悪盗ポールと技術複製
side龍弥
ガサガサッ
後ろを向いた龍弥の前にいたのはべっとりと血が付いた鉈を持った2人の男がいた。
その内、血の付いていない鉈を持った方が口を開いた。
「でへへへへ、冒険者さんかぁ?実は俺らよぉ〜少し困ってんだけどよぉ、助けてくんねぇか?」
龍弥はそれを聞くと立ち上がり2人に近寄った。
「おぉ、ありがとよ、俺たちは・・金に困ってんだよ!」
そう言いながら男は龍弥に鉈を振り下ろす。
しかし、それは叶わなかった。
ブシュッ
「ふぇ?」
男は自分の首が落ちたこともわかないような顔で死んでいった。
「な、なんだお前!クソッ!」
もう一人の男は仲間が死んだのを見て直ぐに草むらに逃げ出した。
(よし、追いかければ上手くアジトに着くか?)
龍弥は直ぐさま男を追いかけた。
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暫く追いかけていくと男は洞窟へ駆け込んで行った。
(・・・まだステータス値にも不安があるし潜入で行くか、たが『陽炎』は洞窟内で使えないか、まぁ一人一人仕留めて行けば良いか)
スキル『無音』と『盗人の心得』を発動すると龍弥は洞窟へ入っていった。
(無音はそのままだが、盗人の心得はかなり使えるな)
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盗人の心得
・自分が盗んだ物の得たい情報を得られる。(情報の精密性はレベルに依存)
・盗みを働く時にAGIを+20%
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(鑑定眼の上位相互か。ん?見張りか)
洞窟の入り口には枝や葉が吊るされていて遠目からだと分かりにくくカモフラージュされていた。
そして洞窟の入った所の直ぐに一人男が立っていた。
龍弥は見張りにできるだけ近ずいて行く、鑑定眼で盗賊と確認すると、直ぐに口を押さえ声が出ないうちに首を掻っ切った。
(やっぱり地球にいた時より人が柔らかいな)
洞窟内の壁際を素早く移動しながら進むと一際広い場所に出た。
そこには石の壁に部屋が掘られていたり、足場で高い所にも行けるようになっていた。
龍弥は盗んだ宝石や金目の物のある場所をどう探すかと考え、盗賊自身に聞くことにする。
(先ずはその盗賊を誰にするか、一人でいる奴が都合よく・・・居たな)
龍弥がアジト内に視線を巡らせていると部屋の一つを詰まらなそうに見張りをしている若い龍弥程の少年がいた。
(あいつは・・・ギルドで金を巻き上げられそうだった奴か)
その少年はダギンに金を取られたところを龍弥に助けられた少年だった。
龍弥は直ぐさま近ずくが壁際の部屋のため死角が無い、しかし此処には松明が壁に立てられていてそれなりに明るかった。
(外よりは暗いが出来るか?『陽炎』)
陽炎を発動したがそれは完全ではなかった。龍弥のいる所には妙な光の屈折があり目を凝らすと人型だとわかるレベルだった。
(まぁ、そこまで警戒しているとは思えないな)
無音も発動させ素早く近ずいて行く。
「フグッ」
「静かにしろ」
少年の首に手を当てると少し血が出る。
「聞きたいのは一つだ、盗んだ金目の物の場所は?」
「フグッー、プハッ、し、知らないよ。僕は無理矢理此処に連れてこられたんだ」
しかし、ギルドでは見なかったがこの少年の職業は盗賊になっていた。
「お前の職業は見えてる、さっさと場所を言え」
「チッ、鑑定眼持ちかよ、金は一番奥のボスの部屋の隣の部屋だ」
そうか、と言うと龍弥は少年の鳩尾を殴り意識を奪った。
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・
・
洞窟のさらに奥には洞窟に似合わない木造の豪華トビラがあった。
龍弥はが付き中を確認しようとした時「入れ」と中から声がした。
ガチャ
「思っていたよりヒョロい奴が来たな」
「何時から気付いていた」
「オメェがこの洞窟に入った時からだ」
トビラを開けるとそこには約15人前後の盗賊とその中央にある大きな椅子に座っている大男がいた。
(周りの奴らはまだマシだがあの大男はヤバイな)
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NAMEーポール
JOBー悪党
LEVELー53
HPー2000
MPー200
STRー700
INTー50
AGIー500
SKILL
・肉体強化LV5
・格闘LV5
・剣術LV3
・騎士道LV4
・気配察知LV4
ユニーク
・悪盗LV3
TITLEー兇悪者
残忍を好む者
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(かなりのステータスだな、正面から戦えばほぼ確実に負けるな)
「さてどうするか。オメェ、俺の盗賊団に入らねぇか?」
「無いな」
「そうか、オメェは何でここに来た」
「金だな」
「なら、望む金額をだそう」
「何故そんなに俺にこだわる」
「・・・俺は元々王国の騎士だった、戦争で何人も人を殺してると相手の強さがなんとなく読み取れんだ、オメェはつぇ、ここで俺の次にな、なら引き抜く。当然だろ?」
「・・・・」
(確かにそうだ、恐らくこの大男の強さはこの世界で通用する強さだ、だから元々騎士だったのだろうが。こいつらの団に入ればかなりの大金を手に入れられるな。)
「・・・お前らを全員殺せばそれ以上だがな」
「へっ!そうだろうな。・・・見ればわかる!」
男はそう言うとともに龍弥の前から消えた。
龍弥は素早く近くの盗賊の後ろに回る。
グシャッ
「ガフッ」
突如その盗賊の上半身が消えた。
(この速さはあのAGIだけじゃ無いな。となると、騎士道か悪盗だが、あの精錬された動きは騎士道だな、なら初めてだが『技術複製』!)
「?!お前も騎士堕ちなのか?」
突如自分の動きについて来た龍弥に大男・・ポールは驚く。
「さあ、な!」
龍弥はスキル盗人の心得のおかげでAGIは960までに上がっていた、そして盗んでいるのは周りの盗賊の武器だった。
シャシャッ!
龍弥は盗んだ武器をかたっぱしからポールに投げていく、がポールも歴戦の騎士だった者、そう簡単に当たるはずもない。
「・・・オメェそれで俺を殺せると思ってるのか?」
「まあな」
「その程度だったのなら、死ね!」
「クッ」
突如ポールの動きが速くなる。
それはもう常人には視認できない程に。
(見えるが追いつけないな)
龍弥は考えるがその間にも体には無数の切り傷が刻まれていく。
ドスッ
「グハッ」
ついに龍弥はポールに殴り飛ばされる。
「これでオメェも終わりだな、最後に聞く、俺らの団に入る気はあるか?」
「く、クタバレ」
「・・・そうか、死ね」
グシャッ!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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