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おれ2児の父親、金髪少女になる  作者: 東山スバル
第一幕 第二の思春期の始まり

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007 呼び方注意

「MIH学園の制服って、100年前から変わらないらしいよ」


 ルカスが豆知識を言い、アルスとウィットは「へー」と頷く。

 ウィング・デパートについたヴァイパー家一行は、青を基調にしたメイド・イン・ヘブン学園──通称MIH学園の制服を眺めていた。といっても、制服なのでサイズしか違いはないが。


「とりあえず、試着したら──」アルスが言いかけ、小声でウィットに呟く。「……なんて呼べば良いの? その姿だと、今までの言い方は駄目だよね」

「メイベル、と呼んでくれ」

「……母さんの名前?」ルカスも小声で言う。

「そうだ。学園での名前も、それにしてある」

「そ、そう」

「わ、分かった」


 娘と息子がやや怪訝がる中、ウィットは体型を測る台の上に乗る。3Dスキャンで、身長・体重等を測ってくれるらしい。それを元に、最適なサイズの制服を表示してくれる。


 測定はすぐ終わった。ウィットは、適切なサイズの学生服を手に持ち、一応試着してみる。

 試着室に入り、やはり女性らしくなった身体つきを見て、ウィットは溜め息をつく。


「……なんだろうな、この気持ち」


 なってしまったものは仕方ないとはいえ、45年間の男性体が15歳の女性体に変化した事実は、尊厳というものを傷つける。

 されど愚痴るわけにもいかない。愚痴を言って、解決するわけでもない。

 ウィットは、白いワイシャツ・青いブレザー・黒のスカート・黒の靴下・最後に青と白の縞模様になっているリボンをつけた。


「似合ってるな……」


 ウィットは、柔らかい声で手前味噌だとは思いつつも、様になっていると感じた。


「しかし、スカートというのは足元に風が当たるな。女子は良く、これに耐えられているものだ」


 そう思いつつ、ウィットは着替え終わったので試着室のカーテンを開ける。


「どうだ?」


 アルスとルカスは、口をポカンと開けた。なにか変なところでもあったか? しかし、姿見を見る限りおかしなところはなかったはずだが──、


「可愛すぎでしょ……」

「なぁ、姉ちゃん。おれはひょっとして、すげェもんを作っちまったのかも」


 45歳父親は、子どもたちに可愛すぎと言われる奇妙な経験を果たした。


「そ、そうか。サイズ感もぴったりだし、これを買う予定にしておこう。まだ入学が決まったわけでもないし」


 試着室の前を通った人々は、美少女すぎるウィットをほとんど二度見する。


「あの子、可愛すぎない?」

「それな。なんかのモデル?」

「美人だけどあどけなくて、最高だな。うーん、ナンパしようかな」

「やめておけよ。オマエじゃバランスってもんがあわない」


 各々好き放題言ってくれるが、確定しているのは、今のウィットは絶世の美少女だということだ。


「そ、それじゃ着替え直すか」


 これには、今や伝説と言われる無法者ウィットも戸惑うしかなかった。


 *


 昼飯の時間。ウィットは先ほどまで模擬戦闘をしていたから、結構空腹だ。デパート内を子どもたちとともに歩き、ふと目に入った日本からのラーメン屋を指差す。


「ラーメン、食べるか」

「うん。とうさ──メイベルがそう言うなら」

「そうだね。ぱ……メイベルはラーメン好きだもんね」

「あぁ、いつか日本へ行ってみたいくらいだ」


 呼び方に苦戦する子どもたちを意に介さず、ウィットたちはラーメン屋に入る。クレジットカードで先払いを済ませ、ウィットたちはカウンターに座る。


「……ん? どうしたの、ぱ、メイベル」


 アルスは、ウィットが誰かを睨んでいることに気がついた。この姿だとまるで迫力がないものの、相当睨みを効かせているのは確かだ。


「いいや……なんでもないさ」


 ウィットは出された水を飲み、視線をずらす。


(あのクソ野郎、まだ生きてやがったか……。子どもたちがいなければ、ぶち殺すところだったが)


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