ヴァージェルの思い
sideヴァージェル
今日はついにこの国で勇者召喚の儀式を行う日、この国は先代国王の時に獣人族とは不可侵条約を結んでいたけれどモーブデブ・・・義父様が獣人族を下等生物と言って侵攻し、返り討ちになるに加え緊迫状態になってしまい、それを打破する為に勇者様は呼ばれることになった。
私は勇者とは魔王の復活や魔神の降臨で世界が危機に陥った時の救世主だと思っていました。
そう信じていた私からすると戦争で勇者様を呼ぶなんて信じられません。
(まぁ、勇者様も一番最初に呼ばれた勇者様以外は兵士並みのステータスしかないと聞いてますし、本物の勇者を見れるわけがないでしょうね)
おっと、儀式が始まり魔法陣が光り始めました。
魔法陣には宮廷魔術師20人が魔力を込めていて、私とイルが第一召喚の塔で勇者様を出迎えています。
(なかなか出てきませんね・・・失敗の筈はないのですが)
すると一際光が強まり目を開けていられなくなった。
再び目を開けるとそこには吸い込まれる様な闇色の黒い瞳と髪をもつ青年が居ました。
(・・・・)
「勇者様!」
私がぼうっとしているとイルがカバーしてくれました。
「ようこそおいで下さいました」
勇者様はイルの顔と私の顔をしばらく見ると質問をした。
「ここは?」
イルが直ぐに答える。
「あ、はい!私は『イル・シーン・アルダビール』第3王女で、ここはウールという世界のアルダビール王国という国の勇者召喚を行う部屋です!」
このセリフはずっと練習してきたので直ぐにでます。
「私は『ヴァージェル・シーン・アルダビール』第1王女です。勇者様、どうか私たちの国を救ってください」
私の自己紹介を終えると勇者様は周りを見回す。
他にも塔があることを確認しただろうと思っているとイルが不安そうに声をかける。
「勇者様?」
「とりあえす、詳しい話を聞かせてもらえるか?」
「あ!そ、そうですよね!」
イルが恥ずかしそうに言う。
「では、こちらへ」
そう言って勇者様を転移の魔法陣に案内する。
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義父様と勇者様方の会見が始まる。
義父様はいつもと変わらず汗を沢山かいていて気持ち悪い。
お母様も表情を隠しきれていない。
それから詰まらないやり取りをした後、私の待っていたステータスの公開が始まった。
(あの黒の勇者様はきっととても強いわ、ザック将軍よりも強い感じがするもの!)
しかし、他の勇者様はかなり強いですが、黒の勇者様・・・タツミ様は分隊長並みしかありませんでした。
(そこまでステータスが低いはずがありません!
ずっと王女だった訳ではなく、戦ってきた私にはタツミ様がそんなに弱いはずがないと分かります)
私はタツミ様が気になって仕方ありませんでした。
義父様がタツミ様を地下に連れて行かせようとするとタツミ様はそれを拒否しました。
暫くムースの攻撃を避けているとタツミ様がムースの剣を折りました。
(・・・やはり私の目に狂いはありませんわ。しかし、ミレルは兎も角他の人達は今のタツミ様の身のこなしを全く見ていなかったのでしょうか。)
その後タツミ様は黒騎士のミレルに連れて行かれた。
(タツミ様ともっと話してみたいわ)
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翌日、私はタツミ様を探しました。
なかなか見つけられずにいました。
午後になり手伝ってくれていた兵士の方々がタツミ様を連れてきてくれました。
「タツミ様、来てくださったのですね」
「あぁ」
タツミ様は詰まらなそうにそう頷く。
(ま、まずは私には興味を持っていただけなければ)
「それで、俺、私に用があると聞いてやっていたのですか?」
「はい、その・・お恥ずかしながら私はタツミ様を一目見た時からお慕いしていましたのです」
(と、咄嗟にとは言え、私なんてことを言っているの!・・・でも一応本当のことだし大丈夫でしょうか?)
「あ、あのタツミ様?」
「私もヴァージェル様の事は気になっていました」
(な、なんと!タ、タツミ様も私のことを?)
自分の顔がだんだん紅くなっているのが分かります、とても恥ずかしいです。
「そうでしたの?!私とても嬉しいですわ!」
「はい、私もです
「タ、タツミ様そんなに堅苦しい話し方はしないで、普段通りにしてください」
「わかった」
その後私はタツミ様とずっと話しました。
タツミ様は表情をなかなか変えませんが話しは楽しくてそれだけとドンドンタツミ様に惹かれていきました。
その内私は話題が無くなり、噂を話してみました。
「そういえば、最近イルが怪しい動きをしているという噂がありますね」
「イルと言うと第3王女様ですか?」
「えぇ、なんでもこの国を出ようとしているとか。はぁ、あの子はどうせ1人しかいないのにどうやって生きていくつもりなのかしら」
「イル様には兄弟がいると聞いたのですが」
タツミ様はイルに兄がいることを知っていました。
本人か、昨日ミレルにでも聞いたのでしょうか。
「カールの事ね、カールは先代国王の長男で第1王子だったの。お父様は王座を勝ち取るために刺客をおくって今は影武者がいるのよ」
私は義父様に聞いたことをそのまま教えました。
そして少しづつ龍弥に近づきドキドキする音が大きくなっていきます。
「タツミ様。私もっとタツミ様を知りたいです」
タツミ様は少し驚いた顔をして唇を重ねてくれました。
最初は痛かったですがだんだんタツミ様の事しか考えられなくなり、途中に感じた自分の心の中に何か入ってくる違和感はどうでもよくなっていました。
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