006 入学への手続き
「体格差がありすぎて困るな」
「しゃーないだろ。おれは193センチで、オマエは150センチくらいだし」
ウィットは苦笑いを浮かべる。少し前まで、ポールモールのほうがやや高いくらいの身長関係だったが、今となれば40センチ以上離れている。これでは、親子と勘違いされても致し方ない。
「さて、〝平和島〟に戻ろうか」
「あぁ」
アンゲルス連邦共和国は島国だ。その本島は平和島と呼ばれる。今ふたりがいるのは、その平和島から数十キロ離れた無人島である。その距離をワープできるのだから、ポールモールはやはり優れた魔術師だと感じる。
*
「父さんのおかえりだ、子どもたちよ」
しーん……と静まり返る豪邸。やれやれ、とウィットは溜め息をつく。いくら父が美少女になったとはいえ、まだまだ家族関係が直ったとは言い難い。
「さて、MIH学園の入学方法でも調べるか」
スマホで、『MIH学園 後期入学』と検索する。膨大な検索結果が出てくるも、一番上にあるMIH学園公式ホームページを見てみることにした。
「どれどれ……、一般試験と魔力試験? 魔力試験のほうが良さそうだな」
どうも、魔力の濃さや多さで入学できるか否かが決まるようだ。一般教養はさっぱりなので、こちらのほうが良いだろう。ホームページから応募できるようなので、ウィットはあっさりフォームを入力しようとする。
しかし、ウィット・ヴァイパーという名前をそのまま使うのは変だ。この名前は裏社会で知れ渡っているし、そもそも男性名でもある。ウィットは少し考え込み、そしてある結論に至る。
「妻の名前を借りるか」
ウィットは名前欄に、『メイベル・ヴァイパー』と入力する。あとは生まれた年代と性別などを入力せねばならない。今は2025年。本来の生まれ年の1980年と入力するわけにもいかないので、15歳の子どもということにして、2015年にしておく。
性別は、ある意味当然だが女子。ジェンダーレスが流行る時代だというから、その欄があると思っていたものの、その申請は学園に直接しなくてはならないようだ。
「これだけか。いや、後見人か親が必要だな」
親か後見人。学校なので当然ではある。ここは正直に〝ウィット・ヴァイパー〟と記しておく。子どもたちの入学の際にもそう書いた……いや、そのときは妻の名前を使ったか? まぁともかく、これで問題ないだろう。
「父さん」
そうしてフォームにすべて書き終えると、タイミング良くルカスが現れた。
「どうした?」
「父さんと話すのに理由が必要? それじゃ寂しいね」
「あぁ、悪かった」
「MIHへの入学届け、もう出したの?」
「そうだな。今しがた、提出した。あとは魔力試験? を受けるだけだ」
「父さんなら、まず落ちないだろうね。でさ、姉ちゃんと話し合ったんだけどさ」
「なんだ?」
「父さん、学生服買ったほうが良いよ。姉ちゃんのヤツは一着しかないし」
「それもそうか。なら、家族水入らずで買い物でも行くか?」
「そうだね。ウィング・デパートへ行こう。あそこなら、MIHの学生服が売ってるからさ」
「分かった。けど、運転はできんぞ」
「分かってるよ。タクシーで行けば良いでしょ。どうせ父さん、カネ持ってるんだし。悪いことで稼いだお金を」
「……まぁな」
どこか少し、ルカスもウィットのカネが汚れていることを嫌っている節がある。本当は、多少貧乏でも良いから、父に真っ当な仕事をしていてほしかったのかもしれない。友だちに語れるような、普通の仕事を。
「パパ、行くよ」
先ほどゲームで暴言を吐き散らしていたアルスは、もうすでに着替えて降りてきていた。変わり身の早さは、ある意味すごいものがある。
「あぁ、行こうか」
こうして、ヴァイパー家は総出でウィング・デパートという富裕層向けの百貨店へと向かうのだった。




