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これが俺らのクラスの日常 二日目

「まーけーたー」

俺がそう棒読みで負け宣言をするとラナは怒ったような呆れたような声で地面に倒れ込んでいる俺を見下ろした。

「もぉ〜ライ弱すぎだよぉ〜。もうちょっと粘って欲しかったなぁ〜」

「すいません、マジ無理っす」

「もぉ〜」

俺の体はあちこち傷だらけだった。

「最初だけだったね、威勢がよかったのは」

「わるかったな」

俺とラナがいろいろと話していると横から練習を終えたグラウが割り込んできた。

「女に負けるとか情けねーの」

とかいいつつ俺の前にポーションを置いてどこかに行った。俺はそれを手に取り一気に飲み干す。

「ぷはー!うまいな」

「ふふ、相変わらずグラウ君ツンデレだね」

「そうだな、本当は根が優しいってわかってるのは俺たちぐらいかもな」

「かもね」

そう俺とラナは笑った。最初にグラウと会ったときは、まぁ、あの態度だからな。本当に悪い奴かもと思っていたがあの日のあいつをみたら悪い奴かもだなんて到底思えないしな。

「よーし、お前ら今から一対一をするぞー」

「「「え〜」」」

ポル先が全員にそう言うと俺含めての生徒達全員が否定の声をあげた。

「おまえらぁ!」

「「「ポル先が怒った!にげろー!」」」

「こらぁ!まてぇ!!」

ポル先が走り出したのを合図に生徒全員がこの実技場をバラバラに走る。これがこのクラスのテンションでありいつもの光景なのだ。

「ぜぇぜぇ…」

あれから数分が経ってポル先は百人の全生徒を掴まえた。ちなみに捕まえられたら女子はデコピン男子はゲンコツという罰がまっていたため男子は皆頭にタンコブをつけていた。

「全くお前らは…」

ちょっと疲れ気味のポル先がみんなを見回していう。

「とりあえず、一対一をやれ!」

「「「うぃ」」」

「「「はーい」」」

と、俺たちはそれぞれ一対一の練習に入るのだった。皆がそれぞれ指定場所に移動してそれぞれ場所についたのを確認してポル先が唐突に爆弾発言を落とした。

「あぁ、それと。今度の実技昇格試験には女神様がおいでになさるそうだからそれぞれ気合を入れて練習を励むように」

「「「ふぁっ!?」」」

「「「え!?」」」

男女ではこうもリアクションがわかれているこのクラスはある意味すごいと思う。

「ちょ!ポル先!それってどういうことですか!?」

一人の眼鏡をかけた男子生徒、ラックがポル先にそう聞く。そして、まわりの一部の生徒が「あちゃー」と手を額にのせた。

「誰がポル先で呼べと言った?」

ラックはポル先から頭を両拳でグリグリされていた。その後、ポル先がやめるとラックは地面に倒れたまま動かなくなった。いや、まだかろうじてピクピクしてる。おもろい。

「まぁ、お前らが言いたいとしてることはわかるがこれはお前たちにとってのチャンスでもあるんだ。それぞれ練習を怠るなよ」

その言葉で大体の生徒が理解したのだろう。それぞれが真面目に一対一にとりかかる。その姿を見て溜め息をつく。

「まったく、こういう時はクソ真面目にやりやがるのな。まぁ、当然といえば当然だがな」

「そりゃあまぁ、女神さまが来るとなればねぇ」

俺はポル先のとなりで一緒に生徒の一生懸命な姿を見回していた。

「お前はもう少し努力しろ!」

スパーンというよりボゴッと音が鳴った。

「ぐへっ!?」

「安心しろ峰打ちだ」

「い、いや、そういう問題じゃないですよ…」

バタッ。俺はポル先の見事な峰打ちをうけてその場に倒れるのだった。

「まぁ、お前も恥をかかない程度には頑張ることだな」

「恥かいてもいいから休ませて」

「馬鹿か、ちゃんと出席しないと退学させるぞ」

「うへぇ〜」

こうして俺も渋々一対一の練習に取り組むのだった。



時が過ぎて放課後。俺は学校にコレといった用事はないのでクラスのみんなに別れの挨拶を交わして一人帰路につくのだった。

「はぁ、今日も疲れたなぁ。帰ってリーナに抱きつくか」

