が上がるもので、イルの杖よりも性能は高い。
ジルは楽しみにしていたにもかかわらず今回の買い物で武器を買わなかった。
理由を聞くと、自分に合った物がなかったとの事だった。
「ありがとうございました!またのおこしを!」
龍弥達は店を出ると次の予定について話した。
「思っていたよりも荷物にならなかったな」
「それはタツミのボックスのおかげよ、便利なスキルね」
いつの間にかに呼び方を変えているイルがそう言った。
「この後はどうする?」
「まだお昼過ぎだし、新しい武器を試すためにダンジョンに行きませんか?」
ジルがそう言うと真奈が質問した。
「ダンジョンはノースキャストにあるんじゃないの?」
「いえ、ノースキャストはダンジョンが密集しているところに街を作っただけで、この街の近くにもダンジョンが一つありますよ?」
「へ〜じゃあ、早速この武器を試しに行きましょう?」
「俺は良いが、他のみんなはどうだ?」
「タツミ様。私も最近戦闘を行っていなかったので軽く体をほぐしたいです。」
「私もこの杖を使いたいわ!」
マリアとジルも同じ意見が出たので、龍弥達はウィンドタウンの近くにあるダンジョンに行く事にした。
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