闇鍋
闇鍋 銀神月美
「じゃあ、一人ひとり台所に行って持ってきた物を入れるんだぞ。いいか、絶対に部屋を明るくして中の物を確認しちゃ駄目だからな」
そう言うと三人は頷いた。
今日は前々から計画していた闇鍋パーティーの日であった。闇鍋と聞いて中には気分の乗らない奴もいたが、最終的には全員が楽しみにしていた。
この闇鍋ではちょっとしたルールがある。それは誰が何を持ってきたのか分からなくすることだ。ただこんなのを持ってきたとみんなに見せても面白くない。だから、中に何が入っているか分からない状態で――薄暗い室内で各々が持ってきた具材を鍋に入れることにした。勿論火の取り扱いには十分な注意をする。
最後の奴が材料を鍋に入れてきた。あとは煮込むだけである。不正の無いように全員が煮込みに立ち会う。一時間後、漸く調理が終わった。部屋を明るくし、鍋を居間に運ぶ。そして鍋を囲むように座った。
「よし、開けるぞ」
その場にいた全員が固唾を飲んで開かれゆく蓋を見守っていた。そして……。
「これは……」
「……何とも」
「ふ~む……」
「……予想外だな」
肉、肉、肉……中には肉しか入っていなかった。どうやらここにいる連中は鍋と聞いて真っ先に肉が思い浮かんだのだろう。残念なことに友人を当てにして、野菜とか茸とかそういう類の物はなかった。きっと友人達もこんな感じで肉を持ってきたのだろう。まあ、唯一幸いと言えるのはそれぞれの肉の種類が違うということか。取り敢えず、作ったのだから食べない訳にはいかない。不満はあるが、食べることにした。
鍋はやり過ぎたしゃぶしゃぶに近かった。不味くはないが、何せ肉だけなので何処となく味気なかった。その所為か室内に何とも表現し辛い空気が漂う。一応提案者として場を盛り上げる義務がある、そう感じて友人等に尋ねた。
「俺は牛を持って来たんだが、お前等は一体何の肉を持って来たんだ?」
ルールに抵触するような質問だったが、友人達は何も気にすることなくその質問に答えてくれた。
「俺は豚」
「鶏」
「人肉」
「はあ?」
「冗談だよ。俺は鹿だ」
「だから癖があるのか」
「お前何処から鹿肉なんて入手したんだよ」
その後暫く鹿肉を手に入れた経緯を聞くことになった。その話が案外面白いものだったので、何とか沈んでいた空気が明るいものへと変化していった。
「そういえば、汁の味が変じゃないか?」
友人の一人が味に違和感を感じた。
「確かに何かこう……鉄っぽい……」
二人の言う通りに何か後味に違和がある。味付けに失敗してしまったのだろうか。そんなことを言い合っていると鹿肉を入れた友人が、
「それはきっと俺が入れたやつだな。鹿肉って本当に癖があるからそれを取る為に葡萄酒をね」
そうして俺達は知らぬ間に共犯者になっていた。
私は闇鍋をしたことがないので、このようなことがよくあるのか知りません。誰か詳しい方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。