驚愕と技術
滅茶苦茶な展開となります。
俺たちはホールの席に3人並んでついた。
前には、スーツ姿の男が立っている。
そして場内が暗くなった。
「今から今後の方針についてお話しします」
男が話し出した。
「私の名前はグレゴリー・パウエルです。で、これからの話ですが、まず我々はいくつかの班に分かれる必要があるようです。具体的に言えば、防衛に関することを行う防衛班、生活環境を整える生活班、医療班、技術研究や開発をする技術班、そして司令部です。しかし我々は、同時にロボットとの戦闘を行う戦闘班の設置も考えています」
会場内がざわついた。ジャレッドもいぶかしい顔をしている。
「そこで1つ、重大なお知らせがあります。恐らく人類の歴史に残ることでしょう。我々は『ファンクション・ダウンロード技術』を初めて使用することに決定しました」
会場内はさらにざわついた。アベルと俺は知らなかったので、ほとんど同時にジャレッドのほうを向いた。
「説明があるさ」
「ファンクション・ダウンロード技術、通称FD技術は、機械の機能を人間に与える技術です。志願者はこの改造を受け、戦闘能力を磨き、ロボットと戦うことになります。実際人体実験というものは禁じられていますが、今回は仕方のない事態と言うことで、各国首脳がゴーサインを出してくれました。つきましては志願する人は、来月のはじめまでに戦闘班への出願書を提出してください。戦闘班への加入を期待しない人は、防衛班、生活班、医療班、技術班、司令部のどれかへの出願書を出してください。今後班の解体や設置については検討します。以上、解散してください」
会場内は一気にざわついた。どうやらただならぬ事態らしい。FD技術というのは、俺も初めて聞いた。
部屋に帰ると、俺たちはパソコンをつけ、インターネットでFD技術について調べた。
『開発者はグラント・ジェスラー博士』『人間に機械の機能を与えるもの』『成功率は特に高いわけではないが低くはない』ということしかわからない。どうやら、かなりの極秘事項らしい。
「つまり、新幹線になったら速く走れて、ヘリコプターになったらホバリングもできるってことか」
アベルが言った。
「あ、ここに書いてある、えーっと、『1人への施術で1つの機械を費やしてしまうため、成功率の高い人間でなければ、トランスポーターなどの大きな機械や高価な物は使用できない。よって、ほとんどが身の周りに溢れる機械の機能を手に入れることになるという』だってさ」
「意味わからねえ、漫画かよ……。いまどき小説でもこんなのないだろ……」
ジャレッドは言った。
俺はふと、志願してみようかという気になった。
「お前ら、志願するか?」
ジャレッドとアベルは俺を見た。
「俺はしようと思う。気が変わらなければな。何か楽しそうじゃないか? 戦うの。機械の機能を手に入れるなんて、今まで聞いたことあったか? 嘘だったら残念だけど、本当だったら最高にワクワクする」
ジャレッドとアベルはしばらく黙っていたが、ジャレッドは
「俺もしようと思う」
とつぶやいた。アベルに関しては、考えているように見える。
ともあれ俺たちはこれから、前人未到の領域へ足を踏み入れることになる。機械の能力を手に入れて、ロボットたちと戦うのだ。
次回からもどんどん滅茶苦茶になります。