この兄シスコンにも程があるほどネジが一個外れているのである。

「そのあとチュッチュペロペロでもしとくか」

訂正、もはや脳ミソをどこかに落としているのかもしれない。それぐらい重度のシスコンである。ライは自分の家であるラッフ亭に入る。

「ただいま〜」

「おかえり」

返事を返してくれたのは優雅にオーナーテーブルでコーヒーを入れてるこの宿の主人。ライガル・サマソ。体つきは男らしくがっちりしていてその鋭い眼光は相手を一瞬で恐怖に陥れるほどの怖さだ。髪はマスター風におろしているが昔はオールバックという結構荒れた感じの人だった。そんなサマソのじっちゃんだがこれでも俺たちの命の恩人だ。

「どうだったか?学校は」

「いつもどおりだよ、ポル先に頭を五回叩かれたこと以外は」

「まったく、少しは剣の修練はつめたか?」

「無理だな」

「まぁ、お前ほどになるとそうだろうな」

そんな会話をグダグダしながら俺は周りをキョロキョロとみまわす。

「リーナは?」

「庭の花に水やりしてたが、今頃は寝てるんじゃないのか?」

「んー」

俺はさっそく庭へと足を向ける。そこで呆れたようにライガルが俺に注意をしてくる。

「妹といちゃつくのは構わんがちゃんと仕事手伝えよ」

「そんなのわかってるって」

「わかってるならいい。あと、そっとしておいてやれよ?」

「もちろんだとも、俺がそんなひどいことをするように見えるか?」

「妹に限ってはせんだろうな」

「うむ!じゃあ、いってくるわー」

「あぁ、あとすこしで店を開店するからそれまでにはもどってこい」

「もちろん、それまで女神様の寝顔でも拝んでおくさ」

「ばか、ここでの女神様はアリシア様だ」

「俺にとっての女神様はリーナだけだ」

「はいはい、じゃ行ってこい」

「うぃ!」

俺はライガルに敬礼して庭に向かうのだった。


ラッフ亭の庭は若干広い。そうだな、たとえを出すなら小さい公園ぐらいはある。

「リーナ?」

俺は真ん中にいる人影に目をやる。この庭にはちょうど真ん中にでかい神木がありその向こう側にリーナとおぼしき人影がみえた。近づいてみると案の定俺の妹のリーナだった。神木の周りには色とりどりの綺麗な花が咲いておりその中心でリーナはねていた。

「こんなところで寝てると風邪引くぞ?」

俺は制服を脱いでリーナにかけてやる。

「まったく、いつみても可愛いな」

頭を撫でるとリーナは気持ちよさそうにしていた。

「あぁ、もうちょっとこうしてたいなぁ」

なでなでなでなでなでなでなでなでなでなで。

「ん、お兄、ちゃん?」

「おう、起こしちまったか」

実はわざとだったりする。

「うん、お仕事、いいの?」

「そうなんだよぉ!仕事したくないよぉ!ずっとおまえとこうしていたいよぉ!」

ぎゅーーー!!

「んぅ、けど、仕事、しないと」

「お前がそういうならしよう!」

さすがはシスコンである。妹の言うことならどんなことでも聞いてしまう。

「さて、お兄ちゃんは仕事するから、お前はこんなところで寝てないでちゃんとベッドでねれよ?」

「お兄、ちゃん、とじゃなきゃ、ねれ、ない」

(´;ω;`)ブワッ。いきなりの号泣である。

「うぉぉぉ!お兄ちゃん嬉しいぞー!」

リーナにおもむろに抱き着こうとしたらどこからかカップが飛んできた。

「おっと、あぶないなぁ」

俺はそれをなに食わぬ顔でキャッチする。そして、投げた張本人に投げ返す。みんなはカップとか投げたらダメだよ?

「お前ら毎度毎度よくやってられるな」

そこにはウェイトレス姿のグラウが立っていた。

「はやいな、グラウ」

「けっ」

「ま、そうカッカするなって。今着替えるから」

「さっさとしろ、ラナも待ってるぞ」

そう言ってグラウは店の奥へと引っ込んだ。

「うぃうぃ、ということでリーナ。もうちょっと待っててな」

「うん、まつ」

「いいこだ」

俺は最後にもう一回リーナの頭を撫でて店の中に入っていくのだった。

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