第一話 私から見た天ヶ瀬 桜生について。
☆いつもの思い付き☆
私の友人であるところの天ヶ瀬 桜生は、普通じゃない。
まず容姿。化粧品の広告も真っ青なほどにきめの細かい白い肌を持っている。目が大きめなので一重瞼でも重たくならず、瞳は黒檀色、眉は全国の女性全てを敵に回したかのように手入れもしないのに整っている。鼻筋もそれは見事に通っていて唇は少し小ぶりだけれど品の良い形をしているし、グロスを塗らなくても赤い。背中の中ほどまでの瞳とお揃いの黒檀色の髪は自然にうねり、豪華って言葉がぴったりと当てはまる。何この美人、なのだ。
次に体躯。178cmの長身は顔の小ささや肩の細さのせいでもっと高く見える。四肢も長く細いけど、病的に細いんじゃなくてきちんと筋肉が付き、無駄な脂肪がない細さという羨ましさ。もちろん指も細くて長くて綺麗だし、足なんて膝下のほうが太もも部分よりも長いから余計に長く見えるという特典付。
そして頭脳も半端ない。どうしてうちの高校に入ってきたのかと正直疑問。なにせ入学時は新入生代表で挨拶をし、二年後期の現在に至るまで主席を通す。後から知ったことだったが、桜生ちゃんは入試当日に風邪にかかるというなにその面白いネタで第一志望を落ちてしまい、二次募集のあったうちの高校に入学してきたらしい。気の毒というか見事なネタを披露したというか流石だというかは本人しかわからない。ちなみに二年生の前期からは生徒会会長として活躍もしている傍ら、きちんと部活にも勤しむ。普通は生徒会に入った時点で部活は休部扱いか退部する。部活を継続できるほど生徒会の仕事が楽なわけがなく、両立はできないといわれているのに桜生ちゃんは生徒会も部活もきちんとこなすスーパーウーマンなのだ。ちなみに部活は空手部です。どれだけ体力あるんだろう。
最後に性格。もうこれはすごいとしか言いようのないほどの男前。竹を割った性格っていうのは彼女にこそふさわしい。初めて桜生ちゃんと話した時、お人形のような容姿からは想像もつかない言葉遣いの凄すぎるギャップに本人が目の前だというのに爆笑したのはいい思い出となっている。
私から見たら普通人ではまったくない桜生ちゃんは、可愛いものに弱い。
一緒に水族館に遊びに行った時など見ものだった。真っ白いベルーガの赤ちゃんから目を離せないでいるし、ペンギンの部屋の前の観覧席からにやにやしながらペンギンの赤ちゃんを目で追いかけている。桜生ちゃんのあまりの熱心さぶりが面白くて私はペンギンよりも桜生ちゃんを眺めていたら二時間すぎていたのには笑ったけど。帰りがけには売店に立ち寄って巨大ペンギンのぬいぐるみをものほしそうに眺めている。小さいので手を打つ気はないところが桜生ちゃんだなと思う。
「桜生ちゃんってほんと、可愛いもの好きだよね」
「否定はしない。だから幹も好きだよ。容姿も内面も、ね」
こういう言葉を恥ずかしげもなく真顔で言ってくるあたり、女の子のくせにどれだけフェミニストなんだと思ってしまう。
まあいい加減、私も聴き慣れたなあなんて思いながらも、慣れと羞恥心を持つことは同じではないわけで。
そして私に学習能力もないわけで。
桜生ちゃんから受け取る悶えるほどの恥ずかしさに顔が赤面するのは致し方ない。
「ふふ。その姿も可愛いね」
桜生ちゃんが男の子だったら、陥落です。




