【番外】ネット小説の読者へ ~三つの匿名性~
三つの匿名性
匿名には色々な形があると思いますが、此処では次の三つに区分して考えてみたいと思います。
尚、匿名性は決して絶対的なものでは在りません(所謂司直の捜査から完全に逃れ得る類の匿名は多くはありません)。此処では相対的な匿名を取り扱っています。
ア)「伊達直人」型
古のコミック・アニメのヒーローですが時々「伊達直人」を名乗る匿名の寄付などの善行でニュースになることがあります。
先ずは格好良いです。人は誰も見て居ないところで悪いことを仕勝ちですが、その逆は格好良いです。ただ、悪人が隠れ蓑に使う場合もあるので要注意です。
歌舞伎や落語の演目である「義賊鼠小僧(実在の鼠小僧次郎吉は義賊ではなく一匹狼の大泥棒だったようです)」をこの範疇に入れるべきか否か? 判断に迷うところです。
イ)「市民」型
刃物を振り回している人を取り押さえる。自分の生殺与奪を握る存在(上役や得意先や審査員)の不正を正す。怖い組織や集団に立ち向かう…… これらの英雄的行為は誰もが出来ることでは在りません。だからこその「英雄的」であり人はそれに敬意を表するのだと思います。私にはとても出来ません。
ですが、自分が傷付くことが無い範囲で誰かの為に行動を起こすことことがあります。不正を匿名の通報したり、公的空間の清掃などがあると思います。落し物を名乗らずに届ける行為などもこの範疇だと思います。
ウ)「ファントム」型
実体を伴わず倒されても直に蘇ることが出来る、匿名の人格。
仮令その場でどれ程「ファントム」が(身から出た錆で)傷ついても実体が痛みを感じることは無く、僅かでも相手に損傷を与えることが出来ればそれは「ファントム」の思う壺となります。
また自らが致命的な状況に陥ってもエイリアス(別名)を生み出すことで完全復活。相打ちを仕掛けてくることがあるけれどもファントム自体は実体ではないので傷つくのは常に相手側だけで、正に他者を傷付けるには最強の、相手側にとっては最凶の存在です。
上記の三分類は私の独断です。また、相手方や世間に知られたくないと云う視点において上の分類は意味を成し(区別が出来)ません。ですが別な視点を設けることで多少なりとも客観化することは可能です。
A) 「自分の安全を確保したい」
相手からの反撃を逃れること(狭義の保身)を目的としているか?
No: ア)元より反撃の恐れはない
Yes: イ)ウ) 自らを危険に晒したくない
B) 「誰に知られても困る」
その言動が自分の味方に知られて困る? 但し、ここでは「その時間に仕事をサボって書込みしていた」と云うような類の問題は除外します
No: ア)イ)照れくさい、一寸居心地が悪い程度は困るとは云わない
Yes: ウ)その言動の実態を知られたら周囲から軽蔑される
匿名には、「自分の安全を確保したい」「誰に(自分の身内にすら)知られても困る」があります。そして「誰に知られても困る」匿名性を使って他者を攻撃する行為を普通「卑劣な行為」と称するのです。別な表現では「お天道様に顔向け出来ないこと」となります。申すまでも無いことですが、ネットで実際に問題となるのはこの卑劣な行為なのです。
私はこの卑劣な行為を軽蔑し憎む人間の一人なのです